ころ~んとしたフォルム、可愛い黄色。「ラブリー」という言葉がこれほど似合うたまご料理があるだろうか。くちゅっと一口、ぬる燗をくいっ。醤油の香りが鼻を抜け、濃厚な黄身がまったり溶けていく。むはー、たまごよ、凍らせてたれに漬けただけで君はこんなにドレスアップするのか。ちまちまつまんでいたのにもう完食。えへ、もう一個♪
2016年11月にできた両国の角打ち「東京商店」の一番人気メニューである。3種300円ぽっきりのつまみは6種から選べるが、あまりのおいしさにハマる人続出、「3個ともたまご派」という熱烈ラヴァーまでも。考案者の塩川慶太さん曰く「試作中に冷蔵庫で偶然凍ったたまごを使ってみたら、これが大成功」。まさに失敗は成功の母。普通の醤油漬けの平べったい黄身とは違い、立体的な姿が印象的。「可愛くて豪勢」な名作つまみが誕生した。
冷凍するとピンポン球のように黄身がぷっくり盛り上がり、化学実験をしているようで楽しい。2日目は濃厚さが増してねっとり系珍味に。冷や奴やサラダにのせるもよし、おにぎりの具にもよし。常備したい、デキるたまご料理だ。
「東京商店」は2020年9月に閉店。
卵 | 5個(Mサイズ) |
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味醂 | 80ml |
醤油 | 80ml |
昆布 | 5cm四方 |
卵は殻のまま、一日以上冷凍する。必ず殻が割れるので、庫内が汚れないようにパックごと入れるか、ファスナー付き保存袋に入れて冷凍するといい。
室温なら半日(冷蔵庫なら一日)かけて解凍する。解凍の目安は、割ったとき黄身と白身がしっかり分離している状態。黄身がまだ凍っていても漬けてしまってOK。
まず、味醂を入れた鍋を火にかけ、アルコール分をとばす(500Wの電子レンジで2分ほど加熱してもよい)。醤油と昆布を加えて冷まし、保存容器に入れる。醤油と味醂に昆布をプラスすることで、風味がついておいしく仕上がる。漬けだれは昆布系の麺つゆで代用も可。
解凍した卵を割り、白身とカラザを取り除く。黄身だけを3に漬ける。冷蔵庫で一日置けば完成。時々容器ごと卵を転がし、均一に漬けだれに浸かるようにする。完成から2日以内に食べきる。
文:森本亮子 写真:小林キユウ
※この記事の内容はdancyu2017年4月号に掲載したものです。