印度カリー子さんがナッツ博士に聞く!アーモンドの抗酸化力って、どれだけスゴいの!?

印度カリー子さんがナッツ博士に聞く!アーモンドの抗酸化力って、どれだけスゴいの!?

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アーモンドって体にいいとは聞くけど実際どうなの?自身のスパイスカレーのレシピでもナッツ類を使うことが多い印度カリー子さんが、ナッツ研究の第一人者である慶應義塾大学の井上浩義教授に、アーモンドの抗酸化作用について聞きました。

アーモンドは、抗酸化力がある二つの成分を、両方持っているスーパーフード

井上浩義さん
井上浩義さん(慶應義塾大学医学部化学教室教授 医学博士理学博士):アーモンドを始めとするナッツ類などの「健康によい油」研究の第一人者。

印度カリー子さん(以下カリー子):スパイスカレーってナッツ類を本当によく使うので、今日、井上教授にお会いできるのを楽しみにしていました!教授はアーモンドがご専門なんですか?

井上浩義教授(以下井上):光栄です。専門はアーモンドだけではなくナッツ類全般ですね。くるみやカシューナッツ、マメ科のピーナッツや、カボチャの種のパンプキンシードも研究対象に含まれます。

カリー子:そもそも、なぜナッツ類の研究するようになったんですか?

井上:今から19年前にさかのぼるんですが、学会でカリフォルニアに行ったとき、農園に泊まったんですね。普通、ああいう直射日光が強い地域に住んでいる方々って、亀甲型という、亀の甲羅の模様みたいなシワが首の後ろに寄るんですが、農園の方々にはそれが一切なくて。「なぜですか?」と聞いたら、「アーモンドを食べているから」って答えが返ってきたんですよ。嘘でしょ?と思ってアーモンドにまつわる文献で調べてみたら、とても栄養素の高い食べ物だと知りまして。そこから興味が湧いて研究するようになったんです。

ビタミンE含有比較グラフ
抗酸化作用の高いビタミンE。美容効果が高いと言われているゴマと比べると、アーモンドは約300倍!

カリー子:アンチエイジングに効果的とは世間一般に知られていますが、シワに効くというのは初耳です。何の成分ですか?

井上:シワに効くのは、抗酸化力の高い二つの成分、ビタミンEとポリフェノールです。ビタミンEは油に溶けやすい性質があり、ポリフェノールは水に溶けやすい。親油性と親水性、二つの抗酸化作用のある成分を含んでいるのがアーモンドの一番の魅力です。シワの話でいうと、皮膚は油に近いので、ビタミンEが効いているということです。

カリー子:えーすごい!アーモンドは、親油性と親水性の抗酸化力がある成分を持っているって初めて知りました。カレーで使うスパイスの中にも抗酸化力の高いものがたくさんあるので、すごく興味深いです。

井上:ターメリックは抗酸化力が群を抜いて高いですよね。

カリー子:そうですね。ただ、ターメリックに含まれる抗酸化物質のクルクミンは脂溶性なので、水と一緒に摂った場合、吸収されにくいんですね。サフランの抗酸化物質、クロセチンは、逆に水溶性なので油と一緒に摂ってもあまり意味がありません。その点、アーモンドに含まれる抗酸化成分は、油と水のどちらにも溶ける。おまけに、ターメリックとは違って、そのままでも食べられる。考えれば考えるほどにアーモンドってスーパーフードですね。他にもそういう食べ物ってあるんですか?

印度カリー子さん

井上:青魚が挙げられますが、植物から獲れるのはナッツ類だけと言われています。

カリー子:植物では唯一なんですね。ちなみにどうやって摂取するのが効率的ですか?

井上:噛めばいいのかというと、そうでもなくて。アーモンドって硬いじゃないですか。水分含有率は1〜2%なんですよ。細胞壁がとにかく硬い。その硬いアーモンドに含まれる抗酸化成分をちゃんと摂るためには、この細胞壁をいかに割って砕くかが大事なんです。ただ、モニター試験だと、大体8〜12回で普通の人は飲み込んでしまうんですよ。100回ぐらい噛めば栄養素を摂れるというデータがあるんですが、100回なんて到底無理な話で……。数回しか噛んでいないクラッシュの状態で、擦り潰されないまま体の中に入ったとしてもアーモンドの細胞は胃酸でも溶けないので、アーモンドの本来の栄養は数回噛むだけでは摂れないんです。

カリー子:そうなんですね。ということは、アーモンドスライスなら効率よく栄養を摂れるということになるんですか?

井上:そうですね。栄養素の吸収が約2倍違うという結果も出ています。ただ、それよりも効率的なのがアーモンドミルクです。

アーモンドの抗酸化成分を一番効率よく摂るには、アーモンドミルクがダントツでいい!

印度カリー子さん
印度カリー子さん(スパイス料理研究家):「ひとりぶんのレンチンスパイスカレー」や「ひとりぶんのスパイスカレー」など、時短・簡単・本格派レシピを多数リリース。

カリー子:アーモンドの成分をちゃんと摂取したいならアーモンドミルクがいいっていうことですか?

