浅草周辺、一日まるっとTOKYO古今グルメさんぽ

浅草周辺、一日まるっとTOKYO古今グルメさんぽ

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江戸時代から賑わいを見せる東京の東側。ことに浅草周辺には新店が続々オープンしている。そこで、「食べる」をテーマに朝から巡る散歩コースを提案。伝統やなじみ深い「食」を下地にしながらも、「いま」を取り入れているスポットで、新しい美味を満喫!

9時:江戸の調味料「煎り酒」を使う“名物浮浮卵”を朝食に

「TOKYO古今グルメさんぽ」の始まりは、浅草寺から。日中は多くの参拝客が集う本堂へと続く仲見世商店街も、朝なら軽快に歩を進められる。観音様に参ったすがすがしい気分のまま、「梅と星」へ朝食に行こう。

浮浮卵(ふわふわたまご)の朝定食
江戸時代のレシピをもとにした卵料理“浮浮卵(ふわふわたまご)の朝定食”1,000円。江戸時代の代表的な調味料の煎り酒は自家製で、料理に用いる。煎り酒「よしなに、」1,080円は店舗で購入可能。

「梅と星」は、2022年6月に開店。炊きたての羽釜ご飯と梅干しに豚汁。“素朴なご馳走”が並ぶ。
特筆すべきは、醤油が広まる以前からの欠かせない調味料、煎り酒が自家製であること。梅干し、昆布、鰹節、日本酒を煮詰めたもので、店では卵料理や生姜焼きなど現代の料理に生かしている。

金龍山浅草寺
1400年近い歴史をもつ浅草のシンボル、金龍山浅草寺。
店主の竹内さん
店主の竹内さんが食の世界に入ったきっかけは梅干し。東京スカイツリーの真下に位置する東京ソラマチにて、「立ち喰い梅干し屋」も切り盛りする。
カウンター席
カウンター席にて朝ご飯と昼ご飯の定食を提供している。

店主の竹内順平さんは言う。
「古典的なのに、今となってはむしろ新しい。そこに魅力を感じています。煎り酒は、旨味が凝縮している調味料なので、単に塩気や酸味を加えるだけでなく、むしろ合わせる素材の味をより強く感じさせてくれます。そこで、自分たちで手がけるものはあえて塩を控えるようにしました。餃子やおひたしにかけたり、オリーブオイルと合わせてドレッシングにしたり。現代の食卓に合う味にしています」

竹内さんが食の仕事に携わるようになったのは、梅干しの魅力に取りつかれたことから。そしてこの先は、ロスなく保存ができて旨味が凝縮する「干し物」も手がけていきたいと考えている。根底に通じているテーマは、「日本の食における普遍的なものの再構築」である。

12時:きりりとしたつゆの江戸蕎麦と蕎麦前を堪能

隅田川へと向かっていくと、景色がぱっと抜けた。視線の先には東京スカイツリー。川沿いを歩いたり、土産物店を回ったり、かっぱ橋道具街を巡るのもいい。

昼食は、2021年11月に開店した正統派の蕎麦が評判の「浅草 ひら山」へ。
店主の平山周さんは、ニューヨークの蕎麦屋で働いて手打ち蕎麦に開眼。「日本を出てみて、あらためて蕎麦の魅力に気づいた」と言う。
帰国後は、食べ歩いた蕎麦屋の中でもひと際その美味にひかれた東京・両国「江戸蕎麦 ほそ川」へ修業を志願。見目も美しい細打ちの蕎麦ときりりと締まったつゆの「江戸蕎麦」を習得した。

店主の平山さん
店主の平山さんは、手打ち蕎麦専門店や日本料理店で研鑽を積み、独立を果たした。
そばがきの揚げだし
“そばがきの揚げだし”1,300円など、日本酒を呼ぶ一品料理も充実。今日は、明るい時間から蕎麦前を愉しみたい。
穴子の天ぷら
大ぶりを選って1尾まるごと揚げる“穴子の天ぷら”1,200円はファンの多い一品。肉厚でふわりと軽い食感!

独立に際しては、伝統の王道を歩みながらも、器や店内は軽やかに。目指すところをこう語る。
「余計なことをしないシンプルな世界観は保ちながらも、ひと手間加えて、“蕎麦屋のつまみ”をきちんとした料理として提供したいですね。さっと蕎麦だけ食べて帰られる方にとっても、ゆっくり過ごしたい方にとっても、これまでにない空間をつくりたいと思っています」

蕎麦
せいろ1,000円。蕎麦は十割。力強い風味の福井県産の蕎麦粉を中心に用い、店で石臼で挽いている。

15時:自家製チョコレートと珈琲のペアリングを体験

蔵前界隈に進んでいくと、従来の建物をリノベーションしたカフェや珈琲専門店、雑貨店などが増えてきた。財布やバッグなど革製品や彫金などのものづくりの工房もあちらこちらにある。
その一角に、2016年11月開店の自家焙煎珈琲と自家製チョコレートの店「蕪木(かぶき)」がある。

自家製チョコレートと珈琲
ブレンド700円は、中深煎り“オリザ”とやや深煎り“珀(はく)”、深煎り“羚羊(かもしか)”がある。チョコレート300円~は常時8種類以上を用意し、注文した珈琲に合ったものを提供する。“季節のホットチョコレート”1,000円もあり。

