食材の宝庫として知られる「福島県」。その魅力を余すことなく体験できるイベントが東京・日比谷の「DRAWING HOUSE OF HIBIYA」で開催された。このイベントは福島県が主催する「ふくしま応援シェフ」プレミアムディナー。連日の猛暑に負けないほど、食いしん坊たちの熱気にあふれた一夜の模様をお伝えする。
「ふくしま応援シェフ」プレミアムディナーでは、福島県が誇る豊かな食材の魅力を余すことなく伝えるべく、3人の「ふくしま応援シェフ」が腕を振るった。
「ふくしま応援シェフ」とは、福島県産品を積極的に活用し、福島の魅力を発信する料理人や料理研究家のこと。現在約200人が登録している。今回のディナーでは、福島県内で活躍する和と洋の料理人2人、東京で絶大な人気を誇るパティシエ1人が調理を担当した。
この日のディナーは、料理だけでなく、福島県が誇る銘酒とのペアリングも大きな魅力。全国新酒鑑評会金賞受賞数日本一を誇る福島県の日本酒はもちろんのこと、個性が光るクラフトジンなど、厳選されたお酒が料理の味わいを一層引き立てた。
ディナーでは、今回使用された食材を丹精込めて育て上げた生産者も席に着き、参加者たちと交流。福島県産食材への理解を深める貴重な機会となった。
この日提供されたプレミアムな料理を、ペアリングされたお酒とともにご紹介しよう。
最初の一品は、渡邉さんの「郡山うねめ牛の一番だしの吸い物」。A4等級以上の雌牛のみが名乗れる郡山市のブランド黒毛和種「うねめ牛」のロースを、一番出汁でしゃぶしゃぶ仕立てに。絶妙な加減で火が入ったうねめ牛は、桜色に色づき、とろけるような食感に。
料理にペアリングされたのは、会津坂下町の廣木酒造本店「飛露喜 特別純米」。甘い果実を思わせる香りと、すっきりとした飲み口ながら、広がりのある豊かなうま味が特徴。うねめ牛とともに口に含むと、肉の味わいがさらに引き出される。参加者からは「出汁の香りがたまらない!」「うねめ牛が口のなかでとろける」といった声が漏れた。
続いては、加藤さんによる「飯舘村山田さんのドライエイジングビーフのタルタル」。飯舘村で牛肉の熟成に取り組む山田豊さんのドライエイジングビーフを低温調理し、レア状態で細切りに。そこへ柑橘などを使った特製の生七味を合わせてタルタル仕立てにした。
独創的なタルタルに合わせるのは、川内村naturadistill 川内村蒸溜所のクラフトジン「naturadistill 固有種蒸溜酒」のシンプルなソーダ割り。柑橘系の香りが特徴の「かやの実」をキーボタニカルに、橘やジュニパーベリーなどが織りなす深い森のような香りと爽やかな柑橘の香りが、鼻腔を心地よく駆け抜ける。タルタルに使われた生七味との相性が抜群だ。
魚料理は、再び加藤さんによる「相馬原釜漁港で水揚げされたスズキのヴァポーレ とうみぎ丸のソース」。常磐ものの産地で知られる相馬原釜漁港で水揚げされた新鮮なスズキを、ヴァポーレ(蒸し料理)で提供。添えられたのは、糖度の高い郡山市のブランドとうもろこし「とうみぎ丸」など、すべて鈴木農場で収穫された郡山ブランド夏野菜。
この一皿には郡山市の仁井田本家が手掛ける「かをるやま」をペアリング。赤ワインの貯蔵に使用したオーク樽で熟成させることで、ロゼワインのような薄いピンク色になったユニークな日本酒だ。ほどよい酸味と軽やかな甘味のある「かをるやま」は、ソースに使われた「とうみぎ丸」の甘さと見事に調和した。
渡邉さんの「いわき伊勢海老のミディアムレア メヒカリの握り」が提供されると、会場のボルテージは最高潮に達した。いわき沼之内港で水揚げされた大型の伊勢エビを活け締め後3日寝かせて熟成させ、油通しすることで絶妙なミディアムレアに仕上げた。
プリッとした歯ごたえの伊勢エビと、香り豊かな海老味噌ソースが絶妙に絡み合い、参加者からは「美味しい!」と感嘆の声が次々上がった。続いて常磐ものの「メヒカリのにぎり寿司」と、「うにとホッキのおむすび」も並んだ。料理には天栄村の松崎酒造「廣戸川特別純米」をペアリングした。
締めくくりは、菅又さんによる福島の果実を使ったデザート。伊達市の枝並農園の「暁星(ぎょうせい)」は桃のコンポートに。ブルーベリー園みうらのブルーベリーを使った美しいマカロンとアクア農園の希少な在来種あんずを使用した香り高いフィナンシェは、参加者たちを笑顔にした。
この日のディナーでは、郡山ブランド野菜の鈴木智哉さん、桃農家の枝並隆宏さんも席に着き、食事をしながら参加者からの質問に丁寧に答えた。参加者は食卓に並ぶ料理の背景を知ることで、福島の食材への理解を深めていた。
埼玉県から参加したご夫婦は「昨今の異常気象のなかで努力されている生産者の話が聞けて、食材への感謝が深まった」。都内から参加した女性は「機会があれば今回お料理を作っていただいた料理人のお店に行ってみたくなりました」と言う。
今回のプレミアムディナーには続編がある。福島の食材産地を訪ねて料理を楽しむツアーイベントだ。2025年9月15日に郡山、9月28日相馬、11月2日喜多方で、福島の食と酒を楽しめる。
この機会に福島県を訪れてみてはいかがだろうか。
詳細および申し込みは下記サイトにて8/8(金)より先着順で一般受付開始中。お申込みはお早めに。
<郡山ツアー申し込み> <相馬ツアー申し込み> <喜多方ツアー申し込み>文:鈴木桂水 写真:yOU