ポテトコロッケと言えば、ホクホクとしたおいしさをイメージしますが、「旬香亭」のポテトコロッケは一味違い、とろとろのじゃがいもを味わえます。普段の食卓を豪華にするうれしいレシピです。
13年前、このミンチポテトコロッケで、私の中のコロッケの概念が変わった。dancyuのライター歴20年、あらゆるレシピを取材してきた私が鼻息も荒く断言します。このコロッケは、間違いなく殿堂入りのベストレシピ!わが家でも、もう何度つくったことだろう。普段のおかずはもちろん、宴会でも定番。海外の友人からも「あのコロッケを」とリクエストされるほど。
どこがそんなに衝撃なのか。それは、ずばりとろとろ感。パン粉がツンツンと立ったサクサクの衣に箸を入れると、え?これクリームコロッケだっけ?と勘違いするほど、とろとろのじゃがいもが現れる。どっさりと混ざるのは、ジューシーさを残す粗挽きの豚肉。サクサクとろとろ&肉感の三重奏に、もううっとり。ポテトコロッケ=ホクホクを予想して口にすると、その認識が根底からひっくり返される。
当時のレシピは家庭向けのアレンジ版だったが、今回、料理長の古賀達彦さんに店と同じ完全版を教えてもらえることになった。バンザーイ!
まず、じゃがいもはメークインを使うこと。コロッケといえば男爵が一般的だが、しっとりしたメークインが食感に一役買っている。そして、もう一つの主役が豚肉。なにせ、じゃがいも500gに対して300gと大量に入るのだ。ミンチポテトコロッケと呼ぶ所以はここにある。店では機械で粗挽きにするが、家庭では肩ロースの塊肉を手切りに。できれば精肉店で、食感が硬くなる首側ではなく、適度に脂が混ざったリブロース側を選ぼう。たくさん入れるものだけに、良い肉を選ぶと、仕上がりにぐっと差が出る。
玉ねぎと豚肉は、焦がさないようにゆっくりと炒めて、肉のエキスをじわじわと引き出す。それをなんと、片栗粉で硬めの餡状にまとめたところへじゃがいもを投入。力を込めてひたすら練り合わせることで、豚肉から滲み出た旨味をじゃがいもが吸い取り、ねっとりとクリーミーに一体化するのだ。
冷蔵庫で一晩落ち着かせたら、後はたっぷりと贅沢に衣を着せて、油の大浴場でプカプカと気持ち良さそうに揚げれば、一度締まった種がゆるんで、あのとろとろが目の前に。
わが家でもさっそく試作し、完全版に更新完了!丁寧につくれば、なじみのある料理がこんなにブラッシュアップするんだと実感できるはず。普段の食卓に寄り添う、最上等レシピだ。
豚肉 | 300g(肩ロース塊) |
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じゃがいも | 3~4個(500g)(メークイン) |
玉ねぎ | 大1~2個(120g) |
★ 調味料 | |
・ 水 | 50ml |
・ 片栗粉 | 大さじ1と1/3 |
・ 薄口醤油 | 小さじ1(またはウスターソース。店ではタイの調味料、シーズニングソースを小さじ2入れる。) |
・ 塩 | 小さじ1/3 |
・ 胡椒 | 少々 |
卵 | 2個 |
牛乳 | 40ml |
薄力粉 | 70g |
生パン粉 | 300g |
塩 | 適量 |
胡椒 | 適量 |
揚げ油 | 適量(菜種油などくせのないものを使う。) |
文:鹿野真砂美 写真:三木麻奈
*この記事の内容は2018年2月号に掲載したものです。