松尾貴史のカレードスコープ
40年経っても色あせない大阪下町のカツカレー|松尾貴史のカレードスコープ(70)

40年経っても色あせない大阪下町のカツカレー|松尾貴史のカレードスコープ(70)

大阪に住んでいた学生の頃から足しげく通っていたカツカレーのお店。閉店したと思っていたが、実は移転していたと聞いた松尾貴史さんは、さっそく訪れることに。何年たっても変わらない大阪の思い出の味とは――。

滋味あふれるカツと濃厚なルー

デザイン学科の学生だった頃、というと今から40年前になるか。ケント紙を挟むカルトンやポスターを丸めるアジャストケースなどを小脇に、炎天下も寒い冬も、旨いカツカレーを求めて地下鉄御堂筋線なんば駅界隈から歩いて十数分、この「カツヤ」に通っていた。

外観

今でもまったく変わらぬ美味さで、いやひょっとすると進化しているのかもしれないが、当時の味と比べる術がない。数年前、四半世紀ぶりにうかがって感動したカツの滋味と柔らかさ、香ばしさに酔った。
さて、またもや今年の頭に再訪するチャンスを得たのだが、ネット上に「閉店した」という情報が投稿されている。
「またひとつ名店が消えた」と事情通と話したら、かつての店舗の近くに移転して営業を再開していると教えてくれた。もちろんすかさず行ってみたら、ずいぶんと綺麗な三階建プラスペントハウスの建物になっていた。

外観

朝からカツカレーを食べたいという私にとっては、開店が10時半とはまたありがたい。
キャリーケースを持っていたら、「奥にエレベーターありますんで」と教えてくださった。
とんかつカレーCのヘレ(東京でいうヒレ、つまりフィレ肉)ヴァージョンをいただくことにした。
カツカレーを待っている間、厨房からは「どんどんどんどんどんどん……」という肉を叩く音が響き続ける。

カレー

さて、久方ぶりのカツカレーは濃厚な味、食べながらカイエンヌペッパー、ブラックペッパー、ウスターソースとちょい足ししながら味変を楽しむ。大阪の下町の風情を濃密に残す雰囲気、幾久しく続けていただきたいものだ。

店舗情報店舗情報

元祖とんかつカレー カツヤ
  • 【住所】大阪府大阪市浪速区元町2‐12‐33
  • 【電話番号】06‐6631‐8988
  • 【営業時間】10:30~19:00 (L.O.)
  • 【定休日】火曜日 日曜日
  • 【アクセス】JR「難波駅」より6分

文・撮影:松尾貴史

松尾 貴史

松尾 貴史 (俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト)

1960年5月11日生まれ。神戸市出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業。 俳優、タレント、コラムニスト、“折り顔”作家など幅広く活躍。下北沢のカレー店「般゜若」(パンニャ)店主。著書に『人は違和感が9割』、『違和感ワンダーランド』、『ニッポンの違和感』(毎日新聞出版社)等がある。