浅草で飲みたい。しかも、ひとり飲みしたい。できれば、観光客向けではない地元に根付いた良店で。 ――そんな欲望が湧いたときこそ、浅草の食文化を知ることができる『神林先生の浅草案内(未完)』のページをめくってみてください。
現在、好評発売中の『神林先生の浅草案内(未完)』は、都立浅草高等学校、国語教師だった神林桂一さんが、dancyu WEBで連載していた「観光客の知らない浅草~浅草高校・国語教師の浅草ランチ・ベスト100~」「観光客の知らない浅草~浅草高校・国語教師の飲み倒れ講座~ 神林先生の浅草ひとり飲み案内」をまとめた本です。
神林先生が浅草エリアで訪ねた店は1,255軒。
ひとり飲み編は、「ひとり飲みの店ランキング」というタイトルのもと、神林先生の偏愛店25店を挙げた手製の「ミニコミ」より、11店を紹介しています。
いかに厳選されたお店ばかりか、察しがつきますよね。
(が、そこは「飲み倒れ」が専門の神林先生。ランチ編にも、夜の営業なら「飲み」にばっちりの店が登場しています)
神林先生は言います。
観光客向けの店が立ち並ぶ「表」で浅草の本当の魅力を見つけるのは難しいものです。「観音裏」と呼ばれる浅草寺裏の花街にこそ多くの名店が潜んでいます。と同時に、この地域は、小さな、粋な、居心地のよい「ひとり飲み」の店の宝庫でもあるのです。
本書に登場するのは、魚が旨い酒場、おしゃれな洋食店、オーセンティックバー、神林先生がひと際愛したお母さん酒場などなど、ジャンルは多岐にわたります。
お酒の種類だって、ビールにサワー、日本酒に焼酎、カクテルにシングルモルトと多彩です。
神林先生は、本書でこんなことも書いています。
僕は、飲み歩き、食べ歩きをするとき一人が多いのは、店の人や居合わせたお客さんと話したり、日常だけど日常じゃない時間が過ごせるから。それは僕にとって、最高の人生の学び舎なんです。
そして、ランチ編同様、神林先生のお店選出の基準は独特。
有名なグルメサイトをはじめ、一元的な情報に頼らす、自身の情報を蓄積していきます。
本書には、店名に添えて、ランチ編とはまた別の評価基準のマークが添えられています。
[女将] 名物女将と話ができる店
[大将] 寡黙で腕のいい大将がいる店
[カ] カウンターで飲める店
[酒] いい酒が揃う店
[肴] 肴が充実している店
[話] 主人や客との会話が楽しめる店。情報交換ができる店
[雰] 渋くて落ち着いた雰囲気の店
[さ] さんざめき(心地よいざわめき)の中で飲むことができる店
(※連載当時の基準となります)
懐深い浅草で、どうぞあなたの偏愛店を見つけてください。
撮影:大沼ショージ、萬田康文(カワウソ)
1954年5月26日生まれ。東京都出身。教員生活43年。食べ歩き、飲み歩き歴46年。
都立一橋高校時代から食のランキング・ミニコミを刊行(おもに職場で配布)。下町エリアを中心に酒場、定食屋、バー、和・洋・中・エスニック料理店、その他と守備範囲は広範囲に及ぶ。なかでも“お母さん酒場"には並々ならぬ情熱を持つ。
食にまつわる書籍、雑誌、テレビ番組、ランキングサイトなど、リサーチにも余念がなく、自作のデータベースには行った店・約9200軒を含む1万5000軒の食の店や食の情報が整理されている。2020年8月24日逝去。