明日、どこに食べに行こう?
とんかつ屋ならではの良質なラードであげる絶品アジフライ!「とんかつ藤芳」|美味しいアジフライが食べたい!②

とんかつ屋ならではの良質なラードであげる絶品アジフライ!「とんかつ藤芳」|美味しいアジフライが食べたい!②

浅草橋にある「とんかつ藤芳」では、とんかつ屋ならではの良質なラードであげる絶品アジフライが楽しめます。

揚げ物のプロの技が光る

店内
もともとは台東区のおかず横丁で精肉店を営んでいただけに、肉を見極める目は確か。二代目の遠藤猛さんを中心とする家族経営で忙しいランチタイムを切り盛りする。一品から頼める出前が売り上げの4割を占める(!)ことからも、地元で愛されてきた歴史がうかがえる。

福岡生まれの僕は、子どもの頃からカレイの煮つけ、サバやアジの開きを食べて育った。当時はそれらが安い魚の代表格だったのだ。あまりにも食べすぎて嫌いになり、東京で一人暮らしをするようになってからは口にしなくなったが、不思議なことに40代になったあたりからグングン好きになり、いまではアジフライや塩サバは好物のひとつになっている。
「とんかつ藤芳」は、そんな僕から見て理想的なアジフライを出す店。家庭ではつくりえない衣のサクサク感と出来たてのアツアツ感、豊洲市場の専門店から仕入れた鮮度の良い魚が一体となって迫ってくる逸品である。じっくり味わって「旨い」と呟くのではなく、噛んだ瞬間に「うまっ!」と声が出る。食感がべらぼうに軽いのだ。
まず塩だけで食べてみたら、衣のおいしさがよくわかった。つぎにソースをかけると、淡白なアジに濃厚さが加わる。これはビールに合う。いや、ご飯も進む。とんかつとの合盛りを頼んだら、サクサクとガッシリの合体で無敵だ。
とんかつ屋が良質のラードで揚げるのは当然として、二代目店主に尋ねると、秘訣は揚げ方にあるらしい。アジフライはじっくり揚げるのではなく、衣の色が薄いきつね色に変わってきたらサッと引き上げるべきなのだそうだ。その時点でアジには十分に火が通っている。揚げ時間が長いと衣がベタつくし、身も硬くなる。
これほど完成度が高ければアジフライ目当ての客も多そうだが、ご主人は飄々としたもの。開店時からメニューにある定番商品だから絶やさずやってきた。先代のつくり方を忠実に守り、特別なことはしていないと笑う。
きっとそこがいいんだなあ。“こだわりのアジフライ”なんて言われたら、食べてて落ち着かないしね。

ヒレ一口カツとの定食
サクッと軽い歯ごたえに箸を持つ手が止まらない絶妙の揚げ具合。単品も人気だが、写真のヒレ一口カツとの定食970円は腹持ちもよく男性常連客に人気だ。

ワンモアフライ!

豚のトロとろかつ定食

分厚いバラ肉を一晩かけて煮込んでから揚げる、二代目が考案したオリジナルの人気メニュー“豚のトロとろかつ定食”970円。肉の柔らかさに驚かされる。

店舗情報店舗情報

とんかつ藤芳
  • 【住所】東京都台東区浅草橋5‐17‐5
  • 【電話番号】03‐3865‐2244
  • 【営業時間】11:00~14:30(L.O.)17:00~19:50(L.O.)
  • 【定休日】日曜 祝日 第3土曜
  • 【アクセス】JR・都営浅草線「浅草橋駅」より10分

文:北尾 トロ 写真:本野 克佳

※この記事の内容はdancyu2019年10月号に掲載したものです。

北尾 トロ

北尾 トロ (ライター)

1958年、福岡で生まれる。 小学生の頃は父の仕事の都合で九州各地を転々、中学で兵庫、高校2年から東京在住、2012年より長野県松本市在住。5年かかって大学を卒業後、フリーター、編集プロダクションのアルバイトを経て、26歳でフリーライターとなる。30歳を前に北尾トロのペンネームで原稿を書き始め『別冊宝島』『裏モノの本』などに執筆し始める。40代後半からは、日本にも「本の町」をつくりたいと考え始め、2008年5月に仲間とともに長野県伊那市高遠町に「本の家」を開店する。 2010年9月にノンフィクション専門誌『季刊レポ』を創刊。編集発行人を務めた。近著に『夕陽に赤い町中華』(集英社)、『晴れた日は鴨を撃ちに 猟師になりたい!3』(信濃毎日新聞社)がある。