
100年以上の歴史を持つ、東京・神田の老舗「近江屋洋菓子店」が初参戦。一日500~600個を売り上げる“マドレーヌ”は、優しい甘さと豊かなバターの風味で愛される店のフラッグシップです。対する“トリュフ”は5代目・吉田由史明さんの感性が光る意欲作。フルーツや洋酒のフレーバーが際立ち、滑らかな口溶けが魅力的な一品に仕上がっています。




明治17年創業の「近江屋洋菓子店」は、東京を代表する洋菓子店。店に入れば、その天井の高さ、贅沢に使われている大理石、木目の揃った壁など、そこかしこに老舗の貫禄が感じられる。ショーケースに並ぶのは、懐かしのショートケーキやアップルパイ、焼き菓子のほかに、パンとアイスクリームも販売している。
「うちの商品は、一口目でガツンとくる美味しさとは違い、いい意味で変わらない味、ふと食べたくなる安心感があります」と微笑むのは、若き5代目の吉田由史明さんだ。どの商品も、その時に入手できる一番いい素材を選ぶのが信条。つくり方も唯一無二だと語る。店を継ぐときに決めたのが、先代たちの思いを胸にしっかり受け止め、長きに渡り愛された味はそのままつくり続けること。それと並行して、新たに季節感や旬のフルーツに特化したケーキを取り入れることにした。例えば、春はいちごのケーキ、夏はレモンパイ、丸ごと桃のケーキ、秋はパンプキンやスイートポテト、冬はシュトーレン。トリュフチョコレートもその一つだ。「近江屋洋菓子店」は、老舗の名品と5代目の意欲作という2枚看板で、さらなる飛躍を遂げている。
今回のdancyu祭では、焼き菓子の定番であり、近江屋の顔でもある“マドレーヌ”と、令和に誕生した“トリュフ”を販売。
トリュフは素材の組み合わせの楽しさもありつつ、香りや味のバランスが抜群にいい。「香りと食感を大切にしていますが、食べるとどこか懐かしい味に」と吉田さんが話すように、昭和のお菓子がアイデアの素になっているそうだ。例えば“キャラメル”は、子供の頃に誰もが口にした、あのミルクキャラメルがベース。ミルクチョコレートのコーティングの中から、とろ~りと柔らかいキャラメルがあふれ出る。“ラムダーク”も昭和の銘菓、ラムボールから発想。ラム酒がガツンと効いて、ビターな大人味である。
ほかの“抹茶”はホワイトチョコレートを、オレンジ風味の“グランマニエ”はミルクチョコレートのガナッシュをコーティングして、抹茶と粉糖をまぶしている。もっとも個性的なトリュフが“パッションココナッツ”。パッションフルーツのゼリーをチョコレートでコーティングし、ココナッツパウダーをまぶしたものだが、南国を思わせるエキゾチックな甘さの後から、あふれ出るトロピカル感!濃厚な香りと甘酸っぱさが口いっぱいに広がり、しかも余韻が長い。
新旧、どちらにするかなんて迷わず、ぜひ昭和と令和の味を堪能しよう!ちょっとした時に食べると洋菓子は、日常を豊かにしてくれる。「近江屋洋菓子店」のマドレーヌとトリュフは、いつも以上に心躍るに違いない。

文:石出和香子 撮影:伊藤菜々子