【日本酒】人生最高の一本
【心にしみた酒】苦い思い出を塗り替えてくれた「作」

【心にしみた酒】苦い思い出を塗り替えてくれた「作」

食いしん坊倶楽部メンバー限定のLINEオープンチャットの、「日本酒」ルームのメンバーが、「自身の人生でこれぞ最高の一本!」という銘柄について語る連載。第2回は酒処・新潟県出身のながらぼさんの「人生最高の一本」です。

日本酒を嫌いになった翌日に、日本酒を好きにさせてくれた

元々日本酒が好きで、新潟県独自の日本酒検定の資格なども取得していました。2017年には全国きき酒選手権大会新潟代表に選出され、東京で行なわれる大会本番まで、それまで以上にひたすら日本酒を飲んで勉強を続けました。
しかし結果はプレイオフ敗退。入賞まであと一歩届かず。

大会の後、新潟県から同行してくれた仲間と打ち上げをしましたが、この日まで散々日本酒を飲んできたのに負けてしまった悔しさもあり、ウンザリして「嫌いになった」と断言し、日本酒は一切飲まなかったのでした。

翌日はそれぞれ別行動で、私は虎ノ門で行なわれていた故郷の“弥彦菊まつり”を取り上げるイベントに訪れていました。
一人になって前日の悔しさと悲しさと寂しさに耐えられなくなり、イベントもそこそこに、あてもなく歩いていました。

そんなとき、通りがかった「お茶しゃぶしゃぶ すずか」の店員が話しかけてくれたのが無性にうれしく、店に入りました。
店員さんに「おいしいのでぜひ飲んでください」と薦められたのが、鈴鹿市の「作 穂乃智」でした。それまでの日本酒を“もう飲みたくない”という気持ちよりも、一人になって感じた寂しさのほうが強かったので素直に飲んでみることに。すると、「作」のやさしいおいしさが心にじんわりとしみました。それまでの緊張感から解き放たれ、久しぶりに日本酒を「おいしい!」と感じた瞬間です。
丁度店内にほかの客もいなかったことから、ゆっくり話が出来て私の気持ちも穏やかになりました。

店員さんは九州からカフェを開くための勉強中、私は新潟から来訪中。場所は東京。知ってはいたけど飲んだことが無かった「作」を通して、お互いの人生観を楽しく話しました。

日本酒で生まれた寂しさや悲しさを楽しい思い出に差し替えてくれ、日本酒嫌いを1日で克服させてくれた「作 穂乃智」が、そのとき人生最高の一本になりました。
あそこで「作」を飲んでいなかったら、今でも日本酒を嫌いになっていたままだったかもしれません。

作 穂乃智
「お茶しゃぶしゃぶ すずか」で飲んだ「作 穂乃智」。今でも飲食店で「作」を見かけたら欠かさず飲んでいる。

文:ながらぼ(食いしん坊倶楽部メンバー) 構成:編集部