みんなが大好きな家庭料理の大人気メニュー“肉じゃが”を、東京・浅草の和食の名店「柿汁」に習いました。大ぶりに切った牛肉の旨味を吸収した、甘じょっぱいじゃがいもは、もはやおかずではなく、メイン料理の風格です。
肉じゃがというのは不思議な料理で、代表的な家庭料理と言われながら、でんぷん質の馬鈴薯の存在感が大きいゆえか、白いご飯のおかずとしては、どこか違和感もある。
思うに馬鈴薯は、牛肉の旨味を吸収する受容体なのではないか?肉じゃがのじゃがは、日本人にとって贅沢な牛肉を、少ない量でもしっかり味わうための道具なのかもしれない。
そんな他愛もない考察を、見事に打ち砕いてくれるのが、この浅草に店を構える「柿汁」の名物肉じゃがだ。「修業先の店の親方がつくっていた肉じゃがです。関西出身の方でした」
と店主の日暮茂行さん。おふくろの味とは一線を画したつくり方だ。「じゃがいもは通年で小粒、牛肉はヒレを角切りにして使います」
あらかじめ半量になるまで煮詰めた濃厚な煮汁で煮る。強火で泡になった煮汁をまとわせながら、短時間で馬鈴薯と牛肉に味を含ませるのだ。
同じ鍋で煮てはいるが、馬鈴薯に牛肉はさほど干渉していない。同じ煮汁で煮てはいるのだが、それぞれが両雄として並び立っている。
盛りつけも当然、肉は肉、芋は芋。料理屋の正調な煮物然とした姿だが、この牛肉で食べる白いご飯が旨い!
牛肉 | 300g(ヒレ) |
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じゃがいも | 12~13個(小粒) |
★ 煮汁 | 3/4カップ(レシピはつくりやすい分量) |
・ 砂糖 | 110g |
・ 味醂 | 40ml |
・ 酒 | 60ml |
・ 醤油 | 100ml |
・ 水 | 200ml |
溶きがらし | 少々 |
青海苔粉 | 少々 |
鍋にすべての材料を入れて中火にかけ、焦げつかないように注意しながら半量になるまで煮詰める。
じゃがいもはよく洗い、芽があれば除く。鍋に入れてたっぷりの水を注ぎ、中火にかける。柔らかくなるまでゆで、ザルに取って冷まし、皮をむく。牛肉は大きめの一口大の角切りにする。
鍋に2のじゃがいもを入れ、煮汁を加えて中火にかける。煮汁をからめながら4〜5分煮たら、牛肉を加える。
牛肉を箸で小まめに返しながら、好みの加減まで火を通す。ミディアムレアで3分くらい。
火からおろして器に盛り、溶きがらしを添えて青海苔粉をふる。
文:渋谷公平 写真:長嶺輝明
*この記事の内容は2019年2月号に掲載したものです。