松尾貴史さんは友人のコメディアンから聞いたとあるカレーハウスに訪れました。そこはジャズが流れる心地よい空間だったといいます。そこで食べたビーフカレーの味とは――。
全国の酒場やライブハウスを行脚する孤高の旅人、スタンダップコメディアンのナオユキ師匠から「あそこのカレーは絶対に美味い」と聞き、2018年にうかがったのが最初だった。
店内の雰囲気はジャズの世界で、片側の壁にはジャズ・ミュージシャンとの写真が夥しく額に入れて飾られている。日野元彦さん、ミッキーカーチスさん、牧山純子さん、誰だか知らないが外国の演奏家と思しき方々と、ジャンルを問わず多くのアーティストの素敵な笑顔がこちらを見ている。
店内にはもちろんジャズが、程よいボリュームで流れていて快適。なぜか、カレーにはフリージャズが合う気がする。
以前訪れた時には猫の店長がいた。17歳で天国に行かれたそうで、今の店長は「クーちゃん」生後4ヶ月。高貴な毛並みが美しい。
ビーフカレーを注文、ランチのセットでミニサラダつきで、コーヒーなどのドリンクをひとつ選べる。
辛さは、と女将さんに聞かれてどうしようかと迷って、「お、結構辛いね、ぐらいで」というと、先客の、通路の反対側で食べている常連と思しきお客さんが「5ぐらいじゃないか」とアドバイス。
快適な辛さだが、汗がとめどなく溢れてきた。
付け合わせは、玉ねぎスライスのアチャール、パン粉のようなもの、アミエビのふんわりとしたふりかけ。
パン粉のようなものは、ほんのりとシナモンの香りが立つ。
聞けば、パン粉とシナモン、ベーコンを炒ったものだそうで、それがなかなかに味わいを深くしてくれる。
ビーフカレーにアミエビが合うことにも驚いた。
1975年開店で、今46年ほどだそう。とても親切な女将さんが、ご近所さんのように話してくれてほっとする空間、必ずまた来ます。
文・撮影:松尾貴史