井上:まさしくそうですね。年齢を重ねるとどうしても咀嚼力が落ちますよね。咀嚼力が弱いのは子供も同じです。ドリンクタイプだとどの年齢層でも手に取りやすいですし、アーモンドミルクは、牛乳や大豆と比べるとアレルギーが少ないから子供でも飲める。年齢的な側面から考えても、アーモンドはいいことだらけです。

カリー子:ダイエット面でも期待できますよね。女性ってやっぱりカロリーを気にするじゃないですか。でもアーモンドミルクは低脂肪乳よりはるかに脂質が少なくて、気軽に飲めるというのがありがたいです。抗酸化力のある飲み物って、毎日飲み続けたほうがいいと言われているから、コンビニでも買えるのは本当に便利ですよね。

井上:そうですね。私は、市販のアーモンドミルクを購入してそのまま飲むだけでなく、自宅でアーモンドから作ります。

カリー子:アーモンドミルクを作るんですか?すごい!

井上:実は簡単なんです。生のアーモンドを1、水を9の割合で半日ほど浸けておいて、ミキサーにかけるだけで完成するんですよ。

井上浩義さん

カリー子:アーモンドって薄皮がついていますけど、どういう状態になってからミキサーにかけるのが正解ですか?水に浸すと薄皮は取れますか?

井上:取れなくはないですが、薄皮の部分にポリフェノールが含まれるので、あの部分を取ってしまうとポリフェノールは摂取できないんですよ。

カリー子:えーそうなんですね!

井上:アーモンド特有のローストした香ばしい匂いって薄皮の部分にあるんですね。香りを大事にしたいので皮は取らずミキサーにかけます。

カリー子:早速家でやってみます!とはいえアーモンドミルクを自分で作れる時間のある方ならいいですけど、現代は、アーモンドミルクを作る余裕のある人なんてなかなかいないと思います。それが今ではコンビニで買えるってスゴいですよね。あと、アーモンドミルクは、コーヒーに混ぜたり、スムージーにも使えたり、応用が利くという点でも優れていますね。ちなみに、自作したアーモンドミルクをどう料理に使うんですか?

井上:アーモンドミルク鍋にします。昆布としいたけのだしと半分に割って、黒胡椒をかけていただく西洋鍋ですね。

カリー子:和のだしとは確実に相性がいいですよね。黒胡椒も合いそう!

アーモンドミルクを飲み続けると、痩せやすい健康的な体になる

アーモンドミルク
アーモンドミルクはスムージーにも最適。バナナとレモン汁を混ぜるだけで、アーモンドバナナスムージーが完成する。手軽に栄養素を摂り入れられて、おまけに美味しい。レシピは江崎グリコのホームページで公開中。

カリー子:アーモンドを食べ続けることで、目に見える効果ってありますか?

井上:ありますね。アーモンドだけを食べる研究をしたんですよ。1日25粒を6ヶ月、毎日食べる。そうすると、糖化物質であるAGEsが20%減ったんです。

カリー子:AGEsってわかりやすく言うとどういう物質ですか?

井上:血液中にある余分な糖と体内のタンパク質が結合するとAGEs(Advanced Glycation End Products)が発生するんですね。これが糖化という現象。AGEsは、年齢を重ねるごとに増えていくんですよ。つまり、若者より高齢の方のほうが蓄積しているということです。ただ、通常増えていくはずのAGEsが、アーモンドを6ヶ月間食べ続けることで減っていったんです。

カリー子:へぇ〜、そうなんですね。そもそも、糖化するとなんでいけないんですか?

印度カリー子さん

井上:糖尿病検査のとき、ヘモグロビンA1cという項目があるんですが、あれは、ヘモグロビンがどれだけ糖化しているかを測っているんですね。ヘモグロビンA1cのパーセンテージが高い状態でいるとやがて糖尿病になり、心臓・脳・腎臓・末梢神経・目などに合併症が起きる可能性が高くなります。

カリー子:AGEsは体から排出されることはないんですか?

井上:排出されるんですが、食べたものの7〜8%は体に蓄積するというデータがあります。

カリー子:蓄積と排出は同時に行なわれているけど、蓄積のほうが上回ったとき、体に何かしらの障害が出たりするということですかね?

井上:そうですね。そのAGEsをストップさせてくれるのがアーモンドなんです。糖化を端的に表現するなら“コゲ”ですね。

カリー子:わかりやすいです。スパイスカレーで玉ねぎを炒めるときにもメイラード反応って言いますよね。たまねぎのタンパク質と糖分を、熱をかけて茶色くしている反応です。あれって、一度茶色くしたら元のたまねぎの色に戻らないじゃないですか。

井上:そうです。カレーで例えるとわかりやすいですね。

井上浩義さん

カリー子:あのメイラード反応が体の中でも起こっていて、一回体の中にコゲができると、排出されるのに時間がかかり、コゲが体の中に回っている状態ということですよね。

井上:まさにコゲが原因で、神経や内臓、目などに症状が出てしまうということです。日常的に食品中に含まれるAGEsも体に吸収されます。このAGEsは適切に排出するというのが重要で、その役割を担っているのがアーモンドなんですよ。

