愛媛県が16年を費やし開発した 「甘平」は、非常に甘く、形は扁平で大玉、皮はむきやすい。じょうのう(粒々を包む房)は薄く、種無しで、粒々感が凄く、しゃきっとした食感だ。その「甘平」のトップ数%の最高級品が“愛媛Queenスプラッシュ”である。
愛媛県みかん研究所が西之香と不知火(デコポン)を掛け合わせ、16年もの品種開発の末、2007年に品種登録された甘平。
ところが、2014年に県育成品種の権利保護のために実施したDNA鑑定の結果、花粉親はデコポンではなくポンカンと判明。父は祖父(デコポンは清見とポンカンの交配種)だったわけだ。
いずれにしても、西之香とポンカンの魅力あるDNAを持つ凄い柑橘が「甘平」だ。
甘平は栽培が極めて難しい柑橘で、柑橘王国・愛媛の凄腕生産者でも正品率が半分程度になることがあるほど難しい。原因は9〜10月に雨が多いと、果肉の張りがすごく、外皮の成長が追いつかず、皮が裂けるからだ。柑橘としての素質は素晴らしいが、生産が難しいため、流通先はごく一部に限られている。
2015年産から、最高品質の甘平に与えられた称号が“愛媛Queenスプラッシュ”。糖度13以上、優れた形と色、美しい表皮、玉の直径が8.0〜10.2㎝の珠玉の逸品
発生率は年(作柄)によって違うものも、少ない年は甘平の1%、多くても数%程度しか流通しない甘平中の甘平と言える。今シーズンは秋の天候に恵まれ、豊作が見込まれる甘平。“愛媛Queenスプラッシュ”の味も格別なはずだ。
柑橘類の生産量全国一の愛媛県は都道府県で唯一、「みかん研究所」 を所有・運営している。
果肉が多汁でゼリーのような“紅まどんな”も愛媛県みかん研究所が生み出した凄い品種。その“紅まどんな”と甘平を親に持つ新品“紅プリンセス”もデビューが近い。
続々生まれる愛媛オリジンの柑橘はどれも個性が強く、柑橘通を唸らせる魅力がある。甘平は大玉なのに味も食感もボケない!濃厚な甘味とキレのある食感は比類なきもの。
次々と新しい品種を生み出す愛媛の柑橘ラブは半端ないものだ。
文:(株)食文化 萩原章史