知っていそうで知らないイタリア食材

知っていそうで知らないイタリア食材

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バルサミコ酢、エキストラバージンオリーブオイル、トマト缶――あなたのキッチンにもありますよね。 定番アイテムになって久しいこれらの食材ですが、本当にそのポテンシャルを生かせていますか?そもそも、バルサミコ酢って「ワインビネガー」と何が違うんでしょう?「エキストラバージン」は何が特別なんでしょう? イタリア料理に目覚めた利亜さんと一緒に学びましょう。

【登場人物】

利亜
利亜さん:イタリア料理を勉強し始めたばかり。
伊田
伊田さん:トラットリアの常連客。イタリア通。
シェフ
シェフ:二人が通うトラットリアのシェフ。

バルサミコ酢は万能調味料。かけるだけじゃなく、煮込みやソテーにも

利亜
うちに「モデナ産」って書いてあるバルサミコ酢があるんですが、生野菜にかける以外どう使ったらいいかわからなくて、なかなか使い切れないんです。
伊田
モデナ産!それはきっといいものだよ。バニラアイスにかけて食べるのが僕のお薦め。
シェフ
そのままかける以外にも、バルサミコ酢は煮込みなどにも使えますよ。熟成度合いで使い分けるのがいいと思います。

バルサミコ酢は、「バルサミコ=芳香性」という名前のとおり、華やかな香りが特徴で、その昔は貴族の贈り物だった。ワインビネガーもバルサミコ酢もぶどうからつくられるのは同じだが、その製法は大きく異なる。ワインビネガーはアルコール発酵したものをさらに酢酸で発酵させたもの。一方バルサミコ酢は、ぶどうを搾汁し、煮詰めて発酵させ、木樽で熟成という、なかなかの手間と時間がかけられている。熟成期間が長いこともバルサミコ酢の特徴で、数年のものから20年を超えるものまでさまざま。熟成期間が長いほど、濃度と糖度が高くなり、つやが出て、香りの奥行きも深まる。当然、価格も高くなる。

バルサミコ酢
バルサミコ酢の中でも最高級品として知られるモデナ産の「アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ DOP」。“トラディツィオナーレ(伝統的な)”を名乗れるのは、これとレッジョ・エミリア産の二つだけ。

熟成が進んだものはそのままかけてソースやドレッシングとして使い、手頃な価格のものは加熱調理に使うとよい。バルサミコ酢は動物性の脂と相性がいいので、牛肉の赤ワイン煮込みに加えたり、ホタテのソテーにバターと一緒に加えたりすると、味わいも香りも豊かな仕上がりになる。

牛煮込み
牛肉の塊に塩をふって一晩置いておき、軽く小麦粉をつけて鍋で表面を焼いてから、香味野菜と一緒に赤ワインとバルサミコ酢を入れて煮る。これだけで美味しい煮込みができる。

エキストラバージンオリーブオイルは香りが命!開けたらどんどん使おう

利亜
実は、オリーブオイルもなかなか使い切れないんですよね。早く使わないと酸化しちゃうとわかっているんですけど……。
伊田
酸化したら香りもとんでいく。どんどん使わないと、かえってもったいないよ。
シェフ
エキストラバージンの香りを楽しむなら、熱を加えない使い方がお薦めです。

オリーブの実を搾ってつくるのがオリーブオイル。なかでも、実を搾ったものだけを用い、香りや成分の基準を満たしたものが「バージンオリーブオイル」と呼ばれる。さらに酸度や香りの厳密な基準を満たしたものだけが「エキストラバージンオリーブオイル」となる。だから本当の「エキストラバージン」は高価。小さくて遮光性がある容器のものを買い、できるだけ早く使い切ることをお薦めする。オリーブは秋に収穫されるので、秋から冬にかけてのこの時季はオリーブオイルの「新物」が出回る。自分好みの一本に出会えるかもしれない。

ピンツィモーニオ
エキストラバージンオリーブオイルに塩と胡椒を混ぜる。そこに季節の野菜をディップして食べる“ピンツィモーニオ”。エキストラバージンオリーブオイルの果実の香りが、野菜の風味を引き立てまろやかな口当たりに。

エキストラバージンの特徴はなんと言っても香り。パンにつけるだけでも楽しめるが、野菜のディップ「ピンツィモーニオ」にすると、食材の香りとの相乗効果を味わえる。また、お刺身や目玉焼きにかけても香りとコクが出て◎。オリーブオイルの香りは加熱するととんでしまうので、パスタに使う際には火を止めてから最後にかけるとよい。

トマト缶一つで美味しいパスタソースに

伊田
これも日本でもいろんな種類のものが売られるようになったよね。
利亜
トマト缶!うちも常備しています。私、シンプルなトマトソースのパスタが大好きなんですけど、シェフみたいに美味しくできないんです。材料が違うのかな?
シェフ
いえ、私もトマトの水煮缶を使いますよ。コツをお教えしましょう。

トマトの水煮缶詰には「ホールタイプ」と「カットタイプ」があり、トマトが丸ごと入っているホールは、サンマルツァーノ種を使ったものがほとんど。ダイス状に刻んであるカットは丸形のラウンド種が使われていることが多い。ホールは煮込むことで味わいが深くなり、カットはフレッシュな味わいが持ち味。このほか、甘味の強いミニトマトの缶詰もあり、ピザのトッピングなどに向いている。

トマト缶
同じメーカー、同じ種類のトマト缶でも季節ごとに水分量が違ったり、個体差もある。調理のたびに味見をして、塩加減や加熱時間を調整するとよい。

トマト缶でパスタソースをつくるなら、トマトの水煮を加熱し、塩を加え、ゆでたパスタを入れてからめるだけでシンプルな「パスタ・アル・ポモドーロ」が出来上がる。水煮トマトをフライパンに入れる際、潰したりハンドミキサーで攪拌しておくと、まろやかに仕上がる。フレッシュな味わいが好みなら加熱時間を短くするとよい。逆に水分が多かったり酸味が立ちすぎているときは、長めに加熱する。もうひと手間加えて、最初にオリーブオイルで玉ねぎをよく炒めてからトマトの水煮を入れると、コクのあるトマトソースになる。

トマトソースのパスタ
イタリア人にとってトマトソースのパスタは、日本人にとってのご飯と味噌汁みたいなもの。もともとは南イタリアでよく食べられていたが、今は全土で食べられている。トマトの水煮缶はどこの家庭にも必ずある。
利亜
それだけでいいんですね!それなら私にもできそう。
伊田
料理の出来を左右するのは、いつだってちょっとしたことなんだよね。
シェフ
それと食材を知ることです。食材を知れば“本場イタリアの味”はぐっと身近になりますよ。
利亜
イタリアの食材のこと、もっともっと知りたくなりました!

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※この記事はdancyu「2019年12月号〜2020年11月号」掲載 編集タイアップ記事をまとめたものです。

文:井本 千佳 写真:植田 真紗美 イラスト:たかはし みどり

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