焼酎の教室
「芋は臭い」イメージを根底から変えた!ソーダ割りでライチ香が華やぐ、香り系焼酎のパイオニア。国分酒造の芋焼酎「安田」/「dancyu焼酎クロニクル@五臓六腑」

「芋は臭い」イメージを根底から変えた!ソーダ割りでライチ香が華やぐ、香り系焼酎のパイオニア。国分酒造の芋焼酎「安田」/「dancyu焼酎クロニクル@五臓六腑」

「焼酎の教室」はほぼ月1開催。応募詳細はLINEオープンチャットにて!

昨年の秋に開催された「焼酎の教室」第3回は、dancyuの焼酎史を語る上で欠かせない焼酎酒場、三軒茶屋の『五臓六腑』の高橋研さん&情(じぇい)さん親子が登壇。プレミアム焼酎が牽引した“第3次焼酎ブーム”から現在に至るまで、エポックメイキングとなった思い入れの深い6本を語っていただきます。2本目は、「香り焼酎」の原点と言われる、国分酒造の芋焼酎「安田」を情さんが解説します。

「香り系焼酎の歴史は、『安田』で始まった」

「五臓六腑」の舵をとる高橋情さん
現在、「五臓六腑」の舵をとる高橋情さんが「安田」の魅力を語る

2000年代はじめの第3次焼酎ブームは、狂乱と言っても過言でないくらいの盛り上がりを見せた。
「『五臓六腑』がオープンしたとき僕は9歳。当時のことはリアルタイムでは知らないけれど、高校時代から店でバイトをしていたので、父やお客さんの話で、こういう時代だったと聞いてはいました」と話すのは、高橋情(じぇい)さん。早々と隠居(飲んだくれ?)生活を送る父、研さんに代わり、スタッフとともに現在の「五臓六腑」を守っている。
店に立ちながら、ここ数年の焼酎の流れを肌で感じてきた情さんが1本目に挙げたのが、芋焼酎「安田」(鹿児島・国分酒造)。巷を席巻する、ソーダ割りで楽しむ“香り系”のエポックメイキングとなった焼酎だ。

倶楽部メンバーに「安田」のソーダ割りが配られた
倶楽部メンバーに「安田」のソーダ割りが配られた

「いまの時代に特化した芋焼酎。いわゆる“芋くささ”ではなくて、ライチや柑橘系などフルーティーな香りが強い。10数年前の初リリースのときは、業界的にも賛否両論で。僕も飲んでみて違和感を感じました。まだまだ焼酎といえばロック、水割り、お湯割りが中心で、消費者もソーダ割りにはなじみが薄い時代。これ、どうやって出すの?って。それからだいぶ経って、dancyuでソーダ割りの特集が出てからですよ。夏はソーダ割り、みたいに流れが変わって『安田』も再ブレイクしたイメージです」
「安田」が初めて世に出たのは2013年のことだ。鹿児島の在来種の芋“蔓無源氏(つるなしげんぢ)”と、米ではなく同じ蔓無源氏と黒麹で造った芋麹で仕込む。オール蔓無源氏の焼酎に冠したのは、杜氏の安田宣久さんの名。焼酎造りで「現代の名工」など数々の賞に輝く、74歳の大ベテランである。

メンバー
資料として配布した、国分酒造の杜氏、安田宣久さんの記事を見る倶楽部メンバー。(2018年6月に発売した「dancyu 合本 本格焼酎。」より)

「なぜ初めは違和感を持ったかというと、このライチみたいな香りって、芋が傷んだ臭いと同じなんです。仕込み時期にいろんな焼酎蔵へ行くと芋切り作業をしていて、1本1本、傷んでいるところを削るんですけど、その落とした部分を集めた場所ってまさにこの臭いがする。安田さんも、最初は低温障害で傷んだ芋しか入荷しなかったときに、もったいないから仕込んでみたのがきっかけで、狙って造ったわけではなかった。できた酒を飲んでこれはおもしろい、となって、今度はその特徴を逆手に取って、熟成や温度管理でこの香りを引き出しているんですよね」
原料の蔓無源氏と芋麹自体にも、ライチや柑橘の香気成分が多く含まれる傾向があるという。
「この酒はつまみもいらない。これで完結しちゃう。最初の1杯か、香りを生かして食後酒に飲むのもいいと思います。やっぱりソーダ割りですよね。でも、華やかな香りのなかに、どこかちゃんと芋の味わいも残っているのが「安田」だな、と」

倶楽部メンバー
香り焼酎と呼ばれるきっかけとなった「安田」を味わう倶楽部メンバー
倶楽部メンバー
香り焼酎と呼ばれるきっかけとなった「安田」を味わう倶楽部メンバー
倶楽部メンバー
香り焼酎と呼ばれるきっかけとなった「安田」を味わう倶楽部メンバー

冷たいソーダ割りを飲みながらも、会場は徐々に熱気を帯びてきた。この「安田」の誕生を機に、多くの蔵から“香り系”と呼ばれる焼酎が次々と登場している。参加者のなかには「香り系にハマって、この夏から焼酎を飲み始めたばかりです」という女性も。

倶楽部メンバー

「次世代の香り系焼酎って、蔵元さんの代替わりの影響もあるんですよ。お父さんが造っていた時代から息子世代になって、もっと飲んでほしい、裾野を広げたいと試行錯誤して。芋は臭いから嫌い、っていう若い世代の入り口になるような焼酎を造ろう、という時代がいまだと思います」
その時代の先駆け、先頭を切った「安田」は、まさにお父さん世代、焼酎に関わる人みんなが尊敬する、大ベテラン杜氏の止まらぬチャレンジ精神から生まれたのだ。だから焼酎っておもしろいんだよねえ。
次回3時限目は、研さんと情さん、それぞれの居酒屋人生に大きく関わった、2本のお話。

店舗情報店舗情報

てっぽうや 五臓六腑
  • 【住所】東京都世田谷区太子堂2‐23‐2 ラフィン2 2F
  • 【電話番号】050‐5488‐8320
  • 【営業時間】17:00~翌2:00 ※祝日は〜24:00
  • 【定休日】日曜※月曜日が祝日の場合のみ日曜日営業。翌週の月曜日が振替休日
  • 【アクセス】東急田園都市線、東急世田谷線「三軒茶屋駅」より3分

文:鹿野真砂美 撮影:伊藤徹也 構成:林律子

鹿野 真砂美

鹿野 真砂美 (ライター)

1969年東京下町生まれ。酒と食を中心に執筆するフリーライター。かつて「dancyu」本誌の編集部にも6年ほど在籍。現在は雑誌のほか、シェフや料理研究家のレシピ本の編集、執筆に携わる。料理は食べることと同じくらい、つくるのも好き。江戸前の海苔漁師だった祖父と料理上手な祖母、小料理屋を営んでいた両親のもと大きく育てられ、今は肉シェフと呼ばれるオットに肥育されながら、まだまだすくすく成長中。

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