東京・渋谷の上菓子屋「岬屋」からは、伝統の技でつくり続けている粽が登場。端午の節句にしか食べられない、季節限定の味をお見逃しなく!
本誌連載でおなじみの「岬屋」は、静かな住宅街の一角にある。目立つ店構えではないが、趣のあるのれんを目印に、遠くから足を運ぶお客さんも多い。
店主の渡邊好樹さんは、祖父の代から続く三代目。長く、お茶席のための上菓子をつくり続けてきた。
「菓子は、いつまでも口にとどまるようではいけないの。お茶とともにスッと消えないと」が身上だ。
なんといっても、和菓子の要となる餡のおいしさは格別。小豆の性質を知り、「いかに小豆の風味をしっかり残すか」を考えながら、日々ていねいに炊き上げている。一度「岬屋」の餡の味を知ると、口中の記憶となって忘れられなくなる。
その餡を、寒天と組み合わせれば、「噛まなくても崩れるくらいの、ぎりぎりの柔らかさ」に仕上げる初夏の“水羊羹”に、生栗から丸3日かけて仕込む蜜栗と合わせれば、「栗と餡の味が一体になる」秋の“栗蒸し羊羹”になる。いずれも、粽同様早い時期から問い合わせが入る「岬屋」の名物だ。
今回ご紹介する粽は、味のよさはもちろんのこと、笹の葉とい草を使った巻きも素晴らしい。まだ熱い生地をすくって笹の葉にのせ、スーッとしずく型に広げつつ、合計4枚の笹の葉で美しい円錐状に整えるのだ。伝統の技を伝える、上菓子屋ならではの仕事。
ぜひ、巻きの美しさを楽しみつつ、お茶を入れてゆっくり味わって欲しい。
※当日は内容や盛り付けが変更になる場合もあります。
文:岡村理恵 撮影:宮濱祐美子