炭火焼とヱビスビールを愉しむ時間をテーマに、東京・押上「焼鳥 おみ乃」と東京・池袋「ひ暮らし」を紹介します。シンプルな味つけでいて、素材の持ち味を最大限に引き出す炭火焼と、旨味あふれる、ふくよかなコクのヱビスビールの相性とは?
おいしい料理とビールを味わえる時間が、これまで以上にかけがえのない時間になっている今、せっかく味わうなら上質なビールがいい。そう、華やかな香り、きめ細かいクリーミーな泡、深いコクがありながらキリッと締まりのある、ヱビスビールのような。
そうとなったら、目指すは「絶品ヱビスの店」だ。
「絶品ヱビスの店」とは、おいしい料理とともに、ひときわ高品質なヱビスブランド樽生を提供しているお店のことで、クリーミーな泡、クリアなビール、コールドな温度を実現したヱビスビールが味わえる飲食店である。
まず向かったのは、東京スカイツリーの程近くにある「焼鳥 おみ乃」。おまかせのコース制の焼鳥店が増えている中、2017年3月の開店以来、客がストップをかけるまで焼鳥が提供され続けるスタイルを取る、稀有な店である。
扉を引くと、清浄な空間が広がっている。毎晩のように、ほぼ手を休めることなく焼き続ける焼鳥屋にして、煙も香りもまったくと言っていいほど気にならないのだ。
「いらっしゃいませ!」
きびきびとしたスタッフたちから声がかかる。
こちらで提供しているのは、適度な弾力と旨味のある銘柄鳥、伊達鶏である。
いったい何本食べられるだろう。
店長の矢澤正志さんが、気さくに声をかけてくれた。
「少ない方でも10本ほど、多い方なら30本召し上がる方もいらっしゃいますよ」
焼鳥が到着する前に、さっそくヱビスビールをお願いする。
クリーミーな白い泡に、夕暮れ時の空を思わせる黄金色のヱビスビール。ああ、至福の時間が始まる。
1本目は、血肝(レバー)が登場。柔らかく、クセや臭みとは無縁なピュアなおいしさが広がる。そして丸ハツに、かしわに、信州の伝統野菜のひしの南蛮に、ソリレスがテンポよく出てくる。
「お出しする順番は決めていません。常連の方か初めてのお客様か、食べるペースが速いかゆっくりなのかによっても変わってきます。しいて言えば、血肝からお出しすることが多いですね。皆さんに召し上がっていただきたい部位だからです」
「おみ乃」の焼鳥の特長は、なんと言っても紀州備長炭の“直火の強火”で焼き上げること。
「早く焼ける分、ほんのちょっとでも焼きすぎると焦げてしまう難しさもあります」と、矢澤さんはその難しさを語る。水分を保って焼き上げられた焼鳥は、圧倒的にジューシー!塩もたれもヱビスビールに合い、次の一杯を誘う。
「焼鳥との相性は間違いありません(笑)。僕自身もビール党で、週末の仕事終わりは、親方とよくヱビスビールで乾杯しています。お客様の中には、内臓系の焼鳥にはヱビスプレミアムブラックが合うと、樽生のヱビスビールと一緒に黒ビールの小瓶を注文して、ご自分でブレンドされる方もいらっしゃいます」
そんな愉しみ方があったのか……!
気がつけば、15本を食べている。〆の親子丼までぺろりとたいらげていた。
店の扉を引いて外へ出ると、すっかり陽が落ちている。1本ずつ最適な手法で焼き上げためくるめく焼鳥の数々と、ヱビスビールであっという間に時間が過ぎていた。
お腹も心もすっかり満たされて店を後にする。次回は常連客にならって、ヱビスプレミアムブラックの小瓶作戦も、ぜひトライしてみたい。
続いて向かったのは、池袋「ひ暮らし」である。店のテーマは、「大人が愉しめる酒場」だと聞く。築約70年という古い日本家屋のような趣きのある空間で、炭火焼と、南伊勢をはじめとする産地から直送される鮮魚が自慢。鮮魚は、刺身に炭火焼、煮つけ、酒蒸しなど好みの調理法で注文できる。
隣客が食べている厚手で大ぶりの肉料理が、なんともおいしそう。店員に尋ねると、茨城県産のブランド豚、美豚の肩ロースの炭火焼だという。すぐに注文をした。もちろん、ヱビスビールも一緒に。
カウンターの目の前の炭火台で厚切りの肉が焼かれていく。
そして、手早く、霜がついた冷え冷えのグラスにヱビスビールが注がれる。最初の泡は捨て、あくまで注ぎたてのきれいなビールと泡を注いでいく様子に期待が高まっていく。
待ちわびた瞬間がやってきた。焼きたての豚肉と、注ぎたてのヱビスビールの樽生。
「乾杯!」の掛け声を上げるが早いか、すぐさま喉を鳴らす。すーっと喉を滑り落ちる飲み心地。その後に広がる旨味と味わいのふくよかさ!しっかりしたコクも飲みごたえがある。
料理長の安部 学さんが、「美豚は、とにかく脂の味わいがきれいで甘味があるんですよ」と教えてくれた通り、厚みのある脂身も軽やかなおいしさ。その甘味がヱビスビールとぴったり合うではないか。
皿に添えられた、ピーマンのみじん切りや2種の味噌を混ぜた自家製合わせ味噌や、たまり醤油に濃口醤油に味醂を合わせた生姜醤油をつけても、美味。たちまちグラスが空いてしまう。
本日の刺身五点盛りと、鰹塩たたきもお願いしよう。
鰹の味つけは、ポン酢は使わず塩のみ。皮目を炭火でさっと炙って風味をまとわせ、生姜、みょうが、にんにくといった薬味がどっさり添えられる。
安部料理長は言う。
「炭火焼はシンプルな味つけで素材のおいしさを引き出す料理です。炭火の風味がついた料理は、しっかりした味わいのヱビスビールととてもよく合うんです」
そして、こうも話す。
「大人が本当にゆっくり過ごすには、空間のよさだけでなく、きちんとした素材を使ってきちんと手をかけた料理とお酒が必要です。ヱビスビールは高級感があるだけでなく、麦芽のみを使って醸し、長期熟成させた丸みがあります。私たちのお店のテーマ、そしてお客様にぴったりなのです」
年を取るのも悪くない。じんわり、大人になった幸福感が満ちてきた。
焼鳥 おみ乃
【住所】東京都墨田区押上1‐38‐4
【電話番号】03‐5619‐1892
【営業時間】16:30~21:00(最終入店)
【定休日】日曜、祝日 不定休あり
【アクセス】地下鉄「押上駅」より3分
ひ暮らし
【住所】東京都豊島区南池袋2‐8‐9
【電話番号】03‐6874‐7167
【営業時間】11:30~14:00(L.O.) 17:00~21:00(L.O.) 土曜、祝日15:00~21:00(L.O.)
【定休日】日曜、不定休あり
【アクセス】JRほか「池袋駅」より10分
※お店のデータは通常営業時のものです。時節柄、酒類の提供や営業日時が変更されている場合があります。お出かけ前にご確認ください。
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文:長谷川ミヤ 写真:山出高士