酒に納豆にチーズに……。日頃、食いしん坊たちがお世話になりっぱなしの“発酵”の魔法にかかれば、食材の旨味が引き出され、料理の幅がぐっと広がる。今回は、昨今注目を集める発酵料理の奥深さ&美味しさを堪能し、改めてその素晴らしさに思いを馳せるべく「発酵ナイト」を開催!ライブあり実演ありの、めくるめく一夜となった。
本誌のテーマ、“「知る」はおいしい”を実体験してもらうべく、毎月様々な美食イベントを企画中のdancyu食いしん坊倶楽部。その第3弾は、本誌11月号(発酵特集)のスピンオフ企画。誌面でとっておきの発酵料理レシピを披露してくれた、梁宝璋さん率いる人気中国東北料理店、「味坊」グループの「老酒舗(ろうしゅほ)」(東京・御徒町)を会場に行われた。
当日のメインディッシュは、店の人気メニューであり、本誌でもレシピを紹介した、中国東北地方の伝統漬物「酸菜」(白菜を乳酸発酵させたもの)を使った鍋「酸菜白肉」。誌面では家庭向けにひき肉を出汁に使うお手軽レシピを紹介したが、今宵の鍋は、鶏ガラや豚骨でしっかり出汁を取った本場の味わいだ。当日は金曜日の夜ということもあり、「仕事帰りの体には、旨味たっぷりの鍋のスープがしみわたります」「白菜の漬物が調味料になるなんてびっくり!」など、参加者たちからは絶賛の声が相次いだ。
各テーブルを彩ったのは、この日限定の“発酵づくし”の特別コース(全9品)。メインの鍋と同じく「酸菜」を使った「発酵白菜と豚肉の水餃子」から、「山羊肉と発酵ニラ 花ソース添え」「発酵トマトと牛肉炒め」といった目から鱗の組み合わせ、さらには自家製天然酵母で手作りしている「蒸しパン」まで登場し、発酵料理の多彩さ、豊かさを印象付けた。今回、食いしん坊倶楽部のイベントは初参加というメンバーが多かったが、一つの鍋を囲むことで、あっという間に打ち解ける姿も印象的だった。
会の中盤では「酸菜」のつくり方を、梁さん自ら実演するコーナーも。現地では白菜1個丸ごとを樽に漬けこむ伝統的な方法でつくられるが、今回梁さんが本誌のために考案してくれたのは、千切り白菜と厚手のポリ袋を使って手軽に漬ける方法。「いつも白菜を買っても余らせて困っていたけど、“酸菜”を作れば無理なく最後まで楽しめそう!」「白菜と塩があればできるので僕にもできそう」など、新たな白菜の活用法に心躍らせる人も多かった。
お楽しみはまだ続く。急遽、植野編集長と親しいプロミュージシャン2名(サックス奏者の田中邦和さん、アコーディオン奏者の佐藤芳明さん)が登場し、サプライズの生ライブを敢行。ジャズあり民族音楽ありの自由自在で迫力ある演奏に引き込まれ、会場の雰囲気はあっという間に中国東北地方からブルーノートに!アンコール含め全4曲が奏でられ、参加者たちは体を揺らしながら、美食と音楽に酔いしれた。
終盤には、「今後どんなイベントがあったらいいですか」という植野編集長の問いかけをきっかけに、様々なアイデアやリクエストの声が上がる“食いしん坊ミーティング”の様相を呈し、最後まで活気と熱気に溢れたイベントとなった。次回はどんな“美味との遭遇”が起こるのか?乞うご期待!
(梁さんによる「酸菜白肉」<発酵白菜と豚バラ肉の鍋>の作り方を紹介している本誌11月号もぜひご覧ください)
文:白井いち恵 写真:富貴塚悠太