焼酎の教室
お湯割りが抜群に旨い。圧倒的な芳ばしさと深い芋の風味!村尾酒造の芋焼酎「薩摩茶屋」/「dancyu焼酎クロニクル@五臓六腑」

お湯割りが抜群に旨い。圧倒的な芳ばしさと深い芋の風味!村尾酒造の芋焼酎「薩摩茶屋」/「dancyu焼酎クロニクル@五臓六腑」

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昨年の秋に開催された「焼酎の教室」第3回は、dancyuの焼酎史を語る上で欠かせない焼酎酒場、三軒茶屋の『五臓六腑』の高橋研さん&情(じぇい)さん親子が登壇。プレミアム焼酎が牽引した“第3次焼酎ブーム”から現在に至るまで、エポックメイキングとなった思い入れの深い6本を語っていただきます。1本目は、研さんが「焼酎前夜」の1999年に惚れ込んだ村尾酒造の「薩摩茶屋」をご紹介。

「こんなに芳ばしくて旨い芋焼酎があったのか!」

高橋研さん(左)と、息子の情さん(右)
三軒茶屋の『五臓六腑』の高橋研さん(左)と、息子の情さん(右)

「五臓六腑」の最初の店が渋谷に誕生したのは、1999年。焼酎ブームの足音がそろりそろり近づく気配はあったものの、まだそこまでの認知度ではなかった頃。当時、dancyuでも本格焼酎は10数ページの第2特集からのスタートだった。研さん曰く「焼酎前夜」だ。
「お客さんなんて来ないよ。日本酒の店だと思って入ってきて、うちは焼酎です、って言うとみんな帰っちゃう。毎日スポーツ新聞を読みながらお客さんを待ってた。でもね、どうしてだか、焼酎愛は並々ならぬものがあったんだよね」
店のオープンにあたり研さんが柱とした焼酎が、芋焼酎「村尾」で知られる鹿児島・村尾酒造のレギュラー酒「薩摩茶屋」だ。独立前は渋谷や吉祥寺に店舗を構える居酒屋で、料理人として腕を振るっていた研さん。そこで付き合いのあった酒屋が、「店をやるならウチに来な」とバックヤードで自由に試飲をさせてくれた。そのなかで“痺れた”のがこの酒だったという。

研さんの話を聞きながら、しみじみと「薩摩茶屋」を味わう倶楽部メンバー

「香ばしさの度合いが、もう他と全然違ったんだよね。びっくりして、あ、これは絶対やろう、と思った」と振り返りつつ、目の前の「薩摩茶屋」をぐいっと煽る。参加者からも「すごく深みがある酒」という感想が。
この香ばしさを表現する要素が、原料に使うタイ米と黒麹だ(ちなみに「村尾」は国産米と黒麹)。
「芋焼酎の基本は、米麹と芋が1対5。そう考えると米と麹に何を使うかってすごく大事。いまは国産米を使うところが多いけど、村尾酒造のある北薩のほうって、昔ながらのタイ米と黒麹を使う蔵が多くて、黒麹もゴールドってタイプのやつでね。個人的に、扱いが難しいのかなと感じているんだけど、どの蔵もすごく上手なんだよ。で、味が乗るっていうのかな。辛口なんだけど、鼻に抜ける香ばしさをもつ焼酎が多い」
沖縄の泡盛の影響で鹿児島でも米麹に使われてきたタイ米は、硬質で粘りが少なく、製麹のときもさばけがよく扱いやすいし、独特の香ばしい風味を出せる。2008年に起きた汚染米事件によるタイ米のイメージ低下や、2011年の震災後に制定された原材料表記の義務付けの影響で国産にシフトする流れができたが、「薩摩茶屋」のような、地元で長く愛されている蔵のレギュラー酒にタイ米を使い続けるところはいまも多く、その味を愛するファンも多い。

研さんの言葉を細かくメモする倶楽部メンバー。研さんも話に熱を帯びていく

「なんだか急になくなっちゃった」。研さんの話を聞きながら、「薩摩茶屋」のお湯割りが注がれたみんなのグラスはすっかり空っぽ。いいぞいいぞ。
今回の参加者は、ここ数年で焼酎に目覚めた人たちが中心。少し話は逸れるが、2000年代初めのブーム過熱時によくキーワードとして使われた“3M”“プレミアム焼酎”という言葉を知っているか聞いてみたところ、「わからない」「なんとなく……」という反応が多かった。誰が名づけたのか、当時、常に品薄状態にあった「森伊蔵」「魔王」「村尾」の頭文字をとったのが3M(「三岳」「萬膳」を含めて5Mと呼ぶことも)。造り手の想いをよそに、量販店などでは1本数万円、心ない飲食店ではグラスに1ショットで数千円という不当な価格がつき、苦々しい思いでその状況を眺めていた。なんだか隔世の感があるが、そんななか、自分の信じた酒を真っ当に売り続けてきた研さんのような存在が、飲みたいものを自由に、気軽に楽しめるいまの焼酎人気の土台を支えてきたと思うのだ。

研さんの話を聞きながら味わう「薩摩茶屋」の旨さたるや!

次回2時限目は、その背中を見てきた息子の情さんが語る、“香り系”のお話。

店舗情報店舗情報

てっぽうや 五臓六腑
  • 【住所】東京都世田谷区太子堂2‐23‐2 ラフィン2 2F
  • 【電話番号】050‐5488‐8320
  • 【営業時間】17:00~翌2:00 ※祝日は〜24:00
  • 【定休日】日曜※月曜日が祝日の場合のみ日曜日営業。翌週の月曜日が振替休日
  • 【アクセス】東急田園都市線、東急世田谷線「三軒茶屋駅」より3分

文:鹿野真砂美 撮影:伊藤徹也 構成:林律子

鹿野 真砂美

鹿野 真砂美 (ライター)

1969年東京下町生まれ。酒と食を中心に執筆するフリーライター。かつて「dancyu」本誌の編集部にも6年ほど在籍。現在は雑誌のほか、シェフや料理研究家のレシピ本の編集、執筆に携わる。料理は食べることと同じくらい、つくるのも好き。江戸前の海苔漁師だった祖父と料理上手な祖母、小料理屋を営んでいた両親のもと大きく育てられ、今は肉シェフと呼ばれるオットに肥育されながら、まだまだすくすく成長中。

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