料理も食材も話術も他を圧倒する和食が、東京・神楽坂にある「懐石 小室」。店主の小室光博さんは、仕入れた一級の食材を時間をかけて丁寧に仕事を施し、圧倒的に旨い品々に昇華させる料理人だ。今回は、普段はコースでしか食べることのできない“猪汁”をご用意。会場でぜひ味わってみてください。さらに、家庭で重宝する調味料などの物販もご用意しています。お楽しみに!
東京を代表する和食の名店「懐石 小室」。「ここにくれば、必ず季節の旨いものが食べられる」と食通も太鼓判を押す店だ。
今回dancyu祭で出す“猪汁”は、「小室」のコースのメイン料理ともなる一品。和食店で肉が出るなら牛。そんなイメージが多くの人の頭にあると思うが、意外や意外、小室さんはジビエを使うことも少なくない。なかでも猪は秀逸だ。“猪肉”と言っても、個体によって味にばらつきがある印象だが、そこはさすが「小室」である。猪肉を初めて食べる人や、過去にあまりいいイメージを持っていない人の気持ちをも覆す、上質のものしか使わない。小室さんの目利きあっての安心感ある美味しさだ。しっかり蓄えられた脂は、コクはあるが脂っこくはなく、さらりとしてキレがある。臭みなど微塵も感じさせない。
厚みのある出汁に、猪肉、そしてたけのこと蕗、さらには木の芽という香りを合わせて、ひと皿として完成させる。山の野生味ある風景を感じさせるようでいて、繊細で上品。このなんとも言えないバランスと美味しさが「小室」らしさだろう。
店では今、甘めの出汁でしゃぶしゃぶした牛肉に花山椒をのせた花山椒鍋や、直球で素材勝負の鯛の薄造りがコースを彩っている。初夏になれば名物の鱧が出てくるだろう。秋には松茸をはじめとするキノコ類も待ち構えている。
ここはぜひ、季節を変えて訪れたい店だ。旬の味の移り変わりを楽しめるのはもちろんのこと、その時期を映した食器を愛でられることも大きな魅力だからだ。短期間しか使えない器であってもまめに入れ替えるのは、実はひとえに小室さん自身の楽しみゆえ。
「日本の文化を守るためとか、そういう使命感は少しもないんです。単に楽しいから突き詰めてしまうんです」
こうした好奇心と追求が、この店を日々進化させている。
最近は、店になかなか足を運べない人にも楽しんでもらえるよう、真空の惣菜や瓶詰めにも力を入れているという。おせちが絶賛される店だけに、こうしたものも実は得意分野。家の食卓に日本酒と一緒に並べれば、究極の宅飲みの完成だ。
文:浅妻千映子 撮影:伊藤菜々子
※当日は内容や盛り付けが変更になる場合もあります。