
おいしいものを思いきり楽しむために、一番大切な『道具』。それは自分の体です。みなさん、健康診断、受けていますか?そして健診の後に受けた指摘を放置せず、専門医に行って診てもらっていますか?定期的な健診は自身の健康状態を把握して、病気の予防、早期発見につなげる大切なものです。今一度健康診断の意味合いや内容をおさらいし、判定結果にどう対処するのが正しいのかを、食いしん坊倶楽部メンバーで医師の三浦雅臣さんにうかがいました。
企業にお勤めのサラリーマンなら、従業員への実施が法律で義務づけられているため、毎年1回は健康診断を受けているかと思いますが、自営業の人、フリーランスの人はもう何年も受けていない……という人がいるとも聞きます。自治体から健診の案内が届いている人も多いかと思いますが、「特に不具合はない」とか「めんどうだから」、「時間がない」などという人も少なくないようです。
しかし健診は自覚症状はなくとも、体の状態を「見える化」することで、なにかしらの体の不具合を発見できたり、異常がないことを確認できる重要なもの。また定期的に受けることで、自分の体の変化を把握することができ、なにか病気が見つかったとしても、早いうちに軌道修正をする指標になります。すべての方に受けていただきたいと思います。
健康診断には、大きく分けて2つあります。従業員に対して企業に義務づけられている「定期健康診断(一般健康診断)」と、個人の意思で受診する人間ドックなどの「任意健康診断」です。定期健康診断は国が定めた11の基準項目について検査します(年齢などにより、内容は異なります)。任意健康診断は、11の基準項目に加え、がんなどの重大な病気をより詳しく調べるなど、平均して70項目ほどの検査をします。自営業やフリーランスの人は住民票のある市区町村が実施する健康診断を受けることになります。

労働安全衛生法に基づく、定期健康診断の検査項目は以下の11項目。最低限チェックすべき、いわば「基礎調味料」のような項目です。
①既往歴及び業務歴の調査
②自覚症状及び他覚症状の有無
③身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
④胸部エックス線検査
⑤血圧の測定
⑥貧血検査
⑦肝機能検査
⑧血中脂質検査
⑨血糖検査
⑩尿検査
⑪心電図検査
人間ドックは、これらの11項目に加え、胃カメラ、大腸カメラ、腹部エコー、頭部/胸部MRI・CT、骨密度など、医療施設が提供する多様なオプションがあります。こちらは自費での検査となりますが、定期健康診断の項目だけでは不安な人、がんや脳疾患のリスクをしっかり調べたい人、生活習慣に不安がある人は、必要な項目を検討して受けるとよいでしょう。ちなみに人間ドックの「ドック(dock)」とは、船を修理したり点検したりするための施設という意味があります。
検査の実施後、「健康診断書」が本人に通知されます。それぞれの健診結果は、将来の病気の可能性などを考慮した一般的な基準値に照らし合わせ、多くはA~Eの5段階で判定されます(医療機関によっては、それぞれの段階でさらに細分化して診断される場合もあります)。
A:異常なし(検査値に異常がなく、健康上の問題はない)
B:軽度異常(わずかな異常はあるが、日常生活に支障はなく、治療の必要もない)
C:要再検査・生活改善(再検査が必要な状態、生活習慣の改善が求められる)
D:要精密検査・治療(詳しい検査や治療が必要な状態)
E:治療中
A、B判定であれば、健康状態はお墨付きを得たと考えてよいでしょう。次回の健康診断に向けて、今まで通りの生活を続けましょう。
対策を講じなければならないのは、C判定以上の結果が出た場合です。C判定は、これまでは「経過観察」という表現が使われていたものです。すぐ治療する必要はないけれど、今後の変化を確認するための再検査は必要になります。再検査は検査項目などにもよりますが、「3ヶ月後」「6ヶ月後」「1年後」など指定があると思います。自分で経過を観察すればいいなどといって放っておいていいわけではありませんので、早急に再検査の予定を入れて手帳に書き込むなど、忘れないようにしたいもの。やみくもに不安がることはありませんが、再検査は不確実性を減らすものと考えましょう。万が一大きな病気が隠れていた場合に、ここでどう行動するかが重症化を防ぐカギとなります。
D判定が出た項目については、言うまでもなく、必ず受診しなくてはいけません。基準値は健診をする場所などによって多少幅がありますが、明らかな異常があれば早めの受診が必要、という点は共通しています。なるべく早く受診の予約を入れてください。
次回は、食いしん坊たちがチェックするべき検査項目と基準値について、少し詳しくお話しできればと思います。

東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 助教。2014年東京大学医学部医学科卒業。2021年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了・卒業。糖尿病や肥満症を専門に、最近では老化や睡眠、味覚についても探究を深める日々。
編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock