dancyu本誌から
「マリークロード」のビーフシチュー|dancyuな人たちの偏愛レシピ⑧

「マリークロード」のビーフシチュー|dancyuな人たちの偏愛レシピ⑧

創刊から携わる唯一の編集部員の偏愛レシピは、フライパンと鍋だけでできるまろやか本格ビーフシチュー。dancyu1月号「おいしいレシピ100」で掲載した「dancyuな人たちの偏愛レシピ」。そこで登場した8品のレシピを1日ごとにご紹介します!

四半世紀以上つくり続けるわが家の定番

かつて六本木にあったフレンチ「マリークロード」は、女性シェフの草分け、長尾和子さんの店だった。賄いでつくるビーフシチューが絶品と聞いて、取材敢行。詳しく順を追ってレシピを教えていただいた。

牛バラ肉に小麦粉をつけて六面全部をカリカリに焼き旨味を閉じ込めること、フライパンに残った旨味をワインで全部こそげること、ブーケガルニを入れること、砂糖を焦がしたカラメルで風味をつけること、小麦粉とバターでブラウンルウをつくること。カラメルやブラウンルウにはまず熱い煮汁を少量入れてなじませること。すべての過程に理由があって、明解。このレシピで私はフレンチの基本を初めて体感することができた。そして、具に大根やかぶを入れてしまうおおらかさにも脱帽。大根のほろ苦さが、シチューの絶妙の一押しになる。

以来、少なく見積もっても年2回以上は必ずつくる。つくる度に、初心に返る大切さに思い至る。わが家の大切な定番料理だ。

※現在「マリークロード」は閉店。来年中に神奈川県二宮町での開店を予定。

材料材料 (4人分)

牛バラ肉650g
玉ねぎ大1個
かぶ2個
セロリの茎1本
にんじん1本
大根10cmほど
じゃがいも2個
マッシュルーム1パック(100g)
赤ワイン400mL
トマトペースト30g
トマトジュース小1缶(190g)
適宜
胡椒適宜
小麦粉適宜
サラダ油大さじ2
★ ブーケガルニ用
・ セロリの葉適宜
・ パセリ適宜
・ 長ねぎ適宜
・ にんにく適宜
・ タイム適宜
・ ローズマリー適宜
・ 粒胡椒適宜
・ ローリエ適宜
★ カラメル用
・ 砂糖大さじ2(できればグラニュー糖)
★ ブールマニエ用
・ 小麦粉25g
・ バター25g

1まずは下ごしらえ。肉と野菜を切る

牛のバラ肉は、3~4cmくらいのやや大きめの角切りにする。大根は1cmくらいの厚さの半月切りにして皮をむき、面取りをする。にんじんも皮をむき、長さを3等分してから大きさに応じて二つから四つに割って面取りをする。かぶは葉元を2cmくらい残して使う。皮をむき、四つ割りにして面取りをする。じゃがいもは皮をむいてから八つくらいに切って、面取りをする。玉ねぎは皮をむいて四~六つ割りにする。セロリの茎は、スジの部分を厚めにむいてから、4cmくらいに切って、縦半分に切る。

まずは下ごしらえ。肉と野菜を切る

2香草の束・ブーケガルニをつくる

長ねぎは縦に包丁目を入れ、中の芯を取り、そこにセロリの葉、パセリをはさみ込む。これをたこ糸でギュッとしばる。はずれないよう、二度巻きにする。つぶしたにんにく、ちぎったローリエ、タイム、ローズマリー、粒胡椒を包む。糸でしばり、ねぎの束にくくりつける。全部揃わなくても、たとえばにんにくとセロリ、長ねぎなどあるものだけでいい。包むのが面倒なら、そのまま入れても大丈夫。

香草の束・ブーケガルニをつくる

3肉の表面をカリカリに焼いて旨味を閉じ込める

肉は全面にしっかり焼き色をつけてから煮込むと、肉汁が出ずおいしく仕上がる。まず肉にしっかり塩、胡椒する。おいしさをとじこめるために、肉の周りに小麦粉をまぶす。もみこむように粉をつけたら、時間をおかずにすぐに焼く。フライパンに油を入れて熱し、肉を入れる。フライパンをゆすりながら肉の表面がカリカリになるまで、強火で焼き色をつける。肉が焦げる直前くらいまで焼く。焼けた肉から、煮込み用の鍋に入れていく。

肉の表面をカリカリに焼いて旨味を閉じ込める

4ワインで肉の旨味をこそげる

フライパンの油を捨てて赤ワインを入れ、肉の旨味をこそげとるように混ぜながら煮ていく。火は強火。ワインのアルコール分や酸味が飛び、肉の旨味がワインに溶け込んでくる。ワインが半量ほどになるまで煮詰まったら、これを肉の入った鍋にあけ、肉が隠れるくらいまで水を注ぎ入れる。

ワインで肉の旨味をこそげる

5崩れにくい野菜から煮る

野菜の第一陣としてまず、崩れにくい大根、にんじん、セロリを投入する。さらにブーケガルニも加える。浮いてくるアクを丁寧に取る。アク退治がシチューづくりの成功の鍵なので、根気よく。アクを見つけることを楽しみとすべし。ある程度アクを取ったら、トマトジュースとトマトペーストを加える。塩を心もち多めにふり、中火にして40分くらい煮込む。この間もアクは面白いように出てくるから、取り続ける。

崩れにくい野菜から煮る

6残りの野菜を入れて煮る

40分ほど煮て材料が柔らかくなったら、残りの野菜類を入れる。じゃがいも、かぶ、玉ねぎ、マッシュルームを入れ、さらに中火で15分くらい煮込む。マッシュルームは切らずにそのまま使う。椎茸、しめじなどを入れてもおいしい。

残りの野菜を入れて煮る

7砂糖を焦がしてカラメルをつくる

フライパンにグラニュー糖を入れて溶かす、まずは混ぜたりしないで、そのままじっと待つ。しばらくして砂糖が焦げ、トロリと茶色くなってきたら、スプーンでかき混ぜる。小さな泡がボチボチ出てきたら、シチュー鍋の熱い煮汁をおたま1杯分ほどここに注ぐ。煮汁でフライパンを洗うようにして、カラメルを煮汁に溶かしこんだら、これを鍋に戻す。

砂糖を焦がしてカラメルをつくる

8ブールマニエをつくって、加える

フライパンを熱してバターを溶かし、同量の小麦粉を入れてヘラでサッサッと炒める。フライパン全体を大きく混ぜる。火は中火。だんだん茶色に色づいてくる。手を動かしていないと焦げてしまうので注意したい。コーヒー牛乳の色になり、フライパンにはりつくようになってきたら、煮汁を入れる。ブールマニエと煮汁がよく溶け合ったら、これも鍋に戻す。両方とも熱ければ、ダマにならない。トロ火にしてさらに15分くらい煮込む。この間、ときどきかきまわしたり、アクを取ったりする。お待たせしました!トビ色に輝くおいしいビーフシチューの出来上がり。せっかくのシチューだから、お皿も温めてから盛りつけたい。

ブールマニエをつくって、加える
完成
シチューのおいしさは素材の味の重なりにある。鍋を火にかけてしまえば、あとは時間が料理してくれるのもうれしいところ。構えず気取らず、自分流のシチューを楽しもう。
里見流 シチューのプラスワン
野菜の面取りは、かなり好きな仕事。でも大量の切れ端が出てしまってもったいないので、切れ端も細かく刻んでシチューに入れてしまいます。食感にアクセントがついて楽しいですよ!

文:里見美香(編集部) 撮影:佐藤直也