軽く焦げ目がつくくらいしっかりと揚げたとうもろこしの天ぷらは、かき揚げよりもクリアな甘味が楽しめます。衣と油を駆使して、野菜のポテンシャルを引き出す調理法天ぷら。東京・外苑前にある天ぷら屋「元吉」の店主・元吉和仁さんに、野菜天ぷらをおいしく揚げる秘密を習いました。
天ぷらは「野菜をおいしく食べるための優れた調理法です」。こう話すのは東京・外苑前の「天ぷら元吉」の主人、元吉和仁さん。天ぷらにすれば、野菜の甘味や香りが引き出されて香ばしさも加わる。薬味に使うような地味野菜でも、堂々主役を張れるのだ。
天ぷらづくりで最も重要なのは衣。「これができれば、成功したも同然です」と元吉さんは断言する。ポイントは薄い衣の上に濃い衣を重ね、その野菜が一番引き立つ厚さにしてやること。やや難しく感じるかもしれないが、大丈夫。野菜は魚介に比べておいしさのストライクゾーンが広いので、初心者でも失敗しにくい。
玉ねぎ、しそ、なすなど身近な野菜も、元吉さんの手法で揚げれば、香りや食感が劇的に変化する。野菜に惚れ直すこと請け合いだ。
とうもろこしは軽く蒸してから、板状にそいで天ぷらにします。かき揚げよりも衣の量が少ない分、甘味がクリアに出る気がします。揚げ方でイメージしているのは、焼きとうもろこしの香ばしさ。焦げ目がつくようしっかり揚げるのがコツです。
とうもろこし | 1本 |
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揚げ油 | 適宜 |
衣 | 適宜 |
薄力粉 | 適宜 |
皮をむき7~8分蒸す。水にくぐらせて粗熱を取りラップで包む。こうすると余熱で水分が蒸発してしわが寄るのを防げる。すぐに冷凍庫で10分ほど急冷。冷えたら使うまでは冷蔵庫へ。冷やすとそいだときにバラバラになりにくい。
ラップを取り、4~5cmの長さに切る。4列分を目安に、縦に包丁を入れて、芯に沿って包丁で身をそぎ、板状にする。やりにくければ縦方向にそいでもよい。
薄力粉を全体に薄くまぶす。衣の薄いところにくぐらせた後、濃いところにくぐらせ、しっかり密着させる。
180℃の揚げ油に、粒々があるほうを上にしてそっと入れる。衣が固まってきたら天地を返して全体に火を入れる。時々、返しながら、さらに3分ほど揚げたら引き上げる。表面に軽く焦げ目がつくくらいだと香ばしさが際立つ。
1975年生まれ。学生時代に天ぷら職人を志し調理師学校へ。大阪の老舗料亭、都内の天ぷら屋などを経て31歳で独立。理にかなった自由な発想で独自の野菜天ぷらを追究する。
文:上島寿子 写真:湯浅亨
※この記事の内容はdancyu2017年8月号に掲載したものです。