なにかと餃子と比較されて、脇役のイメージがついて回るワンタン。しかし、実は主役をはれるほど魅力を持った料理なのです。本当に美味しいワンタンレシピを中国家庭料理の第一人者、ウー・ウェンさんに教わりました。
「ワンタンと餃子だったら、断然餃子に一票」なんて言っているアナタ、もったいない。そもそもワンタンと餃子はどこが違うのか。まずなんといっても、皮の厚みの差。どちらも小麦粉文化の発達した北京においてはポピュラーなメニューだ。皮とともに具の味わいを楽しむ餃子に対し、ワンタンはむしろ皮とスープを味わうのが特徴となっている。「ワンタンは、ラーメンと同じでスープが命なんですよ」と、ウー・ウェンさん。皮の薄さは、スープと一体化するためにある。「だから旨味と味のバリエーションはスープに託して、あんは少しでいいんです」ちなみにワンタンは、“雲呑”または“餛飩”と充てる。「雲呑という字は、日本で考えられたものではないかと思います。中国では餛飩と書くのが一般的。この字は“混沌”という字の偏が食偏になっているでしょう?要するに、捉えどころのない食べ物という意味なんです。だから、あんはほんの少しだけ。あるようなないような、そんな感じがちょうどいい。北京のワンタン専門店でも、たいていあんは菜箸一本でひとすくいするだけ。そのくらいちょっぴりなんですよ」その代わり、スープの充実は大事。手間を惜しまず、鶏ガラをコトコト煮出して、滋養に満ちたしっかりとしただしをとろう。れんげでひとすくい。ワンタンが、つるんと喉を通る。胃の腑と静かに呼応する、穏やか、かつ力強い味わいは、雲呑と充てた人の気持ちが偲ばれる天上のおいしさ。冬に向かうこれからの季節、定番としていただきたい。
★鶏ガラスープ | |
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鶏ガラ | 1羽分 |
生姜 | 1片(薄切り) |
長ねぎ | 10cm(白い部分) |
黒粒胡椒 | 15粒 |
水 | 1.8L |
酒 | 1/2カップ |
★ワンタン | |
ワンタンの皮 | 30~40枚(市販) |
豚挽き肉 | 100g |
酒 | 大さじ1 |
胡椒 | 少々 |
醤油 | 大さじ1/2 |
生姜 | 少々(みじん切り) |
胡麻油 | 小さじ1 |
★仕上げ | |
塩 | 小さじ1 |
白髪ねぎ | 適量 |
鍋に鶏ガラを入れ、たっぷりの水を加えて強火にかける。ゆでこぼすので、下洗いは不要。
蓋をして煮立たせ、さらに2分煮る。徐徐にたくさんのアクと不要な脂が、ブクブクと浮き上がってくる。
火からおろして、ゆで汁を捨てる。鶏ガラを流水に当て、何度か水を替えながら、きれいに洗う。
鶏ガラの水気をざっときって、改めて生姜、ねぎ、黒粒胡椒、水、酒を加え、強火にかける。
煮立ったら弱火にし、ぴっちりと蓋をして約1時間じっくり煮出す。きちんと蓋をすることで、スープの蒸発を防ぐことができ、香りも逃げない。
ボウルの上にザルを置き、キッチンペーパーを一枚敷いて、スープを漉す。キッチンペーパーを敷いておけば、ザルの目に肉くずが詰まらず、後片付けも簡単!
ボウルに豚挽き肉を入れ、酒、胡椒、醤油、生姜、胡麻油を順に加えて、その都度箸で混ぜ合わせて全体をなじませる。
手のひらにワンタンの皮を置き、中心より少し上のところに水を軽く塗る。
皮の中心に、箸でひとすくいしたあんをのせる。ワンタンの旨さはスープの旨味を吸った皮。あんの詰めすぎに注意!
頂点をずらして、水を塗ったところまで、手前から皮を折り返し、指で押さえてしっかり留める。
直角の部分が下にくるように皮を手前に裏返して、あんの左脇の部分に指で水をさっと塗る。
水を塗ったところに、右側の皮を外側から重ねるように合わせ、指で押さえてしっかり留める。
6のスープ1.4Lを強火で温める。クツクツしてきたら12のワンタンを入れ、時々箸で混ぜながらゆでる。皮に透明感が出て、あんの部分がぷっくりとしてきたら、ゆで上がりの合図。仕上げに塩を加えて味を調える。器にスープごと盛りつけ、白髪ねぎをあしらう。
家庭料理を中心とした、つくりやすいレシピが人気。雑誌、テレビでも活躍。著書も多数。
文:佐伯明子 写真:福尾美雪
※この記事の内容はdancyu2013年11月号に掲載したものです。