松尾貴史さんは三重県の伊勢を訪れた際に、地元のソウルフードとまで言われているカレーを食べに行きました。初めてなのに懐かしさを感じる、そのノスタルジックな味わいとは――。
三重県伊勢市には、地元の方達の三大ソウルフードがあるという。「喫茶モリ」のスパゲティ「モリスパ」、「まんぷく食堂」の「唐揚げ丼」、そしてここ、「キッチン クック」の「カツドライカレー」だ。
「だ」などと偉そうに書いたけれども、前者2店はうかがったことはない。どうしてもソウルフードのカレーを食べたいと思い、伊勢市駅から徒歩で向かった。近鉄山田線の「宇治山田」駅からなら200メートルもないほどだが、伊勢市駅からも散歩がてらに10分も歩けば辿り着く。
「キッチン・クック」という、初めて聞いたのにどこかノスタルジーを感じさせる店名にそこはかとない親しみを覚える。開店直前に到着して、シャッターが開くのを待って入店してみれば、まるで昭和にタイムスリップしたかのような雰囲気の安心感に包まれる。
壁のホワイトボードに色々な洋食メニューが手書きで記されている。カレーだけでもカレーライス、ドライカレー、カツカレー、エビフライカレーなどもあるようだが、私はソウルフード一択、名物のカツドライカレーを注文した。
続々と入ってくるお客さんや、灯いているテレビ、店内のピンク電話などをぼんやり眺めているうちに、目当ての品が到着した。
丸い皿に、その名の通りドライカレーがこんもりどっしり盛られている。その上に、香ばしいカツが横たわり、別でグレイビーボートに満たされたカレーのルーが添えられている。
ドライカレーだけでも懐かしい旨さを感じる。カツの香りも懐かしの洋食屋さんのそれ、そこにまた贅沢にもカレールーをとろりとろとろとかけて三重(みえ、ではない)構造でいただいた。しっかりとスパイシーで、カレー好きとしてはなかなかに嬉しい世界。味と香りの重なり合いが、とても快適なのだ。
ボリュームもあって、地元の学生たちの強い味方のよう。値段はこれで税込900円。3桁でおさまるという良心的な設定で、もちろん近所にあればヘビーローテーションになるに違いない。
早くまた伊勢参りに行く機会を作らなければ……。
文・撮影:松尾貴史