写真家の大森克己さんの連載が始まりました。とても重要なことと、本当にどうでもいいことの境界線はどこにあるのか。嬉しいことと憂鬱なことは何が違うのか。その他もろもろ、写真をめぐる雑感を中心に、昨日からちょっとずつ綴ってます。
2月6日。ある雑誌の取材で俳優の光石研さんを撮影した。大泉学園の東映撮影所。
待ち合わせの時間、14時過ぎにスタジオを訪ねたときはまだ雨が降っていて、それは少し鬱陶しいけれど、このところずっと雨が降らずに空気がとても乾燥していたので湿度が高いのはホッとする。
テレビドラマのナレーションの収録が終わって、楽屋に戻ってきた光石さんに愛用の万年筆を見せてもらって撮影する。一眼レフのマクロレンズで原稿用紙の上の万年筆のキャップに寄って、ファインダーをのぞきながら左手で位置を調整して、キャップのクリップに彫ってあるTIFFANY&CO.という文字にフォーカスをあわせてシャッターを切る。カポーティーやヘップバーンをほんの少し思い出す。
楽屋の蛍光灯はとても明るかった。インタビューが終わって外に出ると、雨がやんで西から空が明るくなってきていてなんだか嬉しい。
スタジオの玄関前で雨上がりの光の中、ポートレートを撮らせてもらいながら、ちょうど1年前に光石さんと北九州と福岡を旅した想い出話。黒崎の角打と博多っ子純情。
別れる前にマネージャーの柳さんがスマートフォンで2人の記念写真を撮ってくれた。光石さんがピースサインを出しているので、自分は掌を広げてパーをだして負けてみた。
クルマで帰って行く光石さんをライターの松本さんと編集の山崎さんと柳さんと自分の4人で見送って、お腹へったなあとつぶやくと、4人ともお昼をちゃんと食べていないことが判明して石神井公園の喫茶店「リリー」に行って定食を頼もうとしたら御飯が終わっていて、なのでコーヒーを頼んだら、NHKのFMから山口百恵の「いい日旅立ち」が聴こえる。ああ、ここもしっかり日本のどこかだよなぁ。
コーヒーではお腹がいっぱいにはならないので、石神井公園駅前のチェーン店「おぼん de ごはん」で「五穀ひじきと豆腐のハンバーグ野菜あん」を食べて、柳さんは「漬け鮪&とろたく丼」を食べて、松本さんは「鶏の南蛮揚げ 味噌タルタル」を食べて、山崎さんは「那須高原豚の生姜焼き」を食べて、自分はセルフサービスの味噌汁をおかわりした。
――明日につづく。
文・写真:大森克己