店主の蕪木祐介さんは、この場所に自身の店を開いた理由をこう振り返る。
「日々、黙々と、珈琲やチョコレートづくりに向き合います。ものづくりが盛んなこの場所なら自分の店も風景のひとつになれるかと思って」。

また、昔ながらの店構えだったり、毎日やってくる常連客がいたりと、かしこまらずにひと休みできる喫茶店がきちんと残っているところにもひかれたと言う。
「私の店も、ふらっと立ち寄れる“ただの喫茶店”でありたいと考えています。日常のなかで小休止ができるような」

併設の喫茶室は、入店は1組2人までにしている。店内が限られた席数であることや、1杯ずつ丁寧に淹れる珈琲は一度に多くを抽出できずに時間を要するためである。

店主の蕪木さん
もともと製菓の仕事もしていた店主の蕪木さん。こっくりした味わいが冴えるネルドリップで、注文ごとに丁寧に珈琲を淹れる。喫茶室は全14席。

17時:お酒との新しい出会いを生む新発想の角打ち

「蕪木」を出て、路地を曲がると風格ある建物が現れた。銭湯「三筋湯」だ。
15時に暖簾がかかると同時に、常連客がやってくる。
そのはす向かいには、2022年5月に開店した酒販店「NOMURA SHOTEN」がある。店で買ったお酒をその場で飲める角打ちスペースは、大きな窓が開放的で、風呂上がりの客を吸い込んでしまいそうだ。

外観
倉庫だった建物をリノベーションし、店舗に。気軽に入りやすい店構え。
外観
風格漂う宮造りの「三筋湯」。浴場の壁にはペンキ絵が描かれ、庭には池がある。
しめ鯖リエット トルティーヤチップス
“しめ鯖リエット トルティーヤチップス”800円と、都内の蒸留所で造られたクラフトジン2種。ジン900円~は、好みの飲み方で。
角打ちスペース
角打ちスペースは、換気に配慮された造り。リカーショップスペースには、北欧のジンや注目の焼酎など国内外の蒸留酒が並ぶ。

国内外で活躍するバーテンダーであり店主の野村空人(そらん)さんが、酒販店を開いた理由はこう。
「コロナ禍はどうやってお酒を売っていくべきか、どうやってお酒のよさを知ってもらえるかを考えさせられた2年間でした。自分自身も家飲みが増えたこともあり、バーよりももっと気軽に新しいお酒と出会えて、しかも買って帰れるという“次世代の酒屋”をつくりたかったんです」

野村さん
野村さんはロンドンでバーテンダーとして活躍し、帰国後はメニュー開発やバーのプロデュースなどを手がける。「NOMURA SHOTEN」は自身初の実店舗となる。

店内には、野村さんのフィルターを通してセレクトされたジンや焼酎、日本酒にクラフトビールにワインが並ぶ。カウンターでは、蒸留酒なら炭酸水やトニックウォーターで割って味わえ、気の利いたつまみも揃う。
「オンラインでもお酒を販売することはできますが、飲まないことにはわからないですよね。飲み方すらわからないかもしれません。家でもできる飲み方で実際に味見ができる角打ちは、オンラインとオフラインが交差する場所です。銭湯のはす向かいという、昔ながらの東京が残る風情もたまりません」

――すでにあるものを再解釈して新しい形にする。
今日の散歩は、そんなエネルギーに満ちているなぁ。余韻を味わいつつ、もう一杯飲んじゃおうか。

Tokyo Tokyo公式サイト
Tokyo Tokyo
「Tokyo Tokyo」は、東京の魅力を国内外にPRするアイコンです。旅行地としての東京を強く印象づける「東京ブランド」の確立に向けた東京都の取組の中で誕生しました。筆文字のTokyoとゴシック体のTokyo は、江戸から続く伝統と最先端の文化が共存する東京の特色を表現しています。

お問い合わせ情報お問い合わせ情報

公益財団法人東京観光財団
電話番号:03‐5579‐2681

この記事で紹介したお店

梅と星
【住所】東京都台東区浅草2‐2‐4
【電話番号】03‐4400‐8620
【営業時間】9:00~15:00(L.O.) 土日祝9:00~16:30(L.O.)
【定休日】月曜
【アクセス】地下鉄「浅草駅」より3分

浅草 ひら山
【住所】東京都台東区西浅草1‐3‐14
【電話番号】03‐5830‐6857
【営業時間】11:30~14:00(L.O.) 17:30~20:30(L.O.) 
(店舗修繕のため10/9頃まで休業。10月中は、木~日曜12:00~15:00のみの営業。要予約)
【定休日】月曜、火曜
【アクセス】地下鉄「田原町駅」より2分

蕪木
【住所】東京都台東区三筋1‐12‐12
【電話番号】03‐5809‐3918
【営業時間】喫茶室は水~金曜11:00~20:00 土日祝9:00~20:00(月曜11:00〜18:00は珈琲豆、チョコレートの販売のみの営業)
【定休日】火曜(祝日は営業)
【アクセス】地下鉄「蔵前駅」「新御徒町駅」より7分

NOMURA SHOTEN
【住所】東京都台東区三筋2‐5‐7
【電話番号】03‐5846‐9755
【営業時間】15:00~22:00
【定休日】月曜(祝日は営業、翌火曜休み)
【アクセス】地下鉄「新御徒町駅」より5分

※お店のデータは通常営業時のものです。時節柄、酒類の提供や営業日時が変更されている場合があります。お出かけ前にご確認ください。
※価格はすべて税込みです。

文:沼由美子  写真:萬田康文

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