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【睡眠の"質"が体をどう変える?食との関係に迫る①】寝不足が肥満を招くメカニズム

【睡眠の"質"が体をどう変える?食との関係に迫る①】寝不足が肥満を招くメカニズム

毎日しっかり眠っていますか?日中眠くなったり、疲れが取れないと感じているなら、それはよく眠れていない証拠。そもそもどれくらい眠ればいい?睡眠不足はどんなトラブルを引き起こす?睡眠と食事の関係は?など、睡眠についてのあれこれを、食いしん坊倶楽部メンバーで医師の三浦雅臣さんにうかがいました。

たかが睡眠不足……と言うなかれ

みなさんは昨晩、よく眠れましたか?朝起きたときに「まだ寝ていたい」「疲れが取れていない」と感じたり、ずっと眠気が続いていたりする人も多いのではないでしょうか。

よく眠れたか、つまり質の高い睡眠が取れたかどうかは、朝、「すっきりよく眠れた!」と思えるかどうかが大きな判断材料となります。

また日中の眠気以外にも、頭痛がする、朝の血圧が高い、家族にいびきを指摘された、夜間トイレに2回以上起きてしまうなどといったことも、質のよい睡眠がとれていない可能性を示しています。特に夕食で多くの糖や塩分を摂取すると、体が糖や塩分をいつもより多く排出しようとするため、夜間頻尿になることもあります。高血糖や高血圧など、医師の診断を受けた方がいい場合もありますから、たかが睡眠不足……と侮ってはいけません。

睡眠は長ければいいわけではない

「睡眠」は脳や体の疲労を回復させ、免疫機能を維持したり、記憶を定着させたりするために不可欠なものです。睡眠時間と健康リスクの関係を調べるとJカーブを描き、毎日7~8時間の睡眠がもっとも健康リスクが低いとされています。もちろん人それぞれ最適な睡眠時間はありますし、年齢を重ねれば睡眠時間が少しずつ短くなるなど個人差はありますが、一般的には1日7~8時間の睡眠時間より長すぎても、短すぎてもよくありません。

たくさん眠れば眠るだけよさそうなものですが、長時間眠ってしまうのは、長い時間ふとんの中でこま切れの睡眠が連続しているだけのことも多く、睡眠の質が悪い可能性が高いのです。結局、日中眠気に襲われる、疲れが取れないということになりかねません。

寝室

睡眠不足が原因でドカ食いが起きる!

日本人は世界的にも、睡眠時間が短い国民とされていますが、睡眠が不足するとどんな影響を及ぼすのでしょうか。

睡眠不足で疲れが取れない、常に眠気があるということは、当然仕事や勉強などのパフォーマンスも下がり、効率的に時間を使うことが難しくなります。注意力や判断力が低下し、事故やけがなどのリスクも高まります。

それだけではありません。睡眠不足は食欲を増進させるということが明らかになっています。徹夜明けに、妙に食欲が出て、甘いものや油っこいものをドカッと食べてしまったという経験がある人はいませんか?

食欲は、いくつかのホルモンによってコントロールされていますが、食欲を増進させる「グレリン」、反対に抑制する「レプチン」が睡眠と密接に関わっています。 グレリン(ghrelin)は、英語の“grow”がインド・ヨーロッパの言葉で“ghre”であることに由来し、この名前には、成長ホルモン(GH)を放出する(release)という意味も含まれています。またレプチンは、ギリシャ語のやせる(leptos)から命名されています。睡眠不足の状態が続くと、グレリンの分泌が増え、レプチンの分泌が抑えられて、食欲が増進してしまうことがわかっています。

レプチンは代謝をアップする働きもありますので、体から出にくくなると、基礎代謝が落ちる=脂肪が燃焼しにくくなり、どんどん太りやすい体に!脳が食欲抑制が効かない”麻痺状態”になるため、味覚も鈍感になり、何を食べてもおいしく感じられないという残念なことにもなりかねません。

また単純に起きている時間が長くなれば、何かを口にする機会も多くなりますので、結果、肥満を招く可能性は高くなります。「体重を減らしたい人は睡眠時間を増やすといい」といわれることがあるのはこのためです。

肥満は血糖値や血圧、コレステロールが高めの人は特に要注意です。この状態に肥満が加わることで、昔からよくいわれる危険な「死の四重奏」状態に……!睡眠不足なんて些細なことと思っているうちに、じわじわと体が蝕まれていることもありますので、気をつけてください。

毎日睡眠不足ではあるけれど、休日に寝だめをしてなんとか復活しているから大丈夫という人もいるでしょう。でも、寝だめはあまりおすすめできません。土日にまとめて眠ってしまうことで、かえって月曜の朝に起きるのがつらくなる場合があります。また一時的な開放感は得られても、体内時計のリズムがくずれて長期的には慢性的に疲労が取れにくくなったり、病気のリスクを高めたりすることがあります。睡眠は日々の積み重ねが大事なのです。

くらげも睡眠が必要!?

冒頭で「睡眠は脳の疲労を回復させる」と書きましたが、では、脳がないといわれる原始的な動物の一種である“くらげ”は、睡眠をとらなくてもよいのでしょうか。実はくらげも寝たり起きたりしていることが、日本人の研究者らによって明らかにされました。どんな動物でも、やはり睡眠は必要なようです。

現代ではどうしても起きている時間をメインに考えがちですが、動物の進化の歴史を振り返れば、もともとは無駄なエネルギーを使わなくて済む睡眠時間がメインで、活動している時間がサブであったとも考えられます。より生存を有利にするため、起きて活動するようになるにつれ、寝ている時間と活動している時間の立場が逆転してしまったようにも感じられますが、睡眠を軽視すると大変なことになります。しっかり眠ることを第一に考えながら、起きている時間をどう過ごすかが大切です。

次回は睡眠不足を招く悪習慣や、よく眠るための具体的な方法などについてお話しできればと思います。

教える人

三浦 雅臣 先生

東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 助教。2014年東京大学医学部医学科卒業。2021年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了・卒業。糖尿病や肥満症の研究を専門に、最近では老化や睡眠、味覚についても探究を深める日々。

編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock

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