
フレンチトーストは、食パンを卵と牛乳と砂糖に浸して焼くだけ……というイメージをおもちのあなた。確かに簡単、シンプルな料理ですが、見た目も味も驚くべきバリエーションがあります。パリやニューヨークでも活躍する料理プロデューサー、狐野扶実子さんが、めくるめくフレンチトーストの世界を教えてくれました。
カチコチに硬くなってしまったパンでも決して無駄にしない、ヨーロッパの食文化から生まれたフレンチトースト。フランスでは“パン・ペルデュ”(「失われたパン」「だめになったパン」などの意味)と呼ばれる。要は”硬いパンを甦らせる料理”であった。ところが今や、日本でも専門店が誕生するほどの人気。わざわざ焼きたてのパンを買ってきてつくる人も多いようだ。
しかし、「焼きたてのしっとりしたものではなく、乾燥したパンを使ってください。そのほうが卵や牛乳をしっかり吸います。そして、食パンに限らず、さまざまなパンで焼くと味わいも広がります」というのがフミコ流。
“パン・ペルデュ”は、硬いパンを甦らせるだけでなく、よりおいしくするための知恵であった。フレンチトースト、奥が深い。そんなコツを織り交ぜながら、狐野さんが教えてくれた3種類のレシピに、さらにフレンチトースト観が覆されるに違いない。
| パン・ド・カンパーニュ | 1切れ(厚さ約7cm) |
|---|---|
| 卵 | 2個 |
| 牛乳 | 100ml |
| 生クリーム | 60ml(乳脂肪分35%前後) |
| コンデンスミルク | 25g |
| グラニュー糖 | 10g |
| バター | 10g |

ボウルにコンデンスミルクを入れ、牛乳を加えて混ぜる。グラニュー糖を加え、さらに溶けるまで混ぜる。

別のボウルに卵を割り、溶き混ぜる。泡立て器は白身を切るように左右に動かして、卵を泡立てないように。

2のボウルに1を混ぜる。ボウルの底にグラニュー糖やコンデンスミルクの溶け残りがないか確認を。泡立て器を左右に動かして、卵と牛乳をしっかり混ぜ合わせる。ここでも泡立てないように注意。

生クリームは泡立ちやすいので、最後に加えるのがポイント。砂糖やコンデンスミルクが溶け残らないように、一つずつ順に材料を加え、そのつど、丁寧にかき混ぜることが大切です。同じように混ぜ合わせたら、卵液の完成。

厚切りのパン・ド・カンパーニュを用意。このくらい断面の気泡が大きなものを使うとおいしくできる。

カンパーニュを5の卵液にくぐらせてから、そのまま浸した状態でラップをかけ、冷蔵庫に24時間ほどおく。

12時間ほどたったらいったん上下を返すとよい。パンにまんべんなく卵液を吸わせること。卵液をパンにすべて吸わせるように。ファスナー付きの保存袋に入れてもいい。卵液を吸いきるとパンがふくらみます。

フライパンを中火にかけ、バターを落とす。切り口を下にしてカンパーニュを置き、4分ほど焼く。表面に焼き色がついたら返し、もう一方の面も4分ほど焼く。途中スパチュラで持ち上げ、色を確認する。


クッキングシートにのせ180℃に予熱したオーブンで約8分焼く。ややふくらみ、芯まで火が通れば完成。



パリの三ツ星レストラン「アルページュ」でスーシェフを務めたのち、出張料理人として活躍。現在は料理プロデューサーとして、JAL国際線機内食の監修や料理人コンペティションRED U-35の審査員などを務める。著書に『狐野扶実子のビストロ料理』(小社刊)、『LA CUISINE DE FUMIKO フミコの120皿』(世界文化社刊)など。
文:大沼聡子 写真:日置武晴
※この記事の内容はdancyu2014年4月号に掲載したものです。