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【救急集中治療医は見た!食いしん坊の思わぬ落とし穴②】5大味覚の一つ・「辛味」が得意な人、苦手な人がいるのはどうして?

【救急集中治療医は見た!食いしん坊の思わぬ落とし穴②】5大味覚の一つ・「辛味」が得意な人、苦手な人がいるのはどうして?

食いしん坊倶楽部メンバーで医師の平松玄太郎さんが、食いしん坊ゆえに気をつけたい健康について指南してくれるこの連載。前回に続き、食いしん坊にとっては興味津々の「味覚」について語っていただきます。

激辛なものを食べて「ハイになる」ワケ

さて、前回お話しできなかった味が1つあります。それは辛味です。辛味は味覚ではなく痛覚というのは有名かと思いますが、少し深掘りしたいと思います。
辛さの象徴でもある唐辛子だけを粉末にした一味唐辛子は、ピリッとする効果はありますが味はなく、香りも弱いです。これが七味唐辛子になると香りは増しますが、やはり味はありません。言い換えるならば甘くもしょっぱくも酸っぱくも苦くもなく、うま味や脂肪味も感じません。辛いというのは味ではなく、あくまでも「刺激」なのです。

辛いものが得意な人と苦手な人がいますが、その違いは、1つには辛味の成分の受容体の数の差と言われています。この数が多いほど、同じ料理を食べても他人より辛いと感じてしまいます。また痛みというストレスが人体に加わるため、それをやわらげようとして脳内モルヒネとも呼ばれるエンドルフィンというホルモンが分泌されます。長距離マラソンの際などで起こるランナーズハイといわれる高揚感のもとです。痛みに慣れてくると、このエンドルフィンによる効果だけが残るので、人々はどんどん辛いものを欲してしまうのです。

三叉神経痛のある人は辛いものはNG

子どもの頃に辛いものがあまり出なかった家庭で育った方は、成人になっても食べられないケースが多いです。私の実家がまさにそうで、未だにデリバリーでも有名な某大手カレーライスチェーン店の1辛すら食べられません(本当は“普通”すら辛いです)。唐辛子に含まれるカプサイシンは「ホット系」の辛味と呼ばれ温度が高いほど感じやすく、和がらし・マスタード・わさび等に含まれるアリルイソチオシアネートは「シャープ系」の辛味と呼ばれ、温度が低いほど感じやすいです。
味覚は主に顔面神経が伝達しますが、痛覚は主に三叉神経が伝達します。この三叉神経は温覚も伝達する神経なので、辛いものを食べると汗をかきます。三叉神経痛といって顔の一部に激痛が走る病気がありますが、この疾患をお持ちの方は辛いものを食べると発作を惹起してしまう恐れがあるため、避けた方が良いとされています。
海外では日本よりも唐辛子が頻繁に使われますが、寒い国では体を温めるために、暑い国では食べ物の防腐効果を高めるために使われる側面があるからです。

みそ汁は冷めるとしょっぱくなる? 温度による味の感じ方の変化

話は変わって、昔は舌の場所によって感じやすい味覚に差があるという“味覚マップ”なるものが絵とともによく紹介されていましたが、今日においてはそこまで差違はないというのが主流になっています。
ただし温度によって味の感じ方は変化します。甘味は体温に近いほど強く感じ、温度が低かったり高かったりすると感じにくくなります。よって冷やして飲むことを前提とした炭酸飲料にはかなりの糖分が含まれているため、ぬるくなった時にただの甘ったるい砂糖水に感じるのはこの理屈によります。
また塩味は温度が低くなればなるほど強く感じるため、冷めたみそ汁がしょっぱく感じるのはこの理屈によります。
苦味も温度が低くなればなるほど強く感じるため、急須で入れたお茶が冷めると渋く感じるのもこの理屈です。
コーヒーに関しても同じことが言えそうですが、ホットコーヒーの豆に比べてアイスコーヒーの豆は深煎りの傾向があるので一概には言えません。酸味は温度によって感じ方は変わらないとされています。アイスコーヒーは酸味を強く感じるという記事が散見されますが、「苦味が弱くなる」が正確な表現です。なので深煎りにするのでしょう。コーヒー豆の品評では酸味も苦味も評価する必要があり、さらに香りをよく感じられるように多くの場合ホットコーヒーが用いられます。

辛味については、前述の通り「ホット系」「シャープ系」で変わってきます。

今回は味覚についてまとめてみました。私もいつの日か激辛料理を食べて高揚感が得られるよう、励んで参りたいと思います。

教える人

平松 玄太郎 先生

埼玉医科大学卒業、同大学総合医療センター 高度救命救急センター所属、同センターにて災害医長を担当。救急・集中治療専門医としてER・ICU・災害医療を生業とする傍ら、訪問診療・産業医・レースドクターなどにも従事。

編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock

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