
伝統的な上海料理と洗練された広東料理が味わえる中国料理の名店からは、これでもか!と海老がたっぷり詰まった海老春巻、クリームチーズとパイナップルがほんのり甘い季節の春巻、もっちりとした皮が魅力の水餃子。魅力的な3品がお目見えします。
創業半世紀を超える老舗の中国料理店「中国飯店」。そのグループ店のひとつ「富麗華」が、東京・麻布十番に自社ビルを構えてオープンしたのは2000年。以来四半世紀、今なお美味しいもの好きを唸らせ続けている。
分厚いメニューには200種近くの料理名が並び、ほぼすべてに“上海”または、広東料理を指す“香港”の表記が。総料理長の石嵐さんがこう教えてくれた。
「中国飯店はもともと、社長の出身地である上海料理の専門店としてスタートしました。中国料理の奥深さをもっと表現したい。そんな想いで社長は、上海料理と同時に広東料理を楽しめる店として富麗華を開いたんですよ」
それぞれのスペシャリストたちが存分に腕をふるえるよう、上海料理をつくる厨房は1階に、広東料理をつくる厨房は2階に。ひとつの店に、独立した2つの厨房を構えたのだ。石さん曰く「出汁のとり方ひとつとっても違いますし、動線も異なりますから、厨房が別なことは理にかなっています。とても贅沢な厨房ですよ」。
本国より招かれた料理人たちも多く、2つの厨房で生み出される料理はいずれも本場の味。上海を代表するフカヒレの姿煮込みに、広東料理のハタの姿蒸しなどを一度に楽しめる時間がここでは約束されている。
実は富麗華には、「富麗華キッチン」なるもうひとつの顔がある。麻布台ヒルズ、銀座三越内に店舗を構える惣菜店だ。富麗華のスペシャリテである黒酢の酢豚や黒炒飯、春巻や大根もちなどの点心が気軽に購入できるというありがたい存在。今回の祭は、レストランとしての富麗華と物販が主の富麗華キッチンがタッグを組んでの出店となる。
祭に初出店となる富麗華が提供するメニューは、3種の点心だ。
本格的な中国料理店における点心は、どうも脇役的メニューと捉えられがちだが、富麗華は点心にもしっかり注力。10人もの点心師が在籍し、日々、朝から丁寧に手づくりしているという。春巻や大根もちなどの広東系、小籠包や餃子などの上海系、それぞれ専任の点心師が本場さながらに手がけているというから力の入れようが伺える。
そんな富麗華の点心のなかでも一番人気を誇るのが、祭メニューの筆頭ともなる海老春巻。広東の点心を専門にする点心師、白川貴美さんによると、「海老がごろんごろん入ってます」。聞けば、海老は塩と葱油を混ぜるだけ。皮に包まれた海老の旨味、甘味、香りが炸裂する贅沢極まりない春巻なのである。
祭メニュー2品目は、季節の春巻。調理師専門学校時代、お菓子づくりが大好きだったという白川さんの考案する季節の春巻は、素材使いや、組み立て方が独特。店のスタッフ陣が口を揃えて「彼女のアイデアはユニークで素晴らしい」という、変わり種だ。
「夏にはフルーツトマト、秋にはいちじくを使った春巻を。冬には、白菜のクリーム煮に柚子の香りを足した春巻や、上湯と大根の春巻などを考案しました。祭では、パイナップルの春巻を出します」。
春巻にパイナップル。しかも、蓮の実餡入りのクリームチーズを組み合わせたそれはもやはホットスイーツ! 熱々を頬張りたい。
最後の一品、水餃子は、上海点心チームの渾身作。たっぷりのセロリを混ぜた肉餡をもちもちの皮で包んだ爽やかな水餃子で、通常のメニューには載せていないスペシャルバージョン。祭のために特別に仕込んでくれることになった。
点心師たちが目の前で仕上げてくれる極上の点心3品。ぜひ会場でお試しあれ。
文:安井洋子 撮影:澤木央子