“いい日本酒”を造るべく、「飲みごたえがありつつ、飲み飽きしない味わい」を追求し続けている「松竹梅」。その松竹梅が目指す味わいの象徴として年2回、約500本ずつリリースしているのが、米の旨味と真摯に対峙し、さらなる上質をまとわせた日本酒、松竹梅白壁蔵「然土」(ねんど)である。大切な人と過ごす特別なひとときを、極上のよろこびのシーンへと誘う「然土」のブリリアントな魅力を紐解く。
いい日本酒ってどういう酒? はたして、この問いになんと答えるだろうか。
松竹梅が考える“いい日本酒”とは、「米の旨味が感じられる食中酒」である。これをさらに追求した味わいの象徴として誕生したのが、松竹梅白壁蔵「然土」だ。とろりとした酒を口に含めば、華やかさが鼻孔を抜け、やがて複雑で奥深い香りに包まれる。日本酒のおいしさに改めて開眼させられるほどの味わいをたたえている。
「然土」の初リリースは2023年10月で、プロジェクトが立ち上がったのは、その3年前にさかのぼる。チームは松竹梅のメンバーが中心だが、世界最高峰のワイン資格を有するマスター・オブ・ワイン(MW)の大橋健一氏をコンサルタントとして招聘。MWとはイギリスで発足した協会が認定する称号で、70年の歴史にあってもMW保持者は世界で未だ500人に及ばないという超難関な権威である。
大橋MWが加わったことで「然土」プロジェクトはがぜん意気軒高に。「日本酒界の『オーパス・ワン』(※)を目指そう!」となったのだという。
米の旨みをしっかりと感じられる酒の味わいを追求するために、原料米は山田錦100%、酒造りは米の旨みを余すことなく引き出せる生酛造りとし、出来上がった醪は袋に入れて自然な滴りだけを集める袋吊りを採用。搾った酒はすぐに瓶詰めする無濾過単一原酒で、瓶詰め後に火入れを施す。この瓶燗火入れ(一火:いちび)は搾りたての風味を閉じ込めることができる方法で、細やかな温度と時間の管理が要求されることから熟練者を要する。米の酒ならではの豊かな旨みと厚みのある味わいを醸し出すことを最優先に、すべてをシンプルにそぎ落とし、丁寧な手間と時間は惜しまない。こうした“いい日本酒”への徹底ぶりから「然土」は醸し出されているのである。
※オーパス・ワン/深い味わいと豊かなアロマで高評価を得ている、アメリカの高級ワイン。カリフォルニアワインを代表する「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」のオーナーと、フランス5大シャトーの「シャトー・ムートン・ロートシルト」のオーナーが手を組み、1978年にワイナリーを創設。オーパス・ワンは「妥協を許さず、品質を追求し、類を見ない1本のワイン」として、その6年後に生まれた。
いわずもがな、日本酒は米の酒である。つまり、主たる原料である米の品質は、酒の味わいに大いなる影響を及ぼす。松竹梅が「然土」の原料米として選んだのは山田錦だ。山田錦は兵庫県で生まれたハイスペックな酒造好適米で、高品質な日本酒に欠かせない酒米となっている。
最近では、兵庫県以外でも盛んに栽培されるようになっている山田錦だが、「然土」の山田錦は、もちろん兵庫県産。西脇市で“いい日本酒にふさわしい、いい酒米をつくりたい”という同じ思いを持つ専業農家の藤原久和氏が丹精込めて育てている。温暖化の影響への対策を共に探りながら、豊かな土壌、水源に恵まれた好立地など、優位な環境下にある恩恵も受け、高品質な酒米を生産し続けている。
その米の旨みを引き出すために、「然土」の酒米はなるべく磨かないことを選択した。一般的に日本酒は酒米の磨き具合(精米歩合)で風味は変わり、吟醸酒なら60%以下、大吟醸酒なら50%以下にする必要がある。酒米を磨くのは、米の表層部分に多く含まれている脂質やタンパク質という旨味成分が、酒にとっては“雑味”になるからだ。昨今、よく磨いた(数字の低い)純米大吟醸系が珍重される傾向にあるが、「然土」の選択は単なるアンチテーゼではない。米の旨みを余すことなく酒の風味に生かしてこそ、米の旨みをたっぷりと感じられる食中酒になるはずだ、という強い信念と情熱からくる松竹梅のチャレンジなのである。