カリー子:最近はやりの腸活でもアーモンドが注目されていますよね。

井上:そうですね。食物繊維が豊富ということもあり、食べ始めて2週間後ぐらいから、便通の回数が増えるという結果が出ました。特に1週間に4回以下の便秘傾向の人ですね。日本人の場合、腸内に3〜4kgの糞便があると言われていて、アーモンドを食べるとそれがスッキリすると言えます。痩せるとは断言できませんが、痩せやすい健康的な体にはなると言えます。

カリー子:酸化の話に戻ると、酸化を抑えるって、すごく大事なことですよね。酸素を体に取り入れて生活している人間は、誰しもが酸化しているっていうことじゃないですか。運動したり、呼吸したりするだけで、酸化しているんですから。酸化を放置すると、肌だと、シワができる、くすみができる、テカリがなくなる。血管なら動脈硬化が起こるとか、心臓病につながるとか。すべての原因は酸化なんですよ。酸素を取り入れなきゃ生きていけない人間の副産物として酸化がある。それをどう防ぐかで、健康的で綺麗に生きることにつながる。とはいえ、普通に生きていくためには、究極に言えば、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルさえあればいいわけで。より綺麗に、より健康的に、と考えると、抗酸化力のあるものを食べたほうがいい!という話ですよね。

印度カリー子さん

井上:そうですね。ごもっともです。また、もともと人間に備わっている、活性酸素を消す酵素のSODが、40歳を過ぎたあたりから、ざっくり言うと、100から10ぐらいに落ちるんですよ。SODが90%も減ったら、しっかり抗酸化物質を摂らないと、どんどん老けてしまいますし、病気にもなりやすくなる。ですから、抗酸化物質を含んだ食べ物を取り入れるのは、とても大事なんです。

カリー子:ほかに、アーモンドの利点としては、アーモンド自体が空気中の酸素で酸化しないところですよね。長期保存ができる。アーモンドと同じように、ビタミンEとポリフェノールを多く含む青魚は酸化されやすいじゃないですか。たとえば、イワシを焼いて置いておくと、すぐに臭くなる。それは魚に含まれるDHAやEPAなど、体にいい成分がどんどん酸化してしまうからなんですよね。鮮度が大事で、すぐに食べないとダメ。でも、アーモンドは長期間日持ちするのがいい。

井上:まさにそうですね。それに、アーモンドのいいところは、火にかけても作用が変わらないことです。われわれが実験した結果、一般的な煮物のように、180度ぐらいまで上げても、抗酸化作用は変わらなかったんです。アーモンドミルクも、抗酸化力は変わらない。だからヘルシーなスパイスカレーに使うというアイデアは、とても理にかなっているんです。

アーモンドミルクを入れるだけでコクが倍増する!

アーモンドチキンカレー
カリー子さんが考案した「アーモンドチキンカレー」。工程で入れる水をアーモンドミルクで代用すると、アーモンドの香ばしさとまろやかな風味が加わる。「いつものスパイスカレーが格段とコク深い仕上がりになります!」とカリー子さん。

カリー子:スパイスカレーって玉ねぎを飴色になるまで炒めて、旨味とコクを最大限引き出すのが大切と言われますよね。でも、ナッツのコクがあれば、玉ねぎのコクはそこまで要らないんですよ。

井上:なるほど!ということは、時間がかかる部分が削れるから時短にもなるんですね。

カリー子:そうです。でも今回考えた「アーモンドチキンカレー」は、玉ねぎをしっかり飴色にしつつ、さらにコクを倍増させるために、アーモンドミルクを入れ、さらに、お菓子作りで使うアーモンドプードルも入れました。なのでコクが超増し増しです(笑)。

井上:旨味を掛け合わせるんですね。面白い。

カリー子:アーモンドプードルを入れると、家のルウカレーのようなとろみが加わるので、スパイスカレーが好きな人も、家カレーが好きな人も食べやすいと思います。

井上浩義さん

井上:僕みたいな初心者でも作れますか?

カリー子:もちろんです。今までスパイスカレーになじみがなかった人でもミスなく作れるように、スパイスは、コリアンダーパウダー、ターメリックパウダー、クミンパウダーの三つしか使っていません。辛さは、チリペッパー、もしくは一味唐辛子をお好みで入れるだけです。

井上:アーモンドミルクを水の代わりに入れることで、コクが増す以外に、利点はありますか?

カリー子:一体感のある味になります。インドやスリランカでココナッツミルクを使うのは、まろやかな甘味やコクを加えるだけでなく、全体を調和させるためでもあるんです。スパイスの個性的で複雑な香りがまとまって、すごく食べやすくなるんです。さらに、アーモンドの風味は、個性的なスパイスでもバッティングしないというのもいいところですね。

井上:火にかけても抗酸化作用が変わらないので、アーモンドミルクは煮込み料理に向いているとは思っていましたが、これほどスパイスカレーに適しているとは!カリー子さんのレシピを見て、自分も作ってみます!

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文:千葉泰江 撮影:伊藤菜々子

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