熱湯で一気に花開かせるアイスティーは、キリッとした味わいを楽しめます。対して、ゆっくりじっくり淹れたアイスティーには、優しい味わいが楽しめる魅力があるのです。
細かな茶葉を熱湯で淹れる、キリッとしたアイスティーのように、一気に才能を開花させるのでなく、ゆっくりと成長を見届けながら、やわらかく引き出される大きな茶葉の味を楽しむアイスティーもある。熱湯と氷水を合わせたぬるま湯でゆっくり抽出し、一日かけて味の変化を楽しもう。
その1:美味しい茶葉
本当においしい紅茶を淹れたいなら、質のいい茶葉が欠かせないのは事実。葉の形を残したリーフティーならゆっくり抽出して、やわらかい味わいのアイスティーに。リーフティーを砕いたブロークンの茶葉なら、熱湯で抽出してキリッとしたアイスティーに。まずは手元にある茶葉を生かして淹れてみよう。
その2:氷を贅沢に
アイスティーがおいしくならない大きな理由は氷にある。まず圧倒的に量が足りない。しっかり冷やすには紅茶と同量の氷が必要だ。冷蔵庫の製氷皿の氷でもいいけれど、思い切って市販のロックアイスを使ってみよう。「グラスに大きな氷が入るだけで、豊かな気分になります」。数百円で叶う贅沢だ。
その3:道具を用意
常にストライクゾーンのおいしさで、アイスティーを淹れるには、正しい割合で茶葉、湯、氷を合わせること。そのためのキッチンスケールと、抽出時間を計るタイマーは不可欠だ。紅茶の抽出にはティーポットを使ってもいいが、耐熱のビーカーを使うと、湯量も目視で計れてとても便利(蓋は何でもいい)。
茶葉 | 5g |
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湯 | 100ml |
氷水 | 400g |
完成量500mlのアイスティーをつくる。ゼロを二つ取った5gの茶葉を容器に入れ、熱湯を5分の1(100ml)ほど注ぐ。
60~90秒蒸らして茶葉が開き始めたところに、氷水を一気に加え500mlにする。時速100kmで走って(=抽出して)いた高速道路から、ブレーキ(=氷水)をかけ、一般道に入るイメージ。
冷蔵庫に入れて、飲み頃になるまで30~40分待つ。ゆったりとした気持ちで目的地までドライブするイメージ。
冷蔵庫から取り出したらスプーンで軽くかき混ぜ、味を均一になじませる。時間とともに少しずつ味わいが変化していく。
熱い湯で淹れてキュッと冷やすアイスティーとはまた違い、喉ごしがやわらかで舌ざわりも繊細。そのまま少量ずつ味わってもいいし、大きな氷を浮かべても。
24歳で喫茶店に転職して、最初の仕事はアイスティーを客席に運ぶこと。「西洋も東洋もない紅茶の世界を築きたい」と屋号を定め、茶葉販売の傍ら、著書や国内外での教室で紅茶の楽しさを伝えている。毎年テーマを一つ決め、“大西のスタイル”を突き詰めており、アイスティーについてはストローなし、細かい氷なしの現在のスタイルに到達した。
文:松野玲子 写真:牧田健太郎
※この記事の内容はdancyu2018年9月号に掲載したものです。