それゆえ「然土」は精米歩合を明かしていない。というのも、磨き具合はその年の米の作柄を確認してから決めるためで、プロジェクトとしては、その数字はなるべく高めていきたいと考えている。「然土」が“純米吟醸”などと謡っていないのはこのためだ。
「然土」プロジェクトが貫いているのは、「控えめで品のある香り、緻密で洗練されたテクスチャー、柔かでふくらみのある飲み心地をベーシックなテイストとして守りつつ、その年のベストを尽くす」ことにある。その年々のおいしさの追求はもちろん、さらに“もっと”を追求し続けるスタイル。こうして進化していく味わいもまた「然土」の魅力なのである。
さて、気になるのは「然土」の味わいだろう。3回目のリリースから取り扱っているホテルグランヴィア京都の和食レストラン「浮橋」を訪ねた。
「まず、フルーティーな香りが魅力的です。味わえば米の旨味が豊かで、和食を引き立ててくれます。旨みや酸などのバランスがよく、味が丸くまとまっているので懐の深さを感じますね。とくに脂が強めな食材やはっきりした味つけの料理にはお薦めです」と語るのは、料理長の三瀨(みせ)洋氏である。
3~4月の会席料理から、ぜひ「然土」と一緒に味わって欲しいという料理を選んでくれた。お造り、牛肉料理、そして別注のうなぎ。お造りは、その日もっとも脂のりのいい旬の魚がホテルに届く。醤油をつければすーっと脂が広がる刺身である。「基本的に、白いご飯と合う料理は日本酒とも相性よし」を持論とする三瀨料理長だが、「とくに『然土』は米の旨みがしっかりしているので、より相性のよさを強く感じます」とのこと。
牛肉のくわ焼きは、頬張るほどにほとばしる黒毛和牛の上質な脂と肉汁がたまらない一品で、醤油ベースのたれの香ばしさも相まって至福をもたらす。うなぎの蒲焼きもまた香ばしく、こっくりとした味わいの一品。脂ののったうなぎのやわらかなおいしさは、永遠に食べ続けていたくなるほどだ。
「『然土』は控えめな印象もあるのに、ボディがしっかりしているので濃厚な料理にも負けません。さらに『然土』が食中酒として理想的だと確信したのが、程よい酸味です。この酸味によるキレが料理の余韻をきれいにフェードアウトしてくれて、すると、また次の料理に手を伸ばしたくなります。食を進める酒ですね」と三瀨料理長は微笑んだ。
いよいよ「然土」の4回目のリリースが始まる。今回は、ちょっと多めに550本の限定出荷という。それだけに飲料リストにこの名を見つけたら、迷わずオーダーしたい。今回のリリースならではの味わいを確かめないと!である。そして、丁寧に造られた食中酒「然土」が料理と濃厚にとろけ合う悦びを、大切な人とともに!
「然土」についてのお問い合わせ:
宝酒造 お客様相談室
フリーダイヤル:0120‐120‐064(平日9:00~17:00)
和食 浮橋
【住所】京都府京都市下京区烏丸通塩小路下るJR京都駅中央口 ホテルグランヴィア京都M3F *JR京都駅直結
【電話番号】075‐344‐5527(直通) 075‐344‐8888〈大代表〉
【営業時間】11:30~14:30(L.O.) 17:00~21:00(L.O.)
【定休日】無休
●夕食の会席は、「御室」10,000円、「薫」12,500円、「翠洛」16,000円、「京舞華」20,000円ほか。
お酒は20歳を過ぎてから。ストップ飲酒運転。
妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。お酒は楽しく適量を。のんだあとはリサイクル。
文:斉藤由利子 撮影:牧田健太郎