冬につくりたいじゃがいも料理
ポテトコロッケの常識を覆すとろとろ感

ポテトコロッケの常識を覆すとろとろ感

ポテトコロッケと言えば、ホクホクとしたおいしさをイメージしますが、「旬香亭」のポテトコロッケは一味違い、とろとろのじゃがいもを味わえます。普段の食卓を豪華にするうれしいレシピです。

想定外のとろとろ感

13年前、このミンチポテトコロッケで、私の中のコロッケの概念が変わった。dancyuのライター歴20年、あらゆるレシピを取材してきた私が鼻息も荒く断言します。このコロッケは、間違いなく殿堂入りのベストレシピ!わが家でも、もう何度つくったことだろう。普段のおかずはもちろん、宴会でも定番。海外の友人からも「あのコロッケを」とリクエストされるほど。

どこがそんなに衝撃なのか。それは、ずばりとろとろ感。パン粉がツンツンと立ったサクサクの衣に箸を入れると、え?これクリームコロッケだっけ?と勘違いするほど、とろとろのじゃがいもが現れる。どっさりと混ざるのは、ジューシーさを残す粗挽きの豚肉。サクサクとろとろ&肉感の三重奏に、もううっとり。ポテトコロッケ=ホクホクを予想して口にすると、その認識が根底からひっくり返される。
当時のレシピは家庭向けのアレンジ版だったが、今回、料理長の古賀達彦さんに店と同じ完全版を教えてもらえることになった。バンザーイ!

古賀達彦シェフ。「旬香亭」オーナー、斉藤元志郎氏の右腕として、創業からの長きにわたり活躍。2014年「目白 旬香亭」の開店時から料理長を務める。

まず、じゃがいもはメークインを使うこと。コロッケといえば男爵が一般的だが、しっとりしたメークインが食感に一役買っている。そして、もう一つの主役が豚肉。なにせ、じゃがいも500gに対して300gと大量に入るのだ。ミンチポテトコロッケと呼ぶ所以はここにある。店では機械で粗挽きにするが、家庭では肩ロースの塊肉を手切りに。できれば精肉店で、食感が硬くなる首側ではなく、適度に脂が混ざったリブロース側を選ぼう。たくさん入れるものだけに、良い肉を選ぶと、仕上がりにぐっと差が出る。

玉ねぎと豚肉は、焦がさないようにゆっくりと炒めて、肉のエキスをじわじわと引き出す。それをなんと、片栗粉で硬めの餡状にまとめたところへじゃがいもを投入。力を込めてひたすら練り合わせることで、豚肉から滲み出た旨味をじゃがいもが吸い取り、ねっとりとクリーミーに一体化するのだ。

冷蔵庫で一晩落ち着かせたら、後はたっぷりと贅沢に衣を着せて、油の大浴場でプカプカと気持ち良さそうに揚げれば、一度締まった種がゆるんで、あのとろとろが目の前に。
わが家でもさっそく試作し、完全版に更新完了!丁寧につくれば、なじみのある料理がこんなにブラッシュアップするんだと実感できるはず。普段の食卓に寄り添う、最上等レシピだ。

「旬香亭」のミンチポテトコロッケ

材料材料 (10個分)

豚肉300g(肩ロース塊)
じゃがいも3~4個(500g)(メークイン)
玉ねぎ大1~2個(120g)
★ 調味料
・ 水50ml
・ 片栗粉大さじ1と1/3
・ 薄口醤油小さじ1(またはウスターソース。店ではタイの調味料、シーズニングソースを小さじ2入れる。)
・ 塩小さじ1/3
・ 胡椒少々
2個
牛乳40ml
薄力粉70g
生パン粉300g
適量
胡椒適量
揚げ油適量(菜種油などくせのないものを使う。)

