農家酒屋「SakeBase」の一年 ~田んぼの開墾から酒造りを始める酒屋~
2021年の米作りが始まっています

2021年の米作りが始まっています

農家酒屋「SakeBase」では今年度もオリジナル酒の醸造をめざし、自社での米作りを始めました。本格栽培2年目、新たなチャレンジが満載です!

4月下旬、土気(とけ)の田んぼで手植え

今年はプロの農家として、恥ずかしくない収量をあげるのが目標

自ら栽培した酒米・山田錦を使ったオリジナル酒を、今年3月にリリースしたSakeBase。昨年は米の収量がタンク1本の仕込みには足りず、麹米としてのみ使用されたのだが、今期はSakeBase栽培の米のみで1本仕込めるようにと心に決め、3月から稲作を始動している。

昨年使った種籾(たねもみ)は前年に無農薬で自家栽培したものだったが、今年は田んぼの面積を増やしたため、茨城県の種苗会社から無農薬の種籾を購入した。

新設したビニールハウスに最初に種蒔きしたのは3月7日。田植え計画に合わせ、時期をずらして育苗していく。

ビニールハウス
昨年使った育苗用のビニールハウスは台風で大破してしまい、今年は新設のビニールハウスで育苗。
水やり
健やかに育つよう、1日2回の水やりは欠かせない。

土気の田んぼでの田植えは、4月中旬からスタート。昨年に比べると、1か月以上早い始動だ。昨年の経験を経て、「出穂(しゅっすい)の時期に高温障害を起こさないように、また、台風の時期に稲が倒れることを防ぐために」時期を早めたのだという。また、千葉は温暖な気候なので、早めに田植えをしても問題がないことに気がついた。苗の間隔は、昨年は30cmだったところを、収量を上げるために20cmに。深さは「活着しそうだな、と感じる深さ」に植える。撮影は4月20日。カエルの大合唱が、賑やかに田植えを応援する。

種籾
種籾は奈良県の種苗会社から購入したものを使用。発芽して20日ほどたった苗を田植えする。
手植え
土気の田んぼは、今年も全量、手植えをした。形が入りくんでいたり、ぬかるみが多かったりで、田植え機を使うことができないのだ。

SakeBaseの米栽培は、無農薬、無肥料の有機栽培だ。「純粋に、この土地のものだけでつくりたいから」と代表の宍戸涼太郎さんは言う。単に米を作るというだけでなく、農業と酒屋の営業を通して、この土気という土地の環境保全にも関わっていきたい。「山田錦の稲穂の上をホタルが飛ぶんですよ」。コロナ禍が明けたら、日本酒を飲みながらのホタル鑑賞会を開催する計画もある。

このあたりはもともと肥沃な土地で、しかも約30年間耕作放棄されていた。生き物も多いし、生き物の出す有機物も稲の生育にいい影響を与える。雑草も育ちにくい。また、「冬の間に藁を入れたり、糠を入れたり。むちゃくちゃメンテナンスしています」と宍戸さん。そんな条件が相まって、無農薬無肥料を実現している。「極力、環境に負荷をかけない方法を選ぶべきだと思っています。飯米だとコスト的に難しい分もあるけれど、僕たちが造るのはお酒だから、実現の道があると思いました」。

シンボルマーク
2019年につくった田んぼ脇のハートのシンボルマークも、すっかり風化。
田んぼ
この6畝(180坪)ほどの田んぼは、2人で3日かけて田植えをした。
宍戸さん
「今年もいい山田錦を作りたいです」と宍戸さん。

さらに今年はこの小山谷津地区の田んぼのほかに、車で15分ほど離れた同じ土気の越智(おち)地区でも田んぼを手がけることになった。こちらの農地は0.4haと小山の2倍ほどあり、昨年まで田んぼとしてバリバリ現役だった土地だ。土気のように開墾から始める必要はない。田んぼの持ち主が高齢で引退したところを、千葉市の農業委員会の職員さんが仲介してSakeBaseに紹介してくれたのだ。

そして、トラクター、田植え機、コンバイン、乾燥機まで低額で譲り受けることができた。新たな越智の田んぼと機械類を得たことで、昨年の450kgに対し、今年は2000kgの米を収穫予定だ。「自前米のみでタンク1本の仕込み」も俄然、真実味を帯びてきた。

越智の田んぼ
今年から新しく借りることになった越智の田んぼは、見渡しのきく平地にある。
猪除けの電線
田んぼと道の境には、猪除けの電線が張られている。

開墾から始めたワイルドな小山の田んぼ、広々と恵まれた近代的な越智の田んぼ。今年のSakeBaseは対照的な2地区の田んぼで、山田錦を栽培する。「小山の田んぼは、越智の田んぼに比べて生産性が低いかもしれませんが、非効率な田んぼで環境を保全しながら価値あるものを生み出すという感覚を大切にしたいです。酒造りのカギを握る麹米には、大地のエネルギーを存分に感じられる小山地区の米を使いたい」と宍戸さん。

2つの田んぼで、今年はどんな米ができるのだろうか。

稲
田植えしたばかりの稲が、風にそよそよとなびく。秋には立派に実って、冬には無事にお酒になりますように。

店舗情報店舗情報

SakeBase
  • 【住所】千葉県千葉市稲毛区緑町1-22-10
  • 【電話番号】04-3356-5217
  • 【営業時間】12:00~20:00(立ち飲みは休止中)
  • 【定休日】月曜
  • 【アクセス】JR総武線「西千葉駅」南口より6分

写真:山本尚明 文:里見美香(dancyu編集部)