八宝茶のすゝめ。
八宝茶のある生活で、ゆったり&リラックス。

八宝茶のある生活で、ゆったり&リラックス。

八宝茶は好きな器と食材に湯を注いで楽しむもの。自分のためにつくる八宝茶も良いけれど、誰かのためにつくる八宝茶もまた楽しからずや。出張中国茶屋「ノンチャ」の山田順子さんが八宝茶の楽しみ方を語ります。シリーズ最終話。

八宝茶はひとりで楽しむ?みんなで楽しむ?

八宝茶
八宝茶は自分の好きな器に食材を入れ、湯を注ぐだけ。むずかしく考えず、リラックスして飲むのが楽しむコツだ。

「八宝茶は自由なところが良いんです。体を労って漢方食材を集めても良し。食べ応えを重視した食材だけでつくっても良し。その日の体調や気分によって、自分好みの食材を合わせてつくりましょう」

と、「ノンチャ」の山田順子さんは言う。

山田さんが披露してくれた三種類の八宝茶は、柑橘やハーブの甘い香りを漂わせ滋味深い味わいだった。華やかな見た目もさることながら体に良い効能も多彩。体にじんわり染みてくるような感覚を愉しませてくれた。

茶器
手の平にすっぽり隠れてしまうような大きさの可愛らしい茶器。

「友人が訪ねてきたときは、小さな茶器を用意して八宝茶をみんなでシェアして飲んだりしても面白いですよ」

山田さんはそう言うと、足元の大きなリュックサックから小さな器を取り出した。中国茶を飲むときに使う茶器だ。大きな器でつくった八宝茶を、レンゲで小さな器に注いで配ってくれる。

差し出された器の中には、棗や松の実などの具材がぷかぷか泳いでいて可愛らしい。友人のところを訪ねて、八宝茶がウェルカムドリンクで出てくる光景を想像すると、嬉しいなと思う。

八宝茶
具材も一緒に注ぐ。飲みきるとホストが再び注いでくれる。

「中国では、もてなす人が客人に茶を振る舞う風習があるんです。こまめに相手の器に茶を注いだりして、コミュニケーションを取りながら、肩の力を抜いて世間話をするんです」

小さな器に注がれた八宝茶は大体ふた口ぐらいで飲み終わる。空になった器をホストに渡し、再び注いでもらう。そのことについて何か言葉を交わすわけではないが、茶のやりとりが自然に行われて、不思議な心地良さを感じる。リラックスしている自分に気が付いた。

具材
一度飲み干しても湯を注げばエキスば、再び抽出され、味わいはどんどん淡くなる。

大きな器の中は、あっという間に具材だけになっていた。

「具材だけが残っても、そのまま新しい湯をさせば同じ具材で3回ぐらいはエキスが出てくると思います。途中で新しい食材を足して、味を変えていくと飲み飽きずに楽しめます」

山田さんが新しい湯を注ぐと、器の中は再び鮮やかな色に染まってゆく。一杯目よりも淡い飲み口になっているが十分おいしい。中国や台湾では、水筒に入れた茶葉に二度、三度と湯を注ぎ続け一日中飲んでいるんだとか。

具材
湯を注ぐ度に具材を足せば、たくさんの滋養をとることができる。

八宝茶から始まる新しい世界。

「『ノンチャ』のお客さんの中には、湯を注いだ八宝茶を10分ほど放置してエキスを抽出しつくしてから具材と一緒に飲むという人もいました。具材の効能は吸収しやすくなりますよね。八宝茶はつくり方も自由だけど、飲み方も人それぞれなんです」

山田さん自身は、一ヶ月に一日行う断食の回復食に八宝茶を飲むそうだ。空っぽになっている体に、八宝茶の滋味深い味わいがちょうど良いんだとか。

暑い季節、食欲がないときなどにも八宝茶ならおいしく栄養補給をできる。中国や台湾の人みたいに、水筒に具材を入れて湯をさしながら飲んでいれば、暑さと冷房で疲れた夏も乗り切れそうだ。

八宝茶
湯を注いでから10分ほどすれば、湯の色は濃くなり具材も咀嚼しやすくなる。たっぷりと抽出されたエキスを舌で感じる。

体を労るためにじっくりひとりで楽しむのも良し。心地良い時間を友人と共有しても良し。

八宝茶は自分の好きな器、食材、場面で自由に、肩の力を抜いて味わうことが大切。

「八宝茶をリラックスして楽しむ精神は、中国茶の文化からきています。見た目も華やかで体に良い八宝茶が、身体に良い食材に興味を持つ入口になってくれたら嬉しいなと想います。難しいことは何もありません。ぜひ、身近な食材からでも試してみてくださいね」

「ノンチャ」の山田順子さん
「八宝茶はあなたの世界を広げてくれるはずです」。山田順子さんの言葉だ。

――おわり。

文:河野大治朗 写真:萬田康文

河野 大治朗

河野 大治朗 (編集者)

1991年生まれ。茨城県出身。2018年「塚田農場 浅草店」店長から、dancyuのweb編集部で働きはじめる。自分の好奇心を大切に、気になることはやってみる。一人前の編集者になるため修行中。特技は羊の解体。趣味はきのこ狩り。