兵庫県には日本が誇る「食」のルーツが数多くある。黒毛和牛ブランドの元祖である「但馬牛」、最高峰の酒米・山田錦で醸す「日本酒」、淡路島の「海の幸」といった豊かな食材だけではない。食を支える包丁や器など、歴史ある産地の逸品が充実しているのだ。「ひょうごフィールドパビリオン」では、そうした食を取り巻く逸品をはじめ、各地を訪ねて、実際に見て、学び、体験してもらえる270以上ものさまざまな体験プランを用意している。「御食国ひょうご」の知れば知るほど奥深い魅力を体験する“食旅”に出かけよう!

兵庫県を旅するなら、ぜひ各地に点在する温泉地に立ち寄りたい。なかでも関西の奥座敷といわれる「有馬温泉」は、太閤・豊臣秀吉も愛した日本三古泉の一つ。世界でも類を見ない非火山型“プレート直結温泉”で、「金泉」と「銀泉」の2つの泉質が楽しめることで知られる。鉄分と塩分を多く含んだ赤茶色に輝く「金泉」と、高濃度炭酸泉とラジュームを含む無色透明の「銀泉」に心ゆくまでつかり、歴史ある温泉町の情緒あふれる風情を満喫することができる。


なかでも滝川のせせらぎが心地よい「陶泉 御所坊」は、1191年創業、数多の文化人たちが訪れた有馬温泉最古の湯宿だ。自慢の夕食に供された「三木金物」の切れ味抜群の包丁による天然真鯛の美しいお造りや、季節の果物をたっぷり盛り込んだ鮮やかな「丹波焼」の大鉢など、兵庫ならではの食を彩る逸品がそこかしこで目を引く。兵庫県は豊富な食材だけではない。食を楽しむアイテムも充実しているのだ。
■陶泉 御所坊/兵庫県神戸市北区有馬町858 TEL:078‐904‐0551

有馬温泉から車で30分ほど。「播州三木は鍛冶のまち」として名高い三木市は、わが国で最も古い鍛冶のまちだ。この地の鍛冶職人に代々受け継がれてきた伝統技術から生まれる大工道具をはじめ、多種多様の金物道具や包丁は、プロからも非常に評価が高く、まさに垂涎の一生もの。仕上げの作業がいらないほど切り口の表面がなめらかなことから、「素材が息をする」とまでいわれている逸品揃いなのである。

その一つ、伝統に培われた優れた技術を生かした品質と性能の高さで、国内外で高く評価されているのが「田中一之刃物製作所」の田中誠貴さんが手打ちで製作する、“誠貴作”の銘が入った本鍛造(ほんたんぞう)の包丁である。本鍛造とは、熱した鋼をハンマーなどで一本一本叩き、鍛え上げる製法のこと。
「一丁一丁本鍛造で造る包丁は、プレス機などで切り出してつくる大量生産の包丁とは異なり、組織がとても緻密です。鉄を赤く熱して打つことで不純物がはじき出されて、強度が増し、なめらかで鋭い切れ味になります」と田中さん。こうした三木市の鍛冶の歴史に触れてもらおうと、実際に鍛冶体験ができる、とっておきの体験プランが用意されているというから嬉しいではないか。

■田中一之刃物製作所/兵庫県三木市別所町石野875 TEL:0794‐82‐5660

瀬戸・常滑・信楽・備前・越前とともに、日本六古窯の一つに数えられる丹波篠山市にもぜひ足を延ばしたい。平安時代末期から850年にわたり続いてきた「丹波焼」の立杭集落では、現在も約60の窯元が暮らしに寄り添うやきものとして、生活に根ざした日用陶器を作り続けている。丹波の土の温かな質感、自然釉の美しさ、多様なデザインは、「民芸」の立場からも美術品として高い評価を得ているのだ。
「丹波焼は伝統をしっかりと守るだけでなく、今の時代の生活様式に合った新しいものを取り入れています。形や色合い、釉薬もそうですし、重さも軽くなっています」と言うのは、丹波立杭陶磁器協同組合理事長も務める「市野伝市窯」の市野達也さん。立杭集落にはやきもの問屋がないため、実際に工房を訪れて窯元と対話しながら、直に商品を買うことができるのも大きな魅力だろう。

丹波焼を知るなら、丹波伝統工芸公園「立杭 陶の郷」へ。広い園内にはやきものの里を満喫できる施設が目白押し。鎌倉から江戸時代の古丹波の名品の数々と現代作家の最新作を展示する“伝産会館”をはじめ、陶芸教室、ギャラリー、レストラン、レンタル窯などが併設されており、見て、楽しんで、体験することが可能だ。
なかでも丹波焼の窯元約50軒の作品が並ぶ“窯元横丁”は、気に入った窯元や商品をチェックしながら散策を楽しむことができる、人気の展示販売コーナー。伝統的なものからアーティスティックな作品まで、丹波焼のすべてを俯瞰することができ、訪れる人を飽きさせない。

■丹波立杭陶磁器協同組合/兵庫県丹波篠山市今田町上立杭3 TEL:079‐597‐2034
大都市から農山村、離島までさまざまな地域で構成されている兵庫県は、四季折々の美しい風景と豊かな食材、多彩なアクティビティが楽しめることから、“日本の縮図”ともいわれている。気候風土に恵まれ、歴史と文化に育まれた食文化の驚きと感動を、兵庫を旅してぜひ体感してみてほしい。

文:REVE 撮影:大山裕平