タラゴンビネガーの甘やかな風味と、生ハムならではの熟れた塩気が調和したスペシャルなちらしずしです!食文化研究家の北村光世さんに、フランス料理でよく使われる自家製ハーブビネガーを生かした料理を教わりました。
自宅の庭で数種類のハーブを栽培し、その効用や使い方にも詳しい北村光世さん。フランス料理でよく使われるハーブ・タラゴン(別名エストラゴン)で自家製ハーブビネガーをつくり、日々、さまざまな料理に活用している。驚くのが、酢飯にも使うということ。タラゴンといえば独特の甘い芳香が特徴で、酢飯に合わない気もするのだが、北村さんはタラゴンビネガーの酢飯をいろいろな具材で楽しんでいるそうだ。「タラゴンを日本の粕かす酢や米酢に漬けると、タラゴン由来の香りや甘味が抽出されて、とてもまろやかなお酢になります。しかも、タラゴンは防腐作用や殺菌作用があるハーブ。酢飯にはぴったりなんです」。それでは、とタラゴンビネガーやそのすし酢、酢飯などを教えていただいた。
タラゴンビネガーに塩と紫玉ねぎ、オリーブオイルを加えたすし酢の酢飯は、穏やかな旨味と酸味があり、それだけで食べても飽きないおいしさ。自然な甘味が印象的だ。「このすし酢には、タラゴンビネガー、塩、紫玉ねぎ、オリーブオイル、それぞれのいいところが引き出されています。砂糖を使わなくても十分な甘さがあるし、旨味もしっかりあるんです」と北村さん。おにぎりやお弁当のご飯にするのもいいそうだ。
ちなみに、この酢飯は魚介類とももちろん合うが、今回、主役具材に選んだのは、発酵熟成による旨味と熟れた塩気が特徴のイタリアはパルマ産の生ハムだ。生ハムをすしに、というとこれまた意外だが、発酵をキーワードとするもの同士で相性は抜群、華やかでハレの日のご馳走感も満点だ。材料もつくり方もシンプルながら、深く複雑な味わいのタラゴンビネガー酢飯×生ハムの組み合わせ。誰かに自慢したくなるご馳走おすしだ。
★ タラゴンビネガー | |
---|---|
・ 酢 | 1本(900ml)(粕酢、米酢など好みの酢) |
・ タラゴン(生) | 5~6本 |
★ タラゴンビネガー酢飯 | |
・ 米 | 2合(360ml) |
・ A | |
├ タラゴンビネガー | 大さじ2 |
├ 紫玉ねぎ | 大さじ4(やや粗めのみじん切り/玉ねぎでもよい) |
└ 塩 | 小さじ3/4 |
・ エクストラバージンオリーブオイル | 大さじ2 |
生ハム | 3~4枚(パルマハム/スライスしたもの) |
アボカド | 1個 |
ケイパー | 大さじ1(酢漬けのもの) |
タラゴンは酢(分量外)で振り洗いするか、水で洗ってから水気を拭く。酢の入った瓶に、タラゴンを入れる。タラゴンが酢に浸かるように軽く瓶を振る。そのまま約1週間おく。
米はといでから、かために炊く。
Aを小さめのボウルに入れてよく混ぜ、約20分おく。
③にオリーブオイルを加えて、よく混ぜる。
ご飯が炊けたら、すぐバットかボウルに移し、④を回しかける。木ベラかしゃもじで手早く混ぜる。ときどき上下を返して冷ます。
生ハムは、キッチンばさみで好みの形状、食べやすい大きさに切る。ごく薄切りのものなら、2枚重ねて切ると、味が濃厚に。
アボカドは、縦半分に切って種を除く。皮をむき、好みの形状、食べやすい大きさに切る。
酢飯を器に広げて盛り、生ハム、アボカド、ケイパーをバランスよく散らす。
京都生まれ。アメリカ留学後、青山学院大学で長年教鞭をとる。30年以上にわたって地中海地域をはじめとする世界各国を旅し、あるいは生活しながら、風土ありきの食文化や料理を研究。また、イタリア・パルマの郊外に拠点をもち、イタリアと日本の文化交流にも力を注ぎ続けている。
※この記事の内容はプレジデントムック技あり!dancyu「お酢」に掲載したものです。
文:遠藤綾子 写真:牧田健太郎