
食いしん坊倶楽部のLINEチャットグループ「山手線!本気の昼飯マップ」で、メンバーから寄せられたメニューを徹底解剖してお届け。第4回は、渋谷「ロス・バルバドス」の「ジョロフライス・ミール」です。
アフリカ・カリブ・アラブ料理を食べられます。店主はリンガラ語を話すほどのコンゴ民主共和国好きで、BGMはリンガラ・ポップス。バオバブジュースやビサップジュース(ハイビスカスのジュース)といった珍しい飲み物も揃っています。
近年目まぐるしく変化する渋谷の街の片隅で、15年前からアフリカ料理を提供している店がある。“ロスバド”という名で愛されている「ロス・バルバドス」だ。
JR「渋谷駅」ハチ公口を出てスクランブル交差点を渡り、さらにセンター街を抜けると、それまでの喧騒が途切れてスンと静かな宇田川町エリアへと切り替わる。そんな場所に、「ロス・バルバドス」は店を構える。
セネガルの「プーレヤッサ」や「マフェ」など、メニューに並ぶのはすべてアフリカ料理。まずは「ジョロフライス・ミール」1,800円を注文! トマトソースで炊き込んだ西アフリカの炊き込みご飯だ。トマトの酸味とココナッツの甘い風味が渾然一体となった優しい味わいが、不思議と後を引く。付け合わせの鶏肉のグリルやケール、豆煮込み、揚げバナナ、刻み野菜のサラダを混ぜながら食べると、一皿でいろんな味や食感を楽しめるのも魅力だ。
メニューに並ぶ珍しい料理名の数々に興奮してしまって、さらにもう一品! 「プーレヤッサ・ミール」1,400円は、鶏肉のレモン煮込みをかけたご飯。スパイスをきかせた鶏肉とマリネした玉ねぎの甘味に、レモンの爽やかな香り。見た目の素朴な印象とは対照的な奥行きのある味わいで、なんとも美味しい。何口か食べ進めてからプレートに添えられた真っ赤な唐辛子ペーストを混ぜると、ガラリと印象が変わってこれもまた良し。甘い、辛い、甘い、辛いのインターバルを一皿で楽しめてしまう。
いずれのメニューも単品で注文できるほか、プラス700円で前菜を追加することもできる。前菜は肉料理ありかヴィーガンの2種類。肉料理ありの前菜は、鶏肉の春巻きや羊肉のサモサとファタヤ(ツナの揚げ餃子)とサラダのセットだ。
ヴィーガンタイプの前菜は、ニンジンのラペにフムス(ひよこ豆のディップ)、オクラのトマト煮込み、ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)にシガラポレイ。シガラポレイとはチーズを春巻きにしたトルコ料理。この店ではチーズを豆腐に代えてアレンジし、ヴィーガン仕立てにしている。食のスタイルに関係なくどんな人でも楽しめる店にしたい。そんな思いから、「ロス・バルバドス」では2010年の開店当初からヴィーガンやベジタリアンに対応したメニューを充実させてきた。
食後の一杯にはカフェ・トゥーバ。セネガルで飲まれている、ギニアペッパーや生姜などのスパイスが入ったコーヒーだ。ビターで食後にピッタリ。しかも、スパイスがたっぷり使われているので、なんとなく消化を促してくれるような気分になれる。
ここで紹介した料理は、お店にあるランチメニューのほんの一部に過ぎない。「ベジタリアンマッツァ」(レバノン風野菜惣菜盛り合わせ)やグリルチキンを細かく刻んで丼にした「アフリカン・スパイシー丼」のほか、バオバブジュースやスワヒリチャイ(生姜とスパイスをきかせて豆乳でつくった紅茶)など、日本ではあまり見かけないメニュー名がずらりと並ぶ。
そのうえ、実はライスもバスマティライスやクスクス、フォニオ(グルテンフリーのクスクス)などから選べる。強靭な胃袋を持っていたなら、気になったメニューを全部食べてみたい。それができなければ、何度も足を運んでメニューを制覇したい。
壁にびっしりと並ぶのは、店主が集めたオブジェやポスターに、常連客が持ち寄ったお土産の数々。異国の風を感じる店内の雰囲気が、料理の味をさらに引き立てている。
文:吉田彩乃 写真:竹之内祐幸