1蒸す&切る

①じゃがいもを洗い、蒸気の上がった蒸し器で、火が通るまで30~40分蒸す。
②蒸している間に、他の下ごしらえをする。まずは、豚肉の筋や血管を取り除く。
③2㎜の厚さにスライスする。冷蔵庫から出したての冷たい肉だと切りやすい。
④スライスした肉を何枚か重ね、細切りにする。できるだけ細く切ろう。
⑤さらにみじん切りにする。脂身の部分を大さじ1ほど取り分けておく。
⑥玉ねぎもみじん切りに。あまり細かくなくてよい。★をボウルに合わせておく。

2炒める&マッシュ

⑦深さのある鍋を弱めの中火で熱し、5で取りおいた脂身を入れて軽く炒める。
⑧脂がしみ出てきたら、6の玉ねぎを入れ、3分ほど焦がさないように炒める。
⑨玉ねぎがしんなりしたら、豚肉を入れる。塩、胡椒各少々をふって炒める。
⑩肉のエキスを引き出すように7分ほど炒める。肉のダマは木ベラで潰す。
⑪肉を炒めている間に①のじゃがいもを確認。すっと串が通ったら、すぐ皮をむく。
⑫バットに入れ、マッシャーで潰す。芋の水分がとばぬよう手早く作業する。

3種をつくる

⑬豚肉に白く火が通ったら、⑥の★を底に沈んだ片栗粉をよく溶きながら加える。
⑭強火にして、木ベラで全体をよく混ぜる。次第に片栗粉の粘りが出てくる。
⑮しばらく混ぜて粉気をとばし、全体がボテッとまとまったら火を止める。
⑯すぐに⑫のじゃがいもを加えて木ベラで練る。芋が熱々のうちに加えること。
じゃがいもに粘り気が出て糸を引くようになるまでよく練る。これが仕上がりのとろとろ感に繋がるのだ。
バットに移して平らにならし、粗熱が取れたらラップをし、冷蔵庫で一晩置く。

4成形&衣つけ

⑲ボウルに卵を割り入れ、牛乳を少しずつ加えながらホイッパーで混ぜる。
⑳泡立てないように白身を切るように混ぜる。卵のコシは写真ぐらいに残すこと。
㉑⑱の種を10等分にし、団子状に丸めてから直径7cmくらいに平たくならす。
㉒全体に満遍なく薄力粉をまぶす。よくはたいて余分な粉を落とすことが重要。
㉓右手のひらでくるんくるんと転がすように、卵液を全体に均一にまとわせる。
㉔たっぷりのパン粉の山にのせる。左手でその上からたっぷりのパン粉をかける
㉕手で上からそっと押さえるようにして、種にパン粉をつけてバッドに並べる。
㉖全部並べたら一度手を洗い、今度は両手でふんわりと包むようにパン粉をつけ直す。
㉗すぐに揚げない場合は、濡らしたキッチンペーパーをかけておくとよい。

5揚げる

㉘たっぷりの油を160℃に熱する。パン粉が焦げずにシュワッと広がるのが目安。
㉙種をそっと入れる。一度に揚げるのは、互いが当たらず、油の中でゆったり泳ぐくらいの数にすること。
㉚温度が下がるので、火を少しだけ強める。種が底につかないよう、菜箸で下から軽く持ち上げる。
㉛大量に散った余分なパン粉を網杓子ですくう。サクサクの衣をまとわせるために、「必要な余分」だという。
㉜コロッケが浮いてきたら、水分が蒸発して中まで火が通った合図。きつね色にするため、火を少し強める。
㉝きれいなきつね色に色づいたら完成。揚げ上がりの油は170℃が目安。揚げ始めよりも高い温度で引き上げるとカラリと仕上がる。
㉞残りも同様に揚げる。すでに油が高温なので、火は強めずにそのままで。余分なパン粉は小まめに取ること。

店舗情報店舗情報

目白 旬香亭
  • 【住所】東京都豊島区目白2‐39‐1 トラッド目白2階
  • 【電話番号】03‐5927‐1606
  • 【営業時間】11:00~14:00(L.O.) 17:00~21:00(L.O.)
  • 【定休日】無休
  • 【アクセス】JR「目白駅」より2分

文:鹿野真砂美 写真:三木麻奈

*この記事の内容は2018年2月号に掲載したものです。