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シェフたちによる、コロナ対応医療機関支援プロジェクトvol.2

シェフたちによる、コロナ対応医療機関支援プロジェクトvol.2

人気のシェフたちよる、コロナと闘う医療機関への支援プロジェクト「スマイルフードプロジェクト」。レポート第二弾は、今年1月25~29日配布のお弁当メニューを担当した「カンテサンス」岸田周三シェフのインタビューです。温度、香り、食感など制約の多い「お弁当」。そのおいしさの本質とは何か考え続け、完成したというツナサンド弁当のレシピと共にお届けします!

一問一答 「カンテサンス」岸田周三シェフの場合

――今回、お弁当のメニュー開発にはかなり悩まれていましたね。

岸田シェフ
はい、3週間かかりました(笑)。「お弁当のおいしさ」って何なのか、どこにあるのか、僕なりの“解”がなかなか出なかったんです。お弁当って基本的に常温だから、香りとか食感とかの面でおいしさを表現しにくい……。制約がかなり多いじゃないですか。ただフランス料理にも“ティエド”という常温のカテゴリーはあるので、その枠組の中で、記憶の中にある料理をひとつひとつ検証しながらおいしさを探しました。

――「僕の役目はおいしさを届けること」って何度もおっしゃっていました。

岸田シェフ
僕に求められているのはそこだと思っているので……。とにかくおいしさを届けたい。ただレシピとかアイディアとか食材の組み合わせとか、僕にとってそういうのは大して問題ではなくて、水分量とか火の入れ方とか香りとか、そっちの方が人間がおいしさを感じる根幹だと思っているんです。だから今回のツナにしっかり火入れをする必要があるなら、水分や油分を後から補って調整する。口に入れたときにもさもさするというか、水分を奪われる感じを避けたいんですね。

――今回の料理はすべてオリジナル。苦労されたこととか新しい試みとか、ありましたか?

岸田シェフ
たとえばポテトサラダのじゃがいもは、普段僕がおいしいと思う状態よりもかなり長く、柔らかくなるまで茹でました。茹でたじゃがいもはしばらく置いて冷えると固くなっちゃうんですが、がっつり火を入れるとおいしさをキープできると気づいたんです。料理って、“アジャスト”なんですよね。「この食材なら」「この季節なら」と合わせていく。今回は制約がたくさんありましたけど、アジャストして着地させました。

――Chefs for the Blueの理事も務める岸田シェフ。今回は環境負荷の低いシーフードを三種類使いました。

岸田シェフ
サステナブルシーフードはまだ外国産が主流なこともあって、僕の店ではなかなか使えず悩ましいんですが、今回はせっかくの機会なので、水産物は持続性を考えた食材だけで構成したんです。サステナブルな取り組みで知られる富山湾しろえび倶楽部のしろえびと、FIPという漁業改善プログラムを進める和歌山の漁業者のビンチョウマグロ、そしてベトナムのASC認証ブラックタイガー。もしかしたら店でも使えるかも、という食材もあって、改めて気づきをもらえた機会でした。

――「カンテサンス」オープン時から、 外部イベントもレシピ提供もほぼ断ってこられましたが今回は二つ返事でOK。巷では「事件級」と言われています(笑)。

岸田シェフ
えーと、そうなんです、イベントとかは苦手で……ごめんなさい。でも今回は、医療従事者にお弁当を届けるというテーマがあったので、ぜひやりたくて手を上げさせていただきました。僕自身とても勉強になったし、心からやってよかったなと思います。でもね……。僕、実は、外部の商品開発もしたことないし、レシピなんて自分の店でも作ったことがないから、提出しろと言われてそこが一番困っちゃったんですよね。レシピってどうやって書くのか、全然わからなくて(苦笑)。

岸田シェフ監修、ツナサンド弁当のレシピ

岸田シェフ監修、ツナサンド弁当

六本木Bricolage bread & co.のムーパンと FIPビンチョウマグロのツナサンドウィッチ

材料材料 (10人分)

ビンチョウマグロ1kg
マヨネーズ200g
ブラックオリーブ30粒
パセリ300g
ホワイトセロリ350g
アンチョビペースト50g
パン10個
バター300g
ロメインレタス1個(ちぎる)
自家製ドライトマト*40個
EVオリーブオイル適宜
適宜

*自家製ドライトマトは、プチトマトを半分に切り、塩と砂糖、乾燥タイム、オリーブオイルとあえてペーキングシートにのせて120℃のオーブンで90~120分間焼く。

1マグロをマリネする

マグロは1.1%の塩、エクストラバージンオリーブオイル0.8%を合わせて真空袋に入れ、一晩マリネする。

2湯煎する

75度の湯で20分間湯煎して火を入れ、取り出して冷ます。

3ペーストをつくる

ブラックオリーブは薄くスライスし、パセリは粗めのみじん切りにする。ホワイトセロリの茎は2cm長さに切り、葉は粗く刻む。アンチョビペーストは、温めたオリーブオイルでさっと炒める。バターは室温に戻し、ペースト状にしておく。

4マグロと混ぜ合わせる

マグロを袋から取り出し、身を細かくほぐす。マヨネーズ、ブラックオリーブスライス、ホワイトセロリ、パセリ、アンチョビーペーストをマグロに合わせ、塩で調味する。水とEVオリーブオイルを少量ずつ加え、しっとりとした食感になるよう調整する。

5パンに挟む

パンの表面に縦に切り目を入れ、内側にバターを塗って、ちぎったロメインレタスとツナサラダを挟む。ドライトマトを飾る。

マグロと混ぜ合わせる
ツナサラダはしっとりとした舌触りになるように水とオイルで調整する。
パンに挟む
ドライトマトを最後にのせて、彩りもきれいなツナサンドが完成。

キャロットラペ

材料材料 (10人分)

にんじん600g
ビーツ250g
ザクロ1個
タブレ100g(クスクス)
トマトジュース100cc
EXオリーブオイル100g
赤ワインビネガー50g
シェリービネガー30g
レーズン100g
5g
クルトン*200g
ローストピーカンナッツ100g(クルトンとともにローストし、刻む)

*ハード系のパンを冷凍してスライサーでごく薄く切り、オリーブオイルをかけまわし150℃のオーブンで20分間焼く。生のニンニクの断面を擦り付けてから、手で砕いておく。

1野菜を千切りにする

にんじん、ビーツは皮をむいて千切りにする。塩を加えてよく混ぜ、しばらくおいて滲み出た水分を除く。ザクロは実を割って果実を取り出す。

2マリネする

1にエクストラバージンオリーブオイル、赤ワインビネガー、シェリービネガー、レーズンを加えてマリネする。

3トマトジュースを温める

トマトジュースを沸騰直前まで温め、タブレに注いで戻す。

4仕上げ

器に3のタブレと2の野菜を入れ、別容器にクルトンとローストピーカンナッツを入れる。食べる直前に混ぜる。

完成
ビーツの赤が目にも美しく、タブレの粒々が食感のアクセントに。
クルトンとナッツ
クルトンとナッツは別添えにして、直前に合わせてサクサク感を出す。

富山湾しろえび倶楽部のしろえびとASC認証ブラックタイガーのポテトサラダ

材料材料 (10人分)

白えび100g
エシャロット3個分
ブラックタイガー30g(殻をむいた状態)
セロリ100g
赤玉葱1/2個
パセリ1/2p
ケッパー*30g(塩漬け)
コルニッション50g
ジャガイモ450g(メークイン)
薄力粉適量
適量
白ワインビネガー30g
EVオリーブオイル50g

*ケッパーは食べてみて塩辛いようなら水戻しする。

1白えびを粗挽きにする

白えびは、殻付きのままフードプロセッサーにかけて粗挽きにする。少しずつ指に取って平たく延ばし、薄力粉を軽くまぶして熱したオリーブオイル(分量外)の中に落とす。カリカリに揚げてから粗みじんに刻む。

2エシャロットを素揚げする

エシャロットはスライスし、薄力粉をまぶしてカリカリになるまで素揚げする。粗みじんに刻む。

3ブラックタイガーをゆでる

ブラックタイガーは塩茹でにし、殻をむいて1cm大にカットする。

4野菜類をみじん切りにする

セロリ、赤玉ねぎ、パセリ、ケッパー、コルニッションはそれぞれみじん切りにする。

5じゃがいもを蒸す

じゃがいもは皮付きのまま、しっかり柔らかくなるまで蒸す。熱いうちに皮をむき、少し形が残るくらいに粗くつぶす。

6仕上げ

2~5をボウルに入れ、白ワインビネガーとEVオリーブオイルを加えてよく混ぜる。塩で味をととのえ、盛り付けてから1の白エビを刻んでのせる。

えび
右が塩茹でにしたブラックタイガー、左が白えびの粗挽きに衣をまぶしてを揚げたもの。
完成
2種類のエビ入りの新感覚のポテトサラダ。セロリやエシャロットを入れて軽やかに。

文:佐々木ひろこ 撮影:鈴木泰介

佐々木 ひろこ

佐々木 ひろこ (フードジャーナリスト)

4月の緊急事態宣言発出直後から、有志とともに医療現場にお弁当を届けるスマイルフードプロジェクトを立ち上げた。海の未来を考えるシェフ集団「Chefs for the Blue」代表理事も務める、闘う食いしん坊。

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