
2026年日本酒dancyu「出会えてよかった!心ふるえる酒」特集では、いつもとはちょっと違った角度から「燗酒」の世界を深堀り。自由な感覚で新しい燗酒の楽しさを体験させてくれる、4人の若手燗つけ師をフィーチャーしました。4人目は池尻大橋「日(ひ)酒場」の南部旭彦さんです。

1991年生まれ。「日(ひ)酒場」共同代表。ヨーロッパを中心に20以上のワインの産地を巡り、ワインを学ぶ。「きょうの日本酒」代表の浜道佐和子さんと出会い、日本酒に開眼。「日(ひ)酒場」では「日本酒遊び」のレシピ開発や日本酒の選定を担当している。
※文中の浜道さんのお名前の漢字は、正しくは旧字体です。ブラウザ上で正しく表示されない可能性があるために「浜」と表示しています。
カン(燗)つけ師となった異色の経歴の持ち主。南部さんが立つ「日(ひ)酒場」は、日本酒の間口を広げることを目指す酒場だ。共同代表の浜道(はまみち)佐和子さん、奈雲(なぐも)政人さん、南部さんは、一合瓶専門の日本酒ブランド「きょうの日本酒」の事業を通して、酒場づくりへの想いを抱くようになる。約1年かけて物件を探し、店長兼料理人に西田憲哉さんを迎えオープン。新しい酒場文化、日本酒文化を育もうとしている。
通常の燗酒も旨いが、この店に来たなら「きょうの日本酒」の燗に、割る・加えるなどの工夫を施した「日本酒遊び」シリーズが断然面白い。おでん屋台のだし割りに着想を得た“出汁割り燗”は、コクのある「龍力(たつりき)」が清らかなだしと融合することで、上質なお吸い物に化ける。「付け合わせの塩やたたみいわしを含みながら飲む口中調味も趣深く、柚子の皮で味変するのも楽しい」と南部さん。
“シナモン燗”は、甘味と柑橘の清涼感を併せ持つ「三毳山(みかもやま)」をシナモンスティックでステアして香りを付加する。ホットワインのように、心身が弛緩する旨さが広がる。
「日本酒遊び」も酒の間口を広げ、魅力を伝えるための仕掛け。南部さんの新たなレシピにも期待が膨らむ。


というわけで、Aちゃんの興奮はホンモノだった。燗のつけ方に違いはあれど、燗酒への愛は深く、燗酒文化の「担い手」としての気概も感じられた。彼らがいれば、燗酒の未来は明るいし、冷酒党をも熱くさせるに違いない。

「きょうの日本酒」以外にも、南部さんが選び抜いた日本酒を約30銘柄用意。クラシックからモダンまで、味のタイプを幅広く揃える。茶室の炉を切るようにカウンターの中央に燗銅壺をはめ込み、白磁の徳利で燗をつける。

文:佐々木香織 撮影:阪本勇