各地の伝統料理や新しい食文化を取り込んだ朝食を提供する三井ガーデンホテルズの中から、金沢の“楽しみになる朝食”をご紹介。石川県の“じわもん”、加賀の伝統野菜、日本海の海の幸など、朝から心が躍る料理が勢ぞろいだ。
旅の計画を立てるとき、いちばんに考えるのは「どんな宿に泊まろうか」ということだろう。ビジネストリップであっても、レジャーやリトリート目的であっても、疲れを癒やす心地よい空間とおいしい食事があれば、その旅は百点満点。そこで注目したいのが、全国に33軒のホテルを展開する「三井ガーデンホテルズ」だ。旅のトレンドやニーズが多様化している近年、「Stay in the Garden」をコンセプトに掲げ、好評を博している。滞在そのものを楽しんでほしいという想いから、それぞれの土地や地域の特色を活かした設えと、「楽しみになる朝食」を大切にしているのも特長だ。
「三井ガーデンホテル金沢」では、1階にある「能加万菜 万庭(のうかばんざい まんてい)」で「おばんざい朝食ビュッフェ」がいただける。加賀や能登の食材、食文化、調味料、伝統工芸を発信する石川県のローカルブランド「能加万菜」が手がけるレストランだ。石川県の“じわもん”(家庭で食されるおかずのことを表す金沢弁)や、手作りのおばんざいが盛られた小皿や小鉢がずらりと並ぶ様子は圧倒的!金時草や五郎島金時、源助だいこん、打木赤皮甘栗かぼちゃなどの加賀野菜から、冬ならサバやノドグロを使った汁物、ブリなど季節に応じて地元の食材がふんだんに使われている。なお、こちらの朝食は宿泊客だけでなく外部利用もできるため、ここで朝食をいただいてから観光をスタートさせるのもいい。
なかでも必食は、北陸でお馴染みの「赤巻き」という渦巻き模様が美しいかまぼこが入った金沢おでん。透き通った昆布だしでコトコト煮込んだ、ほっとするような滋味深さがクセになる。また、人気の治部煮風の煮込みは、加賀藩の時代から親しまれている金沢の郷土料理を料理長がアレンジしたもの。治部煮というとすだれ麩や鴨肉、野菜を煮込んだとろみのある料理だが、鴨肉の代わりに鶏肉を使ってあっさりと仕上げているため、朝食にもぴったり。箸休めには、老舗の発酵食品店「四十萬谷本舗」が自社農園の野菜を使った一夜漬けをぜひ。目の前で仕上げてくれる能登豚のしゃぶしゃぶもイチオシだ。夜はしゃぶしゃぶ専門店として営業しているだけに、そのクオリティはお墨付き。オリジナルのポン酢か、濃厚な胡麻ダレで食べたら、思わずおかわりしたくなること間違いなし。
どのメニューもしみじみとおいしくて箸が進むが、その背景には調味料も地元産を使うという信念がある。日本最古の製塩法である「揚げ浜式製塩法」で作られる能登の珠洲塩や、白山の伏流水を使用した伝統製法の大野・直源醤油、能登半島で古くから造られている魚醤「いしる」など、北陸の風土に育まれた独特の風味が料理を支えているのだ。炊き立ての白米「ひゃくまん穀」も自慢のひとつ。ゆっくりじっくり育つ晩生品種で、成熟する時間が長い分、ひと粒がふっくらと大きく、もっちりと粘りが強くて食べごたえがある。ちなみにご飯のお供といえば納豆だが、金沢大学と金城納豆食品の共同開発で生まれた「そらなっとう」は、丸大豆や納豆菌、タレに至るまで石川県産というから脱帽。
こんな郷土愛にあふれた料理を少しずつ味わえるのは、この土地を訪れた旅人にとってなによりのご馳走。あれもこれもと、朝からつい食べすぎてしまいそうになる。もちろん、ソーセージやベーコン、玉子料理、パン、グラノーラ、ヨーグルトといった洋風の朝食メニューも充実しているので、その日の気分に合わせてチョイスできる。
特等席は、中庭を眺められるカウンター席。格式のある武家屋敷跡「野村家」の庭をモチーフにした中庭を眺めながら、九谷焼や山中漆器などの伝統的な器でご当地朝食だなんて、金沢の食文化を丸ごと体感できる贅沢なひとときだ。
今回ご紹介した「三井ガーデンホテル金沢」は、そのロケーションも魅力的。近江町市場をはじめ、日本三大名園の一つである兼六園や金沢城公園、金沢21世紀美術館、ひがし茶屋街など、金沢の観光名所が近くに揃っているのだ。趣きがある外観は、金沢の町屋によく見られる「木虫籠(キムスコ)」という縦格子をモチーフとしたデザイン。内側からは外が見えるけれど、外からは内側が見えづらいという特長があり、独特の情緒が感じられる。
エントランスロビーにも、職人技が光る伝統工芸のエッセンスが詰まっている。正面には石川県の伝統工芸である組子アートが広がり、床は金沢城下の石畳を模した石貼り、カウンターには華やかでありながらモダンな金箔パネルが。ロビーの随所には、金沢とゆかりのある工芸作家や現代アーティストによる作品が展示されているから見逃せない。
文:藤井志織 写真:山田薫