品質の高いコシヒカリの産地として知られる福島県・会津地方から、さらに旨い米を追求した「会津産厳選コシヒカリ アイヅライス」が誕生した。その農法のヒントになったのが、会津に伝わる農業技術書『会津農書』だ。土地の伝統を受け継いだ、新たな取り組みについて聞いた。
書かれたのは江戸前期の1684年。著者は、当時、会津藩幕内村の中心的人物だった肝煎の佐瀬与次右衛門。会津地域の特性に合った稲作や畑作、農業を営むにあたって必要な技術などを記し、当時識字力の低かった農民たちに、絵を加えたり和歌にしたり、わかりやすく覚えやすいように伝えた。特筆すべきは、酒粕を活用した農法。当時の限られた資源を活用しながら、農業の要であった「地力」を高めて農業を営んでいた。以降、現代語訳に改編されたものが出版されるなど、長きにわたって会津地域の農業の基盤となった不朽の名著だ。
酒だけでなく米処としても知られる会津地方。日本穀物検定協会が開催する食味ランキングで2013年度から8年連続「特Aランク」を獲得しているコシヒカリをさらに選りすぐった新ブランドが「アイヅライス」である。
この米は、江戸時代より伝わる農業技術書『会津農書』をヒントに、地元酒蔵の酒粕を堆肥に混ぜて栽培。酒粕の成分が土壌の微生物を活性化し、稲の栄養吸収を促す可能性がある。さらに、アイヅライスは、農薬や化学肥料を従来の半分以下に減らすといった特別栽培米ガイドラインに沿った栽培法に限定。収穫後の検査で食味値80点以上、玄米タンパク質含有率6.4%以下などの厳しい要件を達成した超厳選米で、都内有名店の一流料理人からも定評がある。
「アイヅライスは農家にとって条件が厳しい狭き門ですが、その分、とびきりいい米ができるんですよ。今年も良作です。ぜひ新米を食べてほしい」。そう、アイヅライスの魅力を語るのは、生産者の荒井重隆さん。隣で大きく頷くのは、米づくり歴42年で同志の手代木淳さんだ。「アイヅライスは生産者の誇りです。他の地域では真似できない、会津を代表する頂点の米だと思います」と話す。つくり手の愛情が込められたアイヅライスが、豊かに実を結びつつある。
肝心の味だが、会津若松の「居食屋太平楽」の店主・大槻源太郎さんに炊いてもらうと「甘い匂いがして旨味も強い。最高の味ですよ」と大絶賛。そしてご飯と一緒に食べてほしいと、噛むほどに鶏皮の甘味と旨味が口に広がるとっておきのレシピを教えてくれた。
会津地鶏の首の皮 | 60g |
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会津地鶏の胸の皮 | 60g(普通の鶏皮でもよいが、地鶏の皮がお薦め) |
玉ねぎ | 60g |
ピーマン | 30g |
パプリカ | 60g(黄・赤各30g) |
サニーレタス | 1枚(飾り用) |
会津辛子味噌 | 小さじ1(味噌、にんにく、一味唐辛子を好みで混ぜても可) |
醤油 | 15ml |
蜂蜜 | 15g |
酒 | 15ml |
サラダ油 | 大さじ1 |
白胡麻 | 適宜 |
鶏皮は3cm幅に切る。玉ねぎはくし形切りに、ピーマンとパプリカは1cm幅に切る。
フライパンにサラダ油を入れて火にかけ、まず鶏皮の皮目から弱めの中火で焼く。少し焦げ目がついたら裏返し、鶏皮の脂が出るまでじっくり焼くのがコツ。
玉ねぎとピーマン、パプリカを入れて、鶏皮の脂をまとわせるように強火でさっと炒める。
野菜に少し火が通ったら、会津辛子味噌、醤油、蜂蜜、酒を入れてさらに炒め、全体をよく混ぜ合わせたら完成。
会津若松市内で居酒屋を営むかたわら、格闘技の大会で優勝経験もあり空手の指導も。日本酒にも詳しい。「アイヅライスはぶっちぎりに旨い米」とのこと。
居食屋 太平楽
【住所】福島県会津若松市桧町3‐3
【電話番号】0242‐29‐6385
【営業時間】17:00~21:00(L.O.)土日~20:00(L.O.)
【定休日】不定休
文:山内聖子 撮影:森本真哉