
今、間違いなくキテいる焼酎のビッグウェーブ。注目すべきは、フルーティ、ミルキー、スモーキー、紅茶や麦チョコなど、新しいアプローチで表現される鮮やかな香りだ。「焼酎の教室」第1回/4限目は、焼酎シーンを牽引する渋谷「嚏(アチュー)」店長のテツさんが、香り焼酎のソーダ割りを最高においしく飲むコツを伝授。食いしん坊倶楽部からは10名のメンバーが参加した。アチュー式ソーダ割りをマスターすれば、焼酎ライフが劇的に変わります!
ニックネームは「テチュー」。お客さんからもらった「だいやめ」がきっかけで焼酎に開眼。毎月酒蔵を訪問し、日々焼酎を飲み、若干22歳にして饒舌に焼酎を語る新星伝道師。推し蔵は渡邊酒造場。
渋谷の人気立ち飲み店「嚏(アチュー)」店長のテツさんから、香り系焼酎をとびきりおいしいソーダ割りにするヒントを教わる「焼酎の教室」。第一回目の内容を、全5時限に渡って紹介していきます。4限目は、ずばりシンプルに「良い香りをふくらませる」というソーダ割りの役割について講義してくれました。
「焼酎を口に含んだとき、最初に立ち上がってくる揮発性の高い香りを、炭酸のガス圧を借りて引き立たせるイメージです。焼酎が元々持っている味わいを10としたときに、香りとして立ち上がるのは2。この2をしっかり楽しむ飲み方です。テイスティングをしてみて、「この香りをもっと嗅ぎたい!」と思ったら、ソーダ割りにしてみてください。ちなみに僕はこのタイプの焼酎のソーダ割りが一番好きです!」
タマアカネという品種のオレンジ芋を使い、もろみを長期熟成させて蒸留する黒木本店「謳歌」。口に入れた瞬間に感じる白い花のような可憐な香りは、ソーダ割りにすると何倍にもふくらみます。
「玉茜というオレンジの芋で仕込むと、アールグレイやトロピカルフルーツといった華やかな香りの焼酎になります。『謳歌』は、もろみをじっくり熟成させているので、ただ華やか、というだけでなく、いろんな香り成分がバランスよく重なって、白い花のような甘い香りに。この香りを最大限に楽しめるように、僕はソーダ割りをおすすめしてます」
シュワッとした炭酸と一緒に鼻孔を抜けていくフローラルな香り。メンバーは「紅茶っぽい香りも感じる」と、オレンジ芋由来のアロマを隅々まで感じている様子でした。
続いて登場したのは本日初の麦焼酎。柳田酒造「青鹿毛」は、大麦の香りを120%引き出した抜群に香ばしい焼酎です。ソーダ割りにすることで、極太な麦の香りが空間全体に満ちる勢いで広がります。
「青鹿毛はもうほぼ麦をそのまま食べているくらい、めちゃくちゃ強い香りが特徴。柳田さんという造り手さんは元エンジニアで、蒸留器の配管を1ミリ単位で改造して、狙ってこの香りを生み出したんです。青鹿毛の濃い麦の香りをガツンと感じられるのがソーダ割り。スッと抜ける感じも出せて、爽快に飲んでもらえると思います」
あまりの香ばしさにメンバー全員から「すごーい!」と歓声が。「こんがり焼けたパンの香りがする」「麦茶として飲めそう」と、ユニークな感想も止まりませんでした。
ソーダ割りにして飲むことで、焼酎の持つ良い香りにグッと寄って楽しめるという事実を知った4限目。どうして焼酎をソーダ割りにするのか。テツさんが考えるソーダの3つの使い方を学んだことで、焼酎そのものはもちろん「どうやって飲むか」というポイントにメンバー全員の関心が生まれたようです。
そんななかで出てきたのが「ソーダじゃなく、お湯割りでも香りは伸びるのか?」という質問。テツ先生の答えは?
「お湯割りにすると焼酎の甘味が上がるように思います。例えば『謳歌』だと、バナナやマンゴーといったトロピカルフルーツの香りが上がってくるようになります。僕はどちらかというと、このお酒についてはフローラル系の香りを楽しんでほしいので、ソーダ割りをおすすめしています。また同じ玉茜で仕込んだ焼酎でも、油分が多い焼酎はお湯割りのほうが向いていたりします」
お湯割りの話が少し出たところでもう一つ、「お湯を使った面白いソーダ割りをやりましょう」とテチュー先生。かくしてソーダ割り講義は延長線へ!次回の最終回も乞うご期待です。
文:井上麻子 撮影:竹之内祐幸