
東京・国領の名店と聞いて「吉春」を想起する中華好き&餃子好きへの朗報です。今年のdancyu祭に「吉春」が初出店。北海道産の小麦粉を一昼夜かけて生地にまとめ、一枚一枚手仕事で皮に伸ばしていく。包まれる餡も山形産の豚肩肉と肩ロースを塊から挽き、手切りしたキャベツやニラと練り上げていく。今回は看板メニューの吉春餃子の水餃子と焼き、それに物販初出品となる自家製ラー油を販売します!
吉村千恵子さん、隆一さん姉弟が「手作り餃子の店 吉春」の看板を掲げたのは2020年のこと。それから5年、決して便がいいとは言えないカウンター10席の店に、都心や郊外から餃子好きが押しかけるようになった。
2人が生まれたのは「どこの家庭にも自慢の餃子がある」という中国の吉林省長春市。中国人の父と第二次世界大戦の残留孤児だった母の間に生まれ育った。小さな頃から家庭にはいつもさまざまな餃子があり、多彩な餡や生地と親しんでいた。
千恵子さんは高校卒業後、地元のホテルに就職。粉扱いの才を評価され、23歳で麺点師の資格を得ることに。その後、両親の日本移住に伴い、都下の町で暮らすことを選択した。
現在、ディナーのみの営業で、提供するのはすべて皮から伸ばした手包み餃子。店名を冠した「吉春餃子」は豚肉とキャベツとニラのオーソドックスな餡。ニンニク不使用でも味に深みがあり、さっぱりしているからいくつでも食べられてしまう。
5種の水餃子と5種の焼き餃子を制覇してもまだ期間限定餃子に巡り会える幸せ。「夏のきゅうりの水餃子」「長芋と大葉の水餃子」「大根と干し海老の水餃子」「にんにくの芽と豚肉の焼き餃子」などこれまで数え切れない餃子を創作してきたが、どの餃子にも熱烈なファンがいる。
しかしそのすべてのファンは、最初に訪れたときに定番「吉春餃子」の水餃子か焼き餃子(あるいは両方)に惹かれて通うようになっていった。
まず祭で定番に出会い、どうぞ心と胃袋を鷲づかみにされてください!
文:松浦達也 撮影:宮濱祐美子