創刊から携わる唯一の編集部員の偏愛レシピは、フライパンと鍋だけでできるまろやか本格ビーフシチュー。dancyu1月号「おいしいレシピ100」で掲載した「dancyuな人たちの偏愛レシピ」。そこで登場した8品のレシピを1日ごとにご紹介します!
かつて六本木にあったフレンチ「マリークロード」は、女性シェフの草分け、長尾和子さんの店だった。賄いでつくるビーフシチューが絶品と聞いて、取材敢行。詳しく順を追ってレシピを教えていただいた。
牛バラ肉に小麦粉をつけて六面全部をカリカリに焼き旨味を閉じ込めること、フライパンに残った旨味をワインで全部こそげること、ブーケガルニを入れること、砂糖を焦がしたカラメルで風味をつけること、小麦粉とバターでブラウンルウをつくること。カラメルやブラウンルウにはまず熱い煮汁を少量入れてなじませること。すべての過程に理由があって、明解。このレシピで私はフレンチの基本を初めて体感することができた。そして、具に大根やかぶを入れてしまうおおらかさにも脱帽。大根のほろ苦さが、シチューの絶妙の一押しになる。
以来、少なく見積もっても年2回以上は必ずつくる。つくる度に、初心に返る大切さに思い至る。わが家の大切な定番料理だ。
※現在「マリークロード」は閉店。来年中に神奈川県二宮町での開店を予定。
牛バラ肉 | 650g |
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玉ねぎ | 大1個 |
かぶ | 2個 |
セロリの茎 | 1本 |
にんじん | 1本 |
大根 | 10cmほど |
じゃがいも | 2個 |
マッシュルーム | 1パック(100g) |
赤ワイン | 400mL |
トマトペースト | 30g |
トマトジュース | 小1缶(190g) |
塩 | 適宜 |
胡椒 | 適宜 |
小麦粉 | 適宜 |
サラダ油 | 大さじ2 |
★ ブーケガルニ用 | |
・ セロリの葉 | 適宜 |
・ パセリ | 適宜 |
・ 長ねぎ | 適宜 |
・ にんにく | 適宜 |
・ タイム | 適宜 |
・ ローズマリー | 適宜 |
・ 粒胡椒 | 適宜 |
・ ローリエ | 適宜 |
★ カラメル用 | |
・ 砂糖 | 大さじ2(できればグラニュー糖) |
★ ブールマニエ用 | |
・ 小麦粉 | 25g |
・ バター | 25g |
牛のバラ肉は、3~4cmくらいのやや大きめの角切りにする。大根は1cmくらいの厚さの半月切りにして皮をむき、面取りをする。にんじんも皮をむき、長さを3等分してから大きさに応じて二つから四つに割って面取りをする。かぶは葉元を2cmくらい残して使う。皮をむき、四つ割りにして面取りをする。じゃがいもは皮をむいてから八つくらいに切って、面取りをする。玉ねぎは皮をむいて四~六つ割りにする。セロリの茎は、スジの部分を厚めにむいてから、4cmくらいに切って、縦半分に切る。
長ねぎは縦に包丁目を入れ、中の芯を取り、そこにセロリの葉、パセリをはさみ込む。これをたこ糸でギュッとしばる。はずれないよう、二度巻きにする。つぶしたにんにく、ちぎったローリエ、タイム、ローズマリー、粒胡椒を包む。糸でしばり、ねぎの束にくくりつける。全部揃わなくても、たとえばにんにくとセロリ、長ねぎなどあるものだけでいい。包むのが面倒なら、そのまま入れても大丈夫。
肉は全面にしっかり焼き色をつけてから煮込むと、肉汁が出ずおいしく仕上がる。まず肉にしっかり塩、胡椒する。おいしさをとじこめるために、肉の周りに小麦粉をまぶす。もみこむように粉をつけたら、時間をおかずにすぐに焼く。フライパンに油を入れて熱し、肉を入れる。フライパンをゆすりながら肉の表面がカリカリになるまで、強火で焼き色をつける。肉が焦げる直前くらいまで焼く。焼けた肉から、煮込み用の鍋に入れていく。
フライパンの油を捨てて赤ワインを入れ、肉の旨味をこそげとるように混ぜながら煮ていく。火は強火。ワインのアルコール分や酸味が飛び、肉の旨味がワインに溶け込んでくる。ワインが半量ほどになるまで煮詰まったら、これを肉の入った鍋にあけ、肉が隠れるくらいまで水を注ぎ入れる。
野菜の第一陣としてまず、崩れにくい大根、にんじん、セロリを投入する。さらにブーケガルニも加える。浮いてくるアクを丁寧に取る。アク退治がシチューづくりの成功の鍵なので、根気よく。アクを見つけることを楽しみとすべし。ある程度アクを取ったら、トマトジュースとトマトペーストを加える。塩を心もち多めにふり、中火にして40分くらい煮込む。この間もアクは面白いように出てくるから、取り続ける。
40分ほど煮て材料が柔らかくなったら、残りの野菜類を入れる。じゃがいも、かぶ、玉ねぎ、マッシュルームを入れ、さらに中火で15分くらい煮込む。マッシュルームは切らずにそのまま使う。椎茸、しめじなどを入れてもおいしい。
フライパンにグラニュー糖を入れて溶かす、まずは混ぜたりしないで、そのままじっと待つ。しばらくして砂糖が焦げ、トロリと茶色くなってきたら、スプーンでかき混ぜる。小さな泡がボチボチ出てきたら、シチュー鍋の熱い煮汁をおたま1杯分ほどここに注ぐ。煮汁でフライパンを洗うようにして、カラメルを煮汁に溶かしこんだら、これを鍋に戻す。
フライパンを熱してバターを溶かし、同量の小麦粉を入れてヘラでサッサッと炒める。フライパン全体を大きく混ぜる。火は中火。だんだん茶色に色づいてくる。手を動かしていないと焦げてしまうので注意したい。コーヒー牛乳の色になり、フライパンにはりつくようになってきたら、煮汁を入れる。ブールマニエと煮汁がよく溶け合ったら、これも鍋に戻す。両方とも熱ければ、ダマにならない。トロ火にしてさらに15分くらい煮込む。この間、ときどきかきまわしたり、アクを取ったりする。お待たせしました!トビ色に輝くおいしいビーフシチューの出来上がり。せっかくのシチューだから、お皿も温めてから盛りつけたい。
文:里見美香(編集部) 撮影:佐藤直也