
昨年、驚きの超高加水パンであっという間に完売した神楽坂「しかたらむかな」が今年も祭に参戦します。dancyu2024年6月号「驚くほど旨いパン2024」特集の巻頭でも紹介されたそのパンは、手に持つと崩れそうなほどの瑞々しさと、これまでの常識を覆すおどろきの食感が最大の特徴。今年のテーマは“飲めるパン”。ぜひチェックを。

新しい概念と言うしかない。世界のどこにもこんなパンはないけれど、食べた人が虜になるおいしさ。ものによって食感も味わいも異なるけれど、共通する特徴といえば、プルンと弾ける食感や、もっちりしっとりとした優しさ、ジュワーとした口溶けの良さ。
店主の中村隆志さんは、出身地である和歌山県でオープンした「3ft」で話題を呼び、2021年に東京・清澄白河へ移転して「中村食糧」でさらなる注目を集めた。23年にはより広い厨房を求めて神楽坂に移転し「しかたらむかな」としてオープン。不思議な響きの名前は、シェフの名前を逆読みしたもの。パンのネーミングも、無花果や胡桃、レーズンがたっぷり練り込まれた「たわわ」に、木いちご果汁やパイン、レモンなどを練り込んだ「いちご」、シグニチャーでもある「みんなのパン」、ぷるぷるの食感が特徴のシンプルな「瑞々しい」といった様子で、なんともユニークながらわかりやすい。

ベースの生地は現在、6種類。粉は、注文して石臼挽きにしてもらっている小麦をはじめ、5種類ほどの小麦粉をブレンドしている。そこに最大125%もの水分を加え、自家製酵母で発酵させる。
「酸味の強い酵母は苦手だけど、イーストだけで膨らませると奥行きがなくて物足りない」と話す中村シェフ。求める味を出すためにレーズン種、ヨーグルト種、米麹で作る酒種、ルヴァン種など4種類もの酵母を配合し、使い分けている。さらに発酵熟成に20時間もかけることで、酵素がグルテンを柔らかく溶かし、奇跡の口溶けが生まれるのだ。これを大きくゆったりと成形し、高温のオーブンで一気に焼くとふんわり膨らみ、表面は香ばしくパリッと極薄で歯切れよく仕上がる。

さて、2回目の出店となる今回はどんなパンを?と聞くと、「お酒に合うパンにしようと思っています」とのこと。というのも、会場の様子を見て、あまりに多くの人が酒とつまみを楽しんでいる様子が印象的だったらしい。
「いぶりがっこみたいな、スモークしたような香りと発酵の香りは絶対に合うと思うんですよね。会場でみなさんがカトラリーを持参していたり、お酒もがんがん?堪能しているのを見て、そこに合うものにしたいなと」
イベント用に考案していただくパンは、もちろん「しかたらむかな」らしい具材たっぷりのものも登場予定。加水率110%は確実だとか。現地でそのまま食べるのはもちろん、持ち帰ってリベイクしたり、バターやディップをのせて食べたりと楽しめるはず。
文:藤井志織 撮影:合田昌弘