dancyu1991年3月号に掲載された「球界の料理名人、掛布雅之さんが挑む『魚介のクリームソース・パスタ』はマイルドで美味。秘訣はゆで方にあり。」を紹介します!“ミスタータイガース”がイタリアンレストラン「カルミネ」オーナーシェフのカルミネ・コッツォリーノさんにパスタのレシピを教わります。
1955年、イタリア・カラブリア州生まれ。15歳のときに料理の修業のためフィレンツエに移り、日本の武道・仏教に憧れて1978年に来日。青山にあったイタリアンレストラン「ヴィザヴィ」などの料理長を経て、1987年に日本初のイタリア人オーナーシェフとして「リストランテ・カルミネ」を東京・牛込神楽坂にオープンする。現在はイタリア・フィレンツェで宿泊施設や料理学校の運営も手がけている。
当時、35歳だった掛布雅之さんが挑むのは江川卓さんのカーブボールではなく、魚介のクリームソース・パスタ。4種類の海の幸をブランデーで豪快にフランベして、たっぷりのクリームで煮込む、カルミネ・コッツォリーノさんの本格レシピ。イタリア人シェフさながらに調理する掛布さんの男前な姿が記事に収められています。
掲載当時は、掛布さんが引退して3年が経った頃。トレードマークの人なつこい笑顔と締まった体つきは、現役時代と変わらないと綴られています。
家が店をやっていた関係で、子供の頃から母親の代わりに料理することが日常だったという掛布さんは、つねに食べ物には並々ならぬ関心を抱いていたそうです。
当然、胃袋は強靭。阪神タイガースに入団したての頃、先輩の川藤幸三さんに連れられて行った焼肉店で、山のように肉が盛られた直径30cmの大皿3枚を4人で、あっという間に平らげ、ビールもひとりで10本飲んだというエピソードを披露しています。
野球選手は食事に気をつかうというけど、ほんとは食事に気をつかうようになったら選手としては下り坂ですよね。何を食べても体調の善し悪しなんか忘れるぐらいが選手としてのピークなんです。
掛布さんは、知る人ぞ知るイタリア贔屓。当時の愛車はフェラーリの最高級車テスタロッサ。ラビオリやなすのグラタンが大好物のようで、大阪に行きつけのイタリアンレストランもあって、イタリア料理への愛を大いに語っています。
見て楽しいし、味つけも多彩。どうやったらあんな感覚が生まれるのか。考えるだけでも楽しいですね。これはイタリアの車もおんなじですけど。
・ イカ | 1杯 |
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・ 車海老 | 12尾 |
・ ムール貝 | 12個 |
・ アサリ | 250g |
・ レモン | 1個 |
・ パセリ | 少々 |
・ オリーブオイル | 大さじ3 |
・ リングイネ | 400g |
・ バター | 大さじ2 |
・ ブランデー | 50ml |
・ 生クリーム | 300ml |
・ チーズ | 適宜(パルミジャーノレッジャーノ) |
・ 塩 | 適宜 |
・ 胡椒 | 適宜 |
下足の付け根を軽く持ち、足とともに腹わたを引き抜く。
胴の中に手を突っ込み細い軟骨も取り去る。
胴からエンペラ(耳)をはずし、そのまま引いて皮ごと取る。
エンペラをはずした皮の裂け目に指を入れて少しずつ皮を剥がしていく。ある程度むけたら、一気に引っ張って剥がす。エンペラの薄皮も剥がす。
下足のつけ根部分を腹わたから切り離す。
水を張ったボウルの中で目を取り除く。
下足の中心にある嘴(とんび、からす)をつまむようにして取る。
下足のイボイボも手でぬぐい取り、足先の部分は切り取る。
足のつけ根部分に包丁を入れて開き、同じ長さに切り分ける。
胴の部分は1cm幅の輪切りにする。エンペラも同様に1cm幅に切り揃える。
タワシで殻のまわりについている汚れをきれいに洗い流す。
貝の端の部分に出ているヒゲを指先でつまみ、殻にそって引っぱり抜く。
アサリはザルに入れて水で流しながら、手でかき回すようにして洗う。
海老は頭と殻をつけたまま使うので、そのまま水でサッとゆすいでおく。
大きめの鍋に湯を沸かし、塩少々とレモン1/2個を搾り入れる。
湯が沸いたら、イカの胴、エンペラ、下足を同時に入れる。すぐ後に海老も入れる。
3分ゆでたら、素早くザルにあけて冷水にさらす。
海老は、頭を残したまま殻だけを手で取り除く。殻を取り除いた海老とイカをマリネ用のボウルに入れ、みじん切りにしたパセリを加える。
5に適量の塩、胡椒、オリーブオイルを加えて、味を整える。
レモン1/2個を手で絞り入れて、よく混ぜ合わせ、約2時間おいておく。
大きめの鍋にたっぷり水を入れ沸騰させ、湯の量に対して10%の塩を入れる。
パスタは湯の中で互いにくっつかないようにパラリと入れる。すぐにサッとひと混ぜして、約10分強火でゆでる。その間にソースをつくる。
フライパンにバターを溶かし、6を汁ごとフライパンに入れる。
ムール貝とアサリを加え、強火にして煽りながら混ぜる。ブランデーを注ぎ入れ、フランベして香りをつける。ブランデーの火が消えかかる頃、生クリームをたっぷり入れて、とろみがつくまで煮詰める。
パスタがゆで上がったら手早くザルにあげ、ソースが水っぽくならないよう湯分をしっかりと切る。
8にパスタを入れ混ぜ合わせたら、パセリを加える。
最後にパルミジャーノレッジャーノチーズを削って、ふりかけたら完成!
でき上がったパスタを、「召し上がりますか?」と聞かれ、「あたり前じゃないですか」と答えた掛布さんは、スルスルと平らげて「あの塩加減でちょうどよかったんだよねぇ」と、しきりに関心していたそうです。
写真:福永一興