長崎の「島原具雑煮」は、鍋に入った具だくさん
「島原具雑煮」のつくり方
材料 (2人分)
丸餅 | 4個 |
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だし | 400ml(あご) |
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鶏もも肉 | 40g |
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大根 | 2~3cm |
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にんじん | 3cm |
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切り昆布 | 5g |
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白菜 | 1~1と1/2枚 |
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かまぼこ | 4切 |
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三つ葉 | 20g |
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薄口醤油 | 小さじ1 |
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1具材を切る
鶏肉はひと口大に切る。大根、にんじんは半月切り、白菜は食べやすい大きさに切って、それぞれゆでておく。
2汁をつくる
1人前の鍋にだしと鶏肉を半量ずつ入れて温める。切り昆布、かまぼこ、薄口醤油の半量を入れる。
3餅を加え仕上げる
2に餅を2つ入れて柔らかくし、1の野菜を半量ずつ入れて上から三つ葉を半量飾る。もう一人前も同様につくる。
- 外食のメニューにもなっている異色のお雑煮
- 具だくさんなお雑煮は珍しくありませんが、島原に伝わる「島原具雑煮」はその決定版でしょう。
入っている具の数は、奇数で7種類以上と決まっています。
白菜、切り昆布は必ず入っており、それ以外に大根、椎茸、にんじん、ぎんなん、くわいなどから、かまぼこ、鶏肉、高野豆腐、焼きあご、干しナマコまで何でもあり。
これを土鍋で煮込むのだから、もはやお雑煮というより鍋の感覚ですね。
そもそも基本的に外食で食べられないのがお雑煮の特徴ですが、島原具雑煮は地元の定食屋などで伝統料理として日常的に食べられます。
このお雑煮の発祥は、島原の乱だと言われています。
一揆軍の総大将・天草四郎が籠城した際、山や海から具材を集めてお雑煮をつくり、3ヶ月戦ったのがルーツなのだとか。
確かにあれこれ入っていて、これを食べたらほかに何もお腹に入らなくなるほどのボリュームです。日常的な食事として定着した、珍しいお雑煮です。
熊本の「納豆雑煮」は、納豆をお餅にからめる
「納豆雑煮」のつくり方
材料 (2人分)
丸餅 | 4個 |
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だし | 400ml(鰹、昆布) |
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鶏もも肉 | 40g |
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大根 | 4枚(輪切り) |
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にんじん | 4枚(輪切り) |
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ほうれん草 | 2株 |
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ごぼう | 10cm |
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白菜 | 1枚 |
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里芋 | 1個(中) |
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納豆 | 30g |
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甘口醤油 | 大さじ1 |
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1具材の下ごしらえ
ごぼうは斜め薄切り、白菜とほうれん草はひと口大に切って、それぞれゆでる。大根、にんじんもゆでておく。
2汁をつくる
鍋にだしと皮をむいた里芋を入れて柔らかくなるまで煮る。ひと口大に切った鶏肉、甘口醤油を入れ、肉に火を通す。
3餅を煮る
別の鍋で餅を柔らかくなるまで煮る。
4盛りつける
お椀に餅を盛り、1と2を入れる。納豆を別皿で添える。
- ほんのり甘い醤油味。納豆を添えれば楽しみは2倍
- 「なぜ熊本で?」
「納豆雑煮」の存在を知り、驚きました。
関東や東北ならわかる、でもなぜ熊本なの?
どうやら豊臣秀吉に領地を与えられて九州にやって来た尾張出身の加藤清正が納豆を連れてきたようです。
それで九州の中でも熊本県山鹿市や合志市など、福岡県と大分側の日田市でも食べられています。
食べ方は、鰹と昆布だしに甘い醤油で味付けしたお雑煮の中から丸餅を取り出し、別皿の納豆へ。
お椀の中身はそのまま食べて、お餅だけを納豆にからめるのが流儀です。
この地域以外のお雑煮は、だしはスルメや鮎など地域によってさまざまで、具材は鶏肉、白菜、豆もやしなどが多いです。
阿蘇などの山間部は鶏肉、天草市や八代市などの海岸部ではタイや牡蠣などの魚介、熊本市や人吉市、球磨群方面では塩ブリも使われます。
味つけは九州特有の甘い醤油です。
沖縄の「中味汁」は、お雑煮代わりのハレの汁
「中味汁」のつくり方
材料 (2人分)
豚モツ | 300g(ボイル) |
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だし | 600ml(鰹) |
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干し椎茸 | 4~5枚 |
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つきこんにゃく | 1/2袋 |
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かまぼこ | 4切 |
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醤油 | 大さじ1 |
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塩 | 小さじ1 |
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万能ねぎ | 適量 |
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おろし生姜 | 適量 |
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1材料を切る
干し椎茸は水で戻す。つきこんにゃくは適当な長さに切る。かまごこと椎茸は千切りにする。
2モツを煮込む
鍋に水と豚モツを入れて、白く濁るまで煮込んで煮汁を捨てる。これを3回繰り返す。
3汁をつくる
だしに椎茸の戻し汁と2のモツを加え、1と醤油、塩を入れて煮込む。
4盛りつける
3を器に盛りつけ、ねぎの小口切り、好みで生姜を添える。
- 47都道府県の中で、唯一お雑煮文化のない県
- 沖縄県にお雑煮はありません。
では正月に何を食べているかというと、「中味汁」です。
中味とは、豚の内臓。3回ほどゆでこぼして臭みを完全に抜くと、プリプリして臭いなく、モツっぽさが残りません。
そして鰹だしに、干し椎茸、かまぼこ、黒い糸こんにゃくを刻んで入れて煮込みます。
琉球王朝時代から続く手間暇かけた伝統料理で、正月や慶事に欠かせません。
沖縄県の正月はこの中味汁以外に、「ソーキ汁」(甘辛く煮付けた豚の骨付きあばら肉の汁物)もよく食べられるとか。おめでたいときは、豚なんですね。
そして旧暦の12月8日(新暦の一月中旬)は、「ムーチー」を食べる風習があります。
「ムーチー」は餅粉と水を練って、月桃の葉で包んで蒸したお餅です。
杵でついて伸ばさないのは、東南アジアの餅に近い文化。
やはり沖縄はエキゾチックな場所です。
- お雑煮マニアックス
- B5変型判( 104 頁)
ISBN:9784833475624
2016年11月28日発売 / 1,100円(税込)
粕谷 浩子
(お雑煮研究家、料理研究家)
1972年生まれ。株式会社お雑煮やさん代表。お雑煮の魅力に取りつかれ、日本各地の雑煮事情を知るべく、銭湯でおばあちゃんたちに聞き込みを開始。レシピを聞き出し、あわよくばご馳走してもらいながら情報収集を続けている。夢は、日本のみならず世界にお雑煮マーケットをつくること。