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プロレスラー坂口征二さんがつくる「ローストターキー」

プロレスラー坂口征二さんがつくる「ローストターキー」

1990年12月発行のdancyu創刊号に掲載された「詰め物が決め手。坂口征二さんと“闘魂三銃士”がアメリカ遠征時代を偲んでつくる 海・山の幸入りバターライス詰め『ローストターキー』」(なんて長いタイトルなんだ!)を紹介します。

坂口征二さんと闘魂三銃士が思い出の料理をつくる。

当時、新日本プロレスの社長であった坂口征二さんが、プロレス界の期待の星として活躍していた武藤敬司さん、蝶野正洋さん、橋本真也さん(若くして亡くなられたことが本当に悔やまれます)と一緒にローストターキーをつくるという歴史的な企画です。

修行時代は練習後の食事で20人分の料理をつくることもあったそうで、新人だった頃の4人も先輩にうまい飯を食べさせるため、必要に迫られ料理を覚えたと記事には書かれています。だんだんと料理にのめり込み、食材の買い出しはもちろん、スープはじっくりと2時間煮込むこともあるといった話など、料理自慢をしながらターキーを調理する姿が写真に収められています。

坂口さんと橋本さん。

「いま凝ってるのは煮物。野菜のごった煮とか、お芋の煮っころがしなんかを大量につくって、友達に無理やり食べさせるんだ」——橋本真也さん

練習の後は毎日ちゃんこ鍋を囲んで、相撲取り並みに食べるプロレスラー。坂口さん曰く「よく食べる人間がこの世界では強くなっていく。豪快に食べる人間じゃないと豪快なことはできませんよ」。プロレスという格闘技を職業にする4人は、食事は腹を満たすためだけのものではなくて、体をつくる仕事のひとつだと考え、普段の食事をなによりも大切にしていたようです。

武藤さんがみじん切りする坂口さんをみつめる。

「若い頃はとにかく体をつくらなきゃならないので、ある時期は頭で考えて食べてましたね」——武藤敬司さん

ターキーにバターライスを詰める。

「肉も野菜も入っているちゃんこ鍋は理想の食事といえますね」——蝶野正洋さん

アメリカ遠征時の思い出、バターライス詰めのローストターキー

アメリカのクリスマスといえばローストターキーですが、家庭によって詰め物や香辛料が違います。坂口さんのレシピでは、牡蠣ときのこを混ぜたバターライスがたっぷりと詰められています。

「アメリカの友人が『ターキーを食べに家に来い』と誘ってくれたんです。アメリカ人にとってローストターキーは、まさに温かい家庭の象徴なんですね」——坂口征二さん

ローストターキーの完成図

材料材料 (5~10人分)

★ ローストターキー
ターキー1羽
にんじん1/2個
玉ねぎ1/2個
セロリ1/2個
タイム適量
ローリエ適量
適量
胡椒適量
サラダ油適量
★ ローストターキーの詰め物
A 米240g
A 無塩バター30g
A 玉ねぎ1/4個
A にんじん20g
A セロリ20g
A チキンブイヨン350ml
A 生牡蠣150g
A 塩適量
A 胡椒適量
B レバー1羽分(ターキー)
B 心臓1羽分(ターキー)
B 砂肝1羽分(ターキー)
B にんにく1片
B 無塩バター20g
B マッシュルーム50g
B しいたけ50g
B 本しめじ50g
B ブランデー500ml
B ポルト酒500ml
C 天津甘栗10個
C くるみ20g
C カシューナッツ20g
C アーモンド20g
C ピスタチオ20g
C レーズン20g
C パセリ6g(みじん切り)

下準備

ターキーの形を整えるためのロース針とたこ糸を用意する。

1 ターキーを縛って、形を整える

腹の中をきれいに流水で洗い、水分をとり、手羽の先端を切り落として形を整える。冷凍のターキーを使う場合は、前日に冷蔵庫で解凍しておく。手羽を背に廻して羽交締のように押さえ、反対側にロース針でたこ糸を通して固定。もも肉を折り曲げ胴体につけ、糸を通して縛る。

ターキー
ターキーをタコ糸で固定する

2 バターライスの準備

米を洗ってざるに上げる。牡蠣はたっぷりの塩(分量外)で手早くかき混ぜるようにして汚れを出し、水洗いした後、ざるに上げる。

牡蠣は分量外の塩で洗う

3 野菜と米を炒めて甘みを引き出す

みじん切りにしたにんじん、玉ねぎ、セロリをバターで炒める。野菜がしんなりしたら、米を加えてさらに炒める。この間に別の鍋でチキンブイヨンを水に溶き、沸かしておく。米が透き通ったら、チキンブイヨンを溶いたスープを加え、胡椒で味を調える。

材料をバターで炒める
米をいれてさらに炒める

4 牡蠣の旨味を含ませたバターライスにする

3を炊飯器に移して炊く。約10分したら、2の牡蠣を手早く米の上に散らし、さらに10分ほど炊く。その後、5分蒸らす。

バターライスを炊飯器にいれる
牡蠣を散らす

5 内臓類を炒める

レバー、心臓は開いて血の塊を洗う。砂肝は固い膜と筋を取り除く。みじん切りにしたにんにくを炒めた後、1cm角に切った内臓類を加えて、さらに炒める。内臓の周りが白っぽくなったら、同じく1cm角に切ったきのこを加える。 きのこの香りが出たらブランデーを入れてアルコール分を飛ばす。さらに、ポルト酒を加え、汁気がなくなるまで煮詰めたら、塩、胡椒で味を整える。

内蔵類を炒める
ブランデーを入れる

6 ターキーに具材を詰める

内臓類とバターライス、刻んだ甘栗、ナッツ類、レーズンを混ぜあわせ、塩、胡椒した腹の中に詰める。尻のほうからぎっしり詰め、中味がはみ出さないように縫い合わせる。最後に足先をたこ糸で結んで固める。ターキー全体に塩、胡椒をやや多めにすり込んでからサラダ油を塗る。オーブンペーパーを敷いた天板に乗せる。

ターキーに具材を詰める
塩・胡椒をやや多めに

7 じっくりと焼きあげる

180℃に温めたオーブンで約100分間焼く。横向き40分、反対側40分、胸を上にして20分。金串を刺して澄んだ汁が出てくれば完成!

ターキーの完成図

教える人

坂口 征二

1942年、福岡県生まれ。柔道日本一からプロレスラーに転向し、〝世界の荒鷹″の名を世界中に轟かせた。1960年代から1970年代にアントニオ猪木らとともに日本プロレス界の礎を築く。現在は新日本プロレスの相談役として、後輩育成にあたっている。

ローストターキーのレシピもおいしそうな完成写真も登場するけれど、記事の中では肝心の味についてひとことも触れられていないのです。不思議。
しかも、取材当日に4人が食べたのは、
坂口さん考案のターキーのしゃぶしゃぶだったとか。鍋はあっという間に空になったようですが、ローストターキーは、いったいどこにいったんでしょう?

写真:福永一興