キリンビールの「本麒麟」が、世界のビアカップやコンペの舞台で金賞三冠受賞を達成しました。この栄誉が意味する、本当の凄さとは? また、2020年も同社内で記録的なヒットを続ける「本麒麟」のうまさの秘密とは? dancyu食いしん坊倶楽部の“部員”2名とリポートします。
10月初旬、キリンビール横浜工場を訪ねたdancyu食いしん坊倶楽部の部員を待っていたのは、この時点ではまだ公式発表されていない事実。キリンビールの「本麒麟」が、世界の名だたるビアカップやコンペ、セレクションで金賞三冠受賞を達成したというニュースでした。
取材は座談会形式で進行。右が「本麒麟」の中味開発を担う醸造家・大橋優隆さんと、ブランド担当・京谷侑香さん。左がdancyu食いしん坊倶楽部のフリーライター・田代貴洋さんと料理研究家の吽野(うんの)英里さん。
金賞三冠の内容とは、世界5大ビール審査会の一つ「インターナショナル・ビアカップ2018」の“フリースタイルライトラガー部門”金賞(リニューアル前の商品にて受賞)、世界の酒類バイヤーが評価を行なう「メルボルンインターナショナルビアコンペティション2019年」の“インターナショナルスタイルラガー部門”金賞、「モンドセレクション2019年」の“ビール、水&ノンアルコール飲料部門”金賞の三冠。
ここで、「本麒麟」ブランド担当の京谷侑香さんから受けた説明が、目からウロコ。
部門の名前から察してもらえると思うのですが、フリースタイルライトラガー部門、インターナショナルスタイルラガー部門……。つまり、新ジャンルというのは日本での分類で、海外にはそうした区別がないので、大きくビールとして評価していただいているんですよ。
えっ!つまり「本麒麟」は、新ジャンルとしてではなく、世界各国のビールと同じ土俵でビールとして評価され、金賞を受賞したということ。これは凄いことだ。
参加したdancyu食いしん坊倶楽部の部員も「ますます買いたい気持ちが湧きました」(吽野英里さん)、「世にニュースが出たら、注目度がまた変わってきますね」(田代貴洋さん)。
ここで、部員の吽野さんから質問。
「これまで新ジャンルというと、ゴクゴク飲めて爽快なのどごしを楽しむイメージがありました。でも『本麒麟』は違って、コクがあって味わう感じ。どこが違うんですか?」
これには、「本麒麟」の中味開発を担った醸造家の大橋優隆さんが答えてくれました。
ビールに一番近い味を目指そう!というところから、「本麒麟」の中味開発は始まりました。そこでまず追求したのが、“力強いコク”があること。でもそれだけでは不十分で、日々楽しんでいただく新ジャンルだからこそ“飲み飽きないうまさ”がなくてはだめ。二つを両立させることが、醸造の上でのテーマになりました。
何百回にも及んだ試験醸造の中では、コクの強さを求めて麦100%での試作品、トロピカルフルーツのような香りのするホップを使ったクラフトビール的な味わいの試作品もあったそう。
そうして辿り着いたのが、“キリンビールの原点”であるキリンラガービールのおいしさだったと大橋さんは言います。つまり「本麒麟」は、誕生から130年以上、日本のビールの歴史をつくってきたとも言えるキリンラガービールのDNAを正しく受け継ぐ本格派ということ。
「醸造上の鍵となったのは、ホップの種類と使い方、そして熟成方法でした。いずれも試行錯誤の果てに再発見した、キリンラガービールの醸造法に通じるキリンの伝統技術がベースです」(大橋さん)
この日は、サプライズが二つ。一つは、「本麒麟」の香味骨格の軸となっているドイツ産ヘルスブルッカーホップの毬花(まりばな)を実際に手に取り、香りをかがせてもらえたこと。二つ目は、長期低温熟成していない「本麒麟」の無濾過を試飲させてもらえるという貴重な体験!
ドイツ産ヘルスブルッカーホップの香りをかぐ。「このホップは、キリンラガービールでも使われているそうですね。強烈な香りで、どこからあの心地いい香りに変わるのか……。想像できません」と田代さん。
熟成前の「本麒麟」の無濾過を試飲する。「ミルキーな香りがします。熟成をしていないだけで、まるで違う飲み物のように感じます」と吽野さん。ワインエキスパートの資格も持つ料理研究家らしい意見だ。
ドイツ産ヘルスブルッカーホップは、少し冷涼な印象を出すホップなんです。キリンラガービールに通じる、引き締まったキレ感を出す上でどうしても必要なホップでした。そして、われわれがふだん新ジャンルで行なっている低温熟成と比べて1.5倍の時間をかけた長期低温熟成をすることで、この荒々しさが落ち着いて、まろやかな味わいになっていくのです。
「これだけではなく、キリンビールが約130年間、培ってきたすべての技術を『本麒麟』に注ぎ込みました」とも大橋さん。
改めて、熟成前の無濾過と完成品の「本麒麟」を飲み比べてみると、大橋さんの言葉に納得。「本麒麟」の檜(ひのき)を思わせる清々しい香りとコクのある味わいの香味一体、“力強いコク”と“飲み飽きないうまさ”の両立が実感できる体験でした。
取材も終盤に入ったところで、田代さんから意見が。
「僕はビール類にとって、味わいはもちろん、パッケージやネーミングも大切な要素だと考えています。『本麒麟』のパッケージは品と定番感があり、ネーミングからは“本気度”が伝わってきていいですね」
最後に、京谷さんが答えてくれました。
そう言っていただけると、本当にうれしい。私は「身近な新ジャンルこそ、お客様にとって一番のおいしさを届けたい!」という夢を醸造家にぶつけることにかけては、誰にも負けないつもりなので(笑)。ただ、お客様にとってのおいしさは、日々どんどん変わっていくもの。ゴールはないです。進化しなきゃっていつも思ってます。
発売からわずか1年でリニューアルを実施して成功。さらなる進化を求め続ける「本麒麟」。
世界の舞台で、金賞三冠受賞という快挙を成し遂げたおいしさの原動力に触れられた取材でした。
取材の舞台となったキリンビール横浜工場。工場見学ツアーがあり、出来たてのビールを味わえるレストランも併設。
キリンビールお客様相談室
0120-111-560
写真:牧田健太郎