山の音
ショーン・ペンも同い年。
大森さんの写真 大森さんの写真

ショーン・ペンも同い年。

人は平等に年を取る。同じ年に生まれれば、年齢も一緒。月日によって多少の違いがあるけれど、同じだけの時間を生きて、新しい年を迎え、また年を取る。でも、終焉はそれぞれ。同じ年に生まれた中で、いったい誰がこの世でいちばん長い時間を過ごすことになるのか。それは、たったひとりを除いて知る由もない。もしかしたら、たったひとりも自分がナンバーワンだと知らないかもね。

たった20,454日しか生きていない56歳

2019年のクリスマスに満56歳になった。1963年生まれ。ブラッド・ピットや皇后陛下の雅子さんと同じ学年である。
そして、その1週間後が元日というわけで、年を意識する季節である。56歳といえば1,767,225,600秒生きている計算である。17億秒、ってよくわかんないけど、長いっすね。でもこんなに生きて来たのだから、その時間を秒で考えると単位が京とか、垓とか、行くのかなと思ってたけど億なんですね。まあ人間なんて小さなものです。たった20,454日しか生きていない56歳。頑張ろうぜ、ときどきは!と自分に言い聞かせる年末年始なのである。

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不思議なのは、時間ということを考え始めると、何とはなしに宇宙のことに考えがいくのも面白い。銀幕の上の1969年、若いヒッピーの女の子に口説かれて、でもオマエとは絶対無理だから、という風情がなかなか良かった後期中年のブラピは、その次の映画で宇宙飛行士になって連絡の途絶えた宇宙ステーションにいる自分の父親に会いに行ってたな、そう言えば。舞浜のシネマイクスピアリで2時間半の映画をポップコーン頬張りながら見るのが9,000秒である。
宇宙に関連する単位といえば光年があって、かっこいい字面ですね。光と年。でも、ご存知のようにこれは距離のこと。約9兆5000億km。1年間に光が進む距離。
ちなみに地球からもっとも遠くにある天体っていうのはGN‐z11 というおおぐま座の方向にある高赤方偏移銀河だそうで、約320億光年離れている。まじ遠い。

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所要時間32分乗車時間27分乗換1回距離

いまこの文章を書いているのは2019年12月27日で、依頼された撮影の仕事、という意味では今日が仕事納めで、いまから八丁堀の事務所を出て新富町から池袋経由で久しぶりに西武池袋線に乗って東長崎で降りて、とあるペインターのアトリエで彼のポートレートを撮影する予定なのだが、乗り換え案内ジョルダンによると「12:57発 → 13:29着 総額 350円 (切符利用)所要時間32分乗車時間27分乗換1回距離14.0km」 と出てきた。あんまり遠くない東長崎。

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彼のアトリエに行くのは初めてなので、その部屋に自然光がどのくらい差し込むのかわからないのだが、その光は太陽から8分19秒前に発せられた光であって、その反射で彼のポートレートを撮影する。
昼間にボクたちが見ているほとんどのものは8分19秒前の光の反射なんだな。

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――1月25日につづく。

文・写真:大森克己

ショーン・ペンも同い年。

大森 克己(写真家)

1963年、兵庫県神戸市生まれ。1994年『GOOD TRIPS,BAD TRIPS』で第3回写真新世紀優秀賞を受賞。近年は個展「sounds and things」(MEM/2014)、「when the memory leaves you」(MEM/2015)。「山の音」(テラススクエア/2018)を開催。東京都写真美術館「路上から世界を変えていく」(2013)、チューリッヒのMuseum Rietberg『GARDENS OF THE WORLD 』(2016)などのグループ展に参加。主な作品集に『サルサ・ガムテープ』(リトルモア)、『サナヨラ』(愛育社)、『すべては初めて起こる』(マッチアンドカンパニー)など。YUKI『まばたき』、サニーデイ・サービス『the CITY』などのジャケット写真や『BRUTUS』『SWITCH』などのエディトリアルでも多くの撮影を行っている。