
今年も太田哲雄シェフがアマゾンカカオで魅了します!つくり出すのはカカオとスパイスが香る“バターチキン”の最新作と、骨つき鶏もも肉がどかっと入るアマゾン伝統のスープ“インチカピ”。未知なる味わいに一口で虜になること間違いなしです。毎年大人気の祭限定スペシャルクッキー缶やリピーター続出のキャラメルポップコーンのほか、30種類の柑橘を使ったパウンドケーキなどスイーツも一段とパワーアップ。アマゾンカカオの“沼”にどっぷりハマってください!













2019年の初参戦から連続6回目の出店となる「ラ・カーサ・ディ・テツオ・オオタ」の太田哲雄さん。毎年大勢のファンが詰めかけるdancyu祭の“顔”といえる存在だ。
人気の秘密はなんといっても驚きをもたらすおいしさにある。核となるのは太田さん自らが買付から輸入・販売までを担うアマゾンカカオ。アマゾンのジャングルで原種のカカオと運命的な出会いをして以来、「カカオ農家とアマゾンの環境を守りたい」との思いから普及活動を続けている。現在、契約するカカオ農家は約2000軒にも及び、その販路は国内だけでなく海外にも広がっている。2023年に世界No.1レストランに選ばれたペルーの「セントラル」で愛用されているのも太田さんが扱うアマゾンカカオだ。
一方、自身でもアマゾンカカオの魅力を広めるべく料理や菓子を開発。カカオニブ入りのキャラメルポップコーンは長年つくり続けているシグネチャーの一つだ。ただし、「定番商品以外、同じものはつくりません」との言葉通り、料理も菓子も催事に合わせて常に新作をリリースしている。
dancyu祭ではこれまでにローストポークのブルスケッタやエルビスサンドなどが披露されてきたが、今年はバターの海で鶏むね肉を泳がせながら焼くバターチキンが選ばれた。お気づきの方もいるかもしれないが、バターチキンは2023年の祭で人気を博したメニュー。もしや初のリバイバル?と思ったら、そこは太田さん、味の角度を大きく変えたニューバージョンを繰り出してきた。
ポイントはまずむね肉に絡ませる卵の衣。溶き卵だけでなくアマゾンカカオのココアパウダーをたっぷり加えてコクを深めている。さらに、仕上げにかけるアマゾンカカオでフルーティーな風味も強化。対して、下味にはターメリックパウダーを使い、バターで揚げ焼きにするときにはシナモン、クミン、カルダモンのホールスパイスをプラス。つまり、ジューシーなむね肉を包む香りはカカオ、スパイス、バターの三つ巴。ワイルドでアグレッシブな味わいは背徳感さえ吹き飛ばしてしまう。





太田さんによれば、そもそもバターチキンはイタリア・フィレンツェにある老舗「ソスタンツァ」の名物料理。
「ただ、僕の製法は小麦粉を先につけて卵液に潜らせて揚げるトスカーナ風フリットをミックスさせています。その方が香ばしくておいしいと思ったので」
こうしたベースにカカオやスパイスを違和感なく溶け込ませてしまうところが、太田さんならではのアイデアとテクニック。その源泉となるのが海外で培ったキャリアだ。
日本を飛び出したのは19歳のとき。イタリアでは星付きレストランやミラノマダムのプライベートシェフとして働き、スペインでは伝説のレストラン「エル・ブジ」の厨房に立ち、ペルーでは国民的トップシェフ、ガストン・アクリオ氏から薫陶を受けた。このペルーで出会ったのがアマゾンで生産されるカカオ。今も毎年7月にはまるまる1ヶ月間日本を離れ、アマゾンの奥地へと分け入っている。現地ではカカオに関わることだけでなく、先住民の暮らしに触れることもあれば、遺跡の発掘調査に参加することもある。冒険心が引き寄せるさまざまなインプットが、自身の感性を通して料理に表現されているのだ。



祭メニューの“インチカピ”はまさにインプットの賜物といえる一品だ。
「この料理は現地の人たちがこよなく愛する、いうなればアマゾン版おふくろの味。“インチ”とはピーナッツ、“カピ”はスープの意味で、向こうでは鶏1羽をつぶしてピーナッツパウダーで煮込みます。香りづけにコリアンダー(香菜)を加え、とうもろし粉でとろみをつけるのですが、味つけは塩だけとシンプルなんです」
確かに、鶏のさまざまな部位を煮込んだスープはどこか郷愁を感じる味わい深さ。それだけでも十分おいしいのだが、今回は仕上げにアマゾンカカオを散らしてオリジナリティを出している。そのひと掛けで味わいはグッと力強く変わり、コクも一層深くなる。アマゾンの人たちもびっくりなアレンジに脱帽だ。


もちろん、探究しているのはアマゾンだけではない。現在、レストランがあるのは長野県の軽井沢町。白馬村で生まれ育った太田さんにとってホームタウンである信州は食材の宝庫だ。自ら森に入って食材採集をしながら、地元の産品にも目を向けている。バターチキンとインチカピに使う鶏肉に信州地鶏を選び、タブレットやクッキーには信州いちごを取り入れているのは地元愛の表れといえるだろう。
一方で、「食材は一つの点として捉え、自由に、実験的に組み合わせながら、形にしていくのが自分のスタイル」と話すように、全国の逸品食材探しにも余念がない。その成果といえるのが、30種類の柑橘を使ったパウンドケーキだ。柑橘を生産するのは、静岡県熱海市の「ダモンデファーム」。
「ここでは多種多様の柑橘が農薬や化学肥料などを使わずに栽培され、それらを同じタイミングで収穫できるのがすごいところ。送ってもらったら風味を損ねないよう10日がかりで煮詰め、そのシロップを生地に練り込みます」
柑橘を使った商品ではアマチリソースもユニーク。生春巻きなどに添えるチリソースに柑橘のコフィチュールを加えた甘酸っぱ辛くフルーティーな一品だ。よく知ったものでも食べると未知の味わいが広がるのが、太田さんのクリエイティビティの真骨頂といえるだろう。
現在、レストランは予約をストップし、隣接する食堂「MADRE(マードレ)」が開くのも気候のいい時季に限られている。dancyu祭は世界を駆け巡る太田さんの味を楽しめる貴重な機会。今年も大行列は必至だが、待った甲斐のある味覚体験ができることを約束しよう。
文:上島寿子 撮影:鈴